ピッチコンペティション「LaunchPad」の優勝は、におい検知センサーによる介護向け排泄ケア「ヘルプパッド2」が獲得 #IVS2023

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Image credit: Masaru Ikeda

本稿は、6月28〜30日に開催されている、IVS 2023 KYOTO の一部。

<7月5日10時更新> 赤字部を追記、訂正線部を削除。

29日夕、IVS では恒例となっているスタートアップ・ピッチコンペティション「LaunchPad」が実施され、におい検知センサーを使った介護向け排泄ケアシステム「ヘルプパッド2」を開発する aba が優勝した。

LaunchPad の審査員を務めたのは、

  • 相川真太郎氏 GREE VENTURES
  • 金子剛士氏 East Ventures
  • 笹原裕子氏 NTT ドコモ
  • 西條晋一氏 XTech Ventures
  • 佐藤真希子氏 iSGS インベストメントワークス
  • 高宮慎一 グロービス・キャピタル・パートナーズ
  • 竹葉聖氏 日本 M&A センター
  • 仲暁子氏 ウォンテッドリー
  • 丹羽功氏 大和証券
  • 橋寺由紀子氏 フェニクシー
  • 平尾丈氏 じげん
  • 福田恵里氏 SHE
  • 藤野英人氏 レオス・キャピタルワークス
  • 前田ヒロ氏 ALL STAR SAAS FUND
  • キャシー松井氏 MPower Partners
  • 宮田昇始氏 Smart HR/Nstock

1位〜5位は、審査員による審査で決まり、1位受賞者(優勝)には、スタートアップ京都国際賞が贈られる(複勝として、最大1,000万円を授与)。また、会場やオンラインで参加している聴衆による投票で決まる、オーディエンス賞も設置された。

今回の LaunchPad には、史上最高となる約400社からエントリがあった。登壇したファイナリストは、以下の14社。

【第1位】【オーディエンス賞】ヘルプパッド2 by aba

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Helppad は、においを検知するセンサーを使用した排泄ケアシステムだ。このシステムは、身体に装着する必要なく、ベッドに敷くだけで排泄を検知することができる。介護現場での利用を想定して開発されており、排泄をアプリで知らせてくれるので、介護士や介護者は定期的におむつを見ることなく、必要なタイミングで必要なケアを提供することができる。

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Helppad は単なる排泄をコントロールするだけではなく、排泄パターンを把握することに重点を置いている。利用者それぞれの排泄パターンをデータとして収集し、分析することで、おむつ交換の最適なタイミングを提案する。これにより、利用者の生活リズムや健康状態を崩すことなく、適切なケアを提供することが可能になる。サブスクモデルで提供する計画で、国内外から予約が寄せられている。

aba は2019年4月に3.3億円、2021年に1億円、2023年2月に12億円を調達している(それぞれのラウンドは不明)

【第2位】Lecto プラットフォーム by Lecto

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Lecto プラットフォームは、債権管理・督促回収を自動化・効率化する SaaS だ。これまでの債権管理や督促回収は、アナログの手段でバラバラに行われることが多かったが、これらを一元管理することで、顧客の属性や特徴に応じた督促内容の最適化を実現する。金融サービスやリテール・サブスクのバックエンドにある面倒な実務や複雑で属人化しやすい業務フローを改善し、一気通貫での解決を目指す。

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督促電話の応答率は10%以下であり、支払延滞の8割はうっかり忘れであることがわかっているため、支払期限に遅れた人に人が一斉に電話するのは非生産的だ。Lecto プラットフォームでは、債務者データを CSV か API で連携し、どのような方法で督促するか(電話 IVR、SMS、メール)、それをいつアクションするかを設定する。年齢層、延滞の頻度、金額などに応じて、督促を出しわけでき、督促の回収率と回収効率が大幅に改善できるという。

Lecto は2021年3月、BEENEXT の ALL STAR SAAS FUND らか1億円を調達した。

【第3位】JamRoll by Poetics

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Poetics は Empath として2017年10月に創業し、6年以上にわたって音声の抑揚を元に話者の感情を解析する AI を開発してきたが、この事業を今年4月に CAC に譲渡し、社名を Poetics に改めて再スタートを図った。現在、同社がメインとするプロダクトが商談解析 AI「JamRoll」だ。Zoom、Google Meet、Microsoft Teams に対応し、AI が自動でオンライン商談を録画・文字おこし・分析する。〝商談のブラックボックス化〟を解決する。

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JamRoll では、人間の代わりに AI 書記が商談に同席することで、商談の同席工数削減、一人当たりの月次商談数増加を実現する。また商談時の議事録作成や SFA ツールへの入力工数を激らし、オンライン商談における生産性向上に寄与する。月次売上平均成長率が27.5%を超えているという。 JamRoll は Salesforce と連携し、商談要約を自動で書き込む機能をサポートしている。今後、音声解析 AI の API を公開する予定だ。

