
#IVSPRWeek はスタートアップカンファレンス「#IVS2023」とプレスリリース配信サービスのPR TIMESが企画する「Startup!PR Week」参加企業による新製品情報をお伝えします。同社のプレスリリースはこちらとこちらから
ニュースサマリー:ゼロワンブースターが推進するベンチャースタジオ「01Booster Studio」は6月26日、建設業界に特化した起業家支援プログラムを通じて、建設系スタートアップ3社を創出したと発表した。このプログラムは、2022年9月に開始され、2023年5月末のデモデイにてお披露目されたもの。30名以上の建設業界に興味を持つ起業家が支援され、結果として3つの新企業が設立された。
Dynagonは産業エンタープライズ向けのAIソフトウェア開発を専門とするスタートアップで、Back Cast.Designは建設工事の工程管理ツールを提供する。7月に設立予定となっているLinkedListは残土を出したい会社や個人と、欲しい会社や個人をマッチングするオンラインプラットフォーム「残土バンク」を提供する。これらのスタートアップは、01Booster Studioを通じて顧客ヒアリングや仮説検証を実施した。
また、ゼロワンブースターと大林組はプログラムによるスタートアップ輩出と並行して、実際に自社で利用する若手技術者向けの業務共有・可視化クラウド型アプリ「ワークパッケージアプリ」の開発も手がけた。建設業界では、施工管理業務のノウハウが言語化されておらず、若手技術者は先輩について学ぶOJTが一般的だった。
その一方で技術者不足により、OJTに十分な時間が割けなくなっているという課題がある。これに対処するため、大林組として業務フローや内容を共有・可視化できるワークパッケージアプリを開発した。こちらも今回、3社の起業家を輩出した9カ月間のスタジオプログラムを通じて実施されている。

話題のポイント:建設テック、コンストラクションテックの領域はフィジカルな現場仕事が多いことから、労働集約的、デジタル化が進みにくいなどの課題を抱えてきました。スマートフォン・モバイルインターネットの波でフォトラクションやアンドパッドのような効率化ツール、ツクリンクのような人材マッチングサービスが出てくる一方、まだまだ手書き・もしもしハイハイの世界観が一般的と言われています。
また働き方改革関連法により、2024年4月から建設・運輸・医療などの業界に対しても時間外労働の上限が法律で規定される「2024年問題」も大きくのしかかっています。人材難とデジタル化推進という業界全体の課題を背景に、まずは自社の取り組みを進めたのが大林組でした。
このプロジェクトを推進するゼロワンブースターの丸山有弥さんと大林組の湯淺知英さんによれば、建設業における新規事業の近道は、社内リソースの有効活用にあるそうです。これは建設に関わる事業内容そのものが、極めて機密性の高い情報や現場への深いアクセスを必要とし、一般的な社外との事業マッチングだけでは本当に有効な事業が生まれにくいという背景があるからです。

このプログラムの特徴は大林組で社内起業したいと手を挙げた候補および社外から応募した起業家候補に対し、徹底的な課題探求の時間を提供した点です。湯浅さんによると、社内にはこれまでにも開発すべき課題という提起自体はあったそうなのですが、今回の課題探求では、本当に現場で起こっている課題をひとつひとつ調べるために、実際に現場に出向き、時には現場の方々が使っているスマートフォンを見せてもらうなど、精緻な情報収集に努めたのだとか。これを大林組の協力会社などを通じ、約半年間実施しました。
もう一つのポイントは情報の開示です。このプログラムを通じて起業する場合「別会社」として扱われます。前述の通り、建設業には機密性の高い情報があり、このNDAなどの締結に相当の時間が取られることがよくあります。そこで、このプログラムでは協業する企業間に「オープンソース」的なゾーンを作り、そこの情報については関係者にてオープンに使えるようにする中立的な場所を作ったそうです。これにより、連携スピードの向上を図ったとのことでした。
ドッグフーディング的に開発したワークパッケージアプリでの仮説検証フェーズでは、工事現場の若手技術者やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)部門所属の複数のメンバーの合計30人以上に価値検証を実施するなど、実際に使えるものにするためのプロセスも構築されているそうです。
ちなみに丸山さんと湯浅さんは元々、同僚として建設業にて働いたことがある仲なのだとか。社内・外から同じ意思を持った人物が挟み込むように新規事業のプロセス開発を手掛けているという点でもユニークなケースではないでしょうか。
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