トルコ・シリア地震発生から一週間、被災者救出・復興支援に動く世界のスタートアップ

SHARE:
Hatay in the 2023 Gaziantep-Kahramanmaraş earthquakes
Public domain image photographed by Hilmi Hacaloğlu

先週、トルコとシリアの国境付近で発生した地震はマグニチュード7.8を記録し、死者は現時点で35,000人を超えた。各国政府の緊急援助隊や NGO が被災者救出と復旧作業に取り組んでおり、今後も継続的な支援が望まれる。筆者は2014年から数回、地元トルコのスタートアップインキュベータ eTohum の動きを中心に、イスタンブールをはじめとするスタートアップの動きをお伝えしているが、世界のスタートアップシーンにおいても、トルコはユニークで活気のある起業家ハブの一つだ。

すぐに現地に救助や復興の支援に向かうことはできないし、現地のロジスティクスや社会リソースを考えると、それはむしろ足手まといになってしまう。義援金や支援物資を送るのも一つの方法だが、起業というパッションと日常的にテクノロジーに触れている我々であるからこそ、スタートアップコミュニティができることは何かないだろうか。世界や地元のスタートアップや起業家コミュニティが、トルコやシリア地震被災者にどのような支援をしているか、話をまとめてみた。

<参考文献>

Carbyne(イスラエル)

地震を受けて派遣されたボランティア医療団体 United Hatzalah of Israel の緊急対応チームは、イスラエルのスタートアップ Carbyne が開発したクラウドベースの技術を使って、位置データ、ビデオ、画像をイスラエルの遠隔医療チームとリアルタイムで共有し、救助隊に救命処置のアドバイスを提供できるようにしている。Carbyne の 単一のダッシュボードに表示されたリアルタイムの情報は、緊急対応チームと遠隔地のボランティアが、救助活動に関して、イスラエルの医師やその他の専門機関との協議するのに使用されている。

<関連記事>

Sight Diagnostics(イスラエル)

Sight Diagnostics は、同社の血球計数装置を、トルコ南東部の壊滅的な地震の被災者を治療するために、現地援助チームが今週設立した現地病院に配備する予定であると発表した。2滴の血液から10分間で AI が血液分析する装置「OLO」2台と検査キット数百のセットを提供する予定だ。この装置は、緊急輸血が必要な重大な内出血があるかどうか、生命を脅かす深刻な状態である敗血症を誘発する感染症の可能性があるかどうか、重要な臓器に損傷の可能性があるかどうかを、19項目の血液パラメータを測定し評価する。

<関連記事>

Datapad(トルコ/アメリカ)

Datapad の創業者エンジニア Furkan Kılıç 氏と CTO の Eser Özvataf 氏は、地震発生直後から Twitter で仲間を集め始め、数時間後に、現地 NGOや救助隊を支援するための対応策をまとめ上げた。これは「Earthquake Help Project」と名付けられ、地震が発生した6日遅くには Discord チャンネルを立ち上げられ、世界中から集まった15,000人の開発者らが、必要な場所に援助を分配し届けるためのアプリを構築した。

このアプリの最初の機能は、ソーシャルメディアから救助要請を見つけ、それを地理的に特定し、ヒートマップ上に表示するというものだ。このチームは、支援の申し出の照合、被災者が何をすべきか、誰に連絡すべきかといった情報の収集、人々が安全か、支援が必要かの報告ができる、ポータルサイト安否確認サイトも構築している。現在はトルコの被災者を対象としているが、シリアの被災者を救済対象に加えるため、現在はプロジェクトをトルコ語からアラビア語に翻訳してくれるボランティアを募集している。

<関連記事>

Garuda Aerospace(インド)

インドのチェンナイに拠点を置くドローンスタートアップ Garuda Aerospace は、インド国家災害対応部隊(NDRF=National Disaster Response Force)からの要請を受けて、2つのドローン「Droni」と「Kisan」を提供する。Droni は最も被害を受けた地域を監視し、閉じ込められた人々の位置を特定したり、被災地の被害の程度を把握したりするのに使われ、、Kisan は被災者のための緊急医薬品、物資、食糧の輸送に使われる予定だ。

その他、仮想通貨周辺の動き

トルコは、中東・北アフリカ(MENA)で最大の仮想通貨市場であるため、仮想通貨関連各社から被災者支援の発表が相次いでいる。Chainalysis の「2022 Global Crypto Adoption Index」ではトルコが仮想通貨の普及で世界12位にランクインしており、仮想通貨取引量の成長率は前年比10.5%だった。トルコ政府は仮想通貨を法定通貨として用いることを禁止しているが、2022年の Statista Global Consumer Survey によると仮想通貨の所有率は40%に達した。この背景にはインフレ率の高さがあると見られる。

Ethereum Foundation の共同創業者 Vitalik Buterin 氏は 99ETH(約2,000万円)をトルコやシリアの救済活動に寄付した。Bitfinex、Tether、Keet、Synonym といった仮想通貨企業は27万米ドル(法定通貨で)、Bitget は5万米ドル(法定通貨で)を寄付すると明らかにした。Binance(幣安) CEO の Changpeng Zhao(趙長鵬)氏は、被災地域のユーザに100米ドルずつ提供するのに加え、被災者救援のソリューションを開発中であることを明らかにした。

BRIDGE Members

BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。
  • 会員限定記事・毎月3本
  • コミュニティDiscord招待
無料メンバー登録