Poetics は2018年7月に3億2,000万円、今年1月に SX キャピタル、ウィルグループ(東証:6089)、ベクトル(東証:6058)から資金調達した(調達額、ラウンド共に非開示)。

【第4位】SecureNavi by SecureNavi

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SecureNavi は、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)や P マーク(プライバシーマーク)といった社内規定の構築や運用を支援するプラットフォームだ。一般的に ISMS 構築には6ヶ月〜1年かかると言われているが、わかりやすいプロダクトデザインとサポートで、情報セキュリティの知識がない担当者でも取り組みをすすめることができ、構築期間を4ヶ月まで短縮できるという。

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また、同社では P マーク取得を効率的に実現するための機能を開発した。この機能では、P マーク取得に必要な文書の作成や運用を自動化できる。具体的には、必要な文書のテンプレートを提供し、企業の要件に合わせてカスタマイズすることができる。また、適切なセキュリティ対策を実施するための手順やチェックリストも提供される。SecureNavi は昨年3月、プレシリーズ A ラウンドで1.3億円を調達した。

【第5位】TēPs by テープス

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EC に特化したノーコードツール「TēPs」は、API を介して EC モール、受注管理システム、Google スプレッドシート、チャットツールなど、日々の業務で利用するサービスや機能を組み合わせ、自社独自の業務を自動化するツールをつくることができる。SaaS だけでは自動化できない業務を、プログラミングの知識無しで、自社の業務フローに合わせて自動化ツールを自分でつくり、細かい条件設定ができるのが特徴だ。

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Amazon、Shopify、楽天市場、Yahoo ショッピングなど、さまざまな EC プラットフォームと API 連携が可能だ。今日から ChatGPT との連携も開始した。代表の田渕健悟氏は連続起業家で、以前、創業した EC の自動出荷サービス「シッピーノ」をフィードフォースグループ(東証:7068)に2021年に売却。その後、フィードフォースグループの子会社としてテープスを立ち上げたが、今年1月に5,000万円を調達し、同グループからスピンオフした。


以下は、惜しくも入賞しなかったが、ファイナリストとして優秀な成績を収められた方々。

Stroly by Stroly

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Stroly は位置情報にデザインを施し、今いる場所のストーリーを体験できる地図アプリのプラットフォームだ。ユーザはキュレーションサイトの情報を見ているかのように楽しみながら、地図を作成・利用することができる。オリジナルデザインの作成や SNS による位置情報のシェアも可能で、企業にはエリアや観光地などのブランディングを目的とした地図の企画・作成を提供している。

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このアプリは地図に多様な表現を付与しながらも、正確な位置情報を提供出来ることが特徴だ。実位置とズレがある古地図や絵地図であっても、経度・緯度との対応付けができる。これまでに10,000以上のマップが集約されており、世界40カ国以上から登録されている。地図を参考に、ユーザがどのように移動したかもビッグデータ的に分析できる。同社は今年、Plug and Play Japan の 2023 Summer/Fall バッチ、J-STARTUP に採択された。

Stroly は2017年5月、京銀リース・キャピタル、フューチャーベンチャーキャピタル、中信ベンチャーキャピタルら、京都のベンチャーキャピタルから1.4億円を調達した。ラウンドは開示されていない。

Lypid by Lypid(活優科技)

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Lypid は、肉のクリーミー感、噛み応え、ジューシー感を維持しながら、100%植物性の脂肪を作り出すディープテックスタートアップだ。従来、動物性脂肪は、ココナッツオイルなどの植物性油に置き換えられてきたが、これらは融点が低いため、フライパンの中で脂肪が溶け、植物臭のするヴィーガンミートになってしまう。Lypid では独自のマイクロカプセル化技術・製法により、融点を200℃以上にまで引き上げ、より多くの水分を含めるようにした。

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同社はすでに、台湾のコーヒーチェーン大手 Louisa Coffee(路易莎咖啡)と提携し、ビーガン油脂「PhytoFat」を使用した植物肉バーガーを台湾全土の500店舗以上で提供している。また、今年6月には、植物性油脂をつかったバラ肉「Lypid Pork Belly」をアメリカ・アジアで発売した。台湾では、植物ベースレストラン「BaganHood」やクラフトビールバー「23Public」などで Lypid Pork Belly を使用した限定料理が提供されている。

Lypid は2020年、SOSV のライフサイエンス系アクセラレータ「IndieBio」 に選ばれ、シード資金を調達した、その後2022年にも、台湾の AVA Angels(AVA 天使)からもシード資金を調達した。CrunchBase によると、調達総額は430万米ドル相当に達している。

POOL by レコテック

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レコテックの「POOL」は、製造業者が自社製品に活用するために、トレーサビリティのあるリサイクル材を提供する資源循環プラットフォームだ。ごみの発生から、運搬、リサイクルのすべての過程で、スマホやタブレットで簡単に情報連携する。リサイクル材を活用する上で欠かせない、「どこから」「どのようなプロセス」を経てリサイクルしたかなどのトレーサビリティ情報の提供も行う。

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家庭や小売施設などから用を終えて発生する、ポストコンシューマー材料(PCR 材)有効活用することは、プラスチック問題を解決するための重要なポイントされており、POOL では PCR 材を安定した品質、持続可能なコストで供給できる仕組みを提供する。PCR 材を出す大手百貨店の6割が参加しているという。きれいな PCR 材を、まとまった量で回収でき、それを中間処理、メーカーへと流通できるネットワークを形成していく。

レコテックは2022年11月に国際アライアンスの「Alliance to End Plastic Waste」と三井住友信託銀行から、2021年1月に双日(東証:2768)から、それぞれ資金調達している(調達額やラウンドは非開示)。

JPort by SPeak

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JPort は、若手外国人材のためのキャリアプラットフォームだ。日本の大学生新卒の場合、これまで就職フェアなどの機会を通じて潜在的な就職先にリーチすることが多かったが、外国籍留学生にとって就職フェアは馴染みが薄く、日本人に提示される条件だけでは優秀な学生を採用できないことも多い。JPort では、留学生などに特化したダイレクトリクルーティングを提供することで、日本企業が優秀な留学生を採用できる環境を提供する。

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これまでもいわゆる外国人のブルーカラー職に特化した支援プラットフォームは存在したが、JPort ではホワイトカラー職に特化していることも特徴だ。今後はキャリア形成だけでなく、住まいや金融といた在日外国人のお困りごとをサポートするサービスへと進化させていく。SPeak は2020年にシードラウンド、2021年5月にポストシードラウンドで5,000万円を調達している。

パナリット by パナリット

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パナリットは、人事分析(People Analytics)のためのプラットフォームだ。人事・財務のデータと接続し、150種類以上の人的資本 KPI を可視化することができる。ビジネスにおいて、ヒト・モノ・カネが重要とされる中で、日本では、特にヒトの部分のデータの分析を元にした経営が遅れているが、人事に関するデータは散財しているため、それらを統合し解析することを可能にする。

データが見える化されることで、論点・仮説の検証ができるようになり、経営陣や人事部門のデータに基づいた意思決定が可能になる。上場企業の人的資本の開示が義務付けられたことで、これを追い風にさらなる成長を目指すとしている。パナリットは2020年8月に、カオナビ(東証:4435、カオナビ NEXT FUND)から資金調達。その後、2021年7月、シードラウンドで3.3億円を調達した。2022年10月には、マイナビと資本業務提携している。

KEEN Manager by KEEN

KEEN Manager はデータに基づいたエンドユーザ毎のスコアリングや分類からスター顧客候補の発掘、エンドユーザの活動傾向から最適な施策をリコメンド、ツールやインターネット上にある「個人」を単位としたデータ収集をもとにしたレポーティング機能を備える。スター顧客とは、プロダクトやサービスを活用し成果を出し、他社にも自社の成功体験やナレッジをシェアしてくれるエンドユーザーのことを指している。

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KEEN Managerではまず、管理職とマーケティング担当者との間で「分析したいが後回しになってしまっているデータ」を特定する。その後データクレンジングを実施し、ダッシュボードで施策についてのモニタリングを実施する。モニタリングで出た課題は、コンサルタントとともに分析を実施し、機械学習を用いて施策のリコメンドを行い、アップセルや離反予測などの機能も提供する。

KEEN は2022年10月、HAKOBUNE と Z Venture Capital(ZVC)、East Ventures、個人投資家のイセオサム氏から資金調達した調達額は6,000万円。ラウンドは共に非開示)。また、2023年6月にフリークアウト・ホールディングス(東証:6094)から2億円を資金調達した(ラウンドは非開示)。

TRADOM by ジーフィット

ジーフィットは、データサイエンスや高度な数理モデル、金融システムの技術を活用した「為替テック」をソリューションとして提供することで、企業が為替リスクコントロールに主体的に取り組むのを支援する。今年5月には、法人向け為替相場予測/支援システム「TRADOM(トレーダム)」をローンチした。海外取引を行う企業や外貨建て決済を行う企業が、AIの予測に基づいて為替予約でき、為替リスクをヘッジできる。

TRADOM では、数百体の AI に400を超える経済指標や専門家・機関投資家の見通しを学習させ、トレンド予測に基づく確率分布を出すことで、過去4年間の為替予測は75%の正答率を出すことに成功しているそうだ。為替は「外部の専門家に任せるもの」といった従来の発想にとらわれず、企業が自ら為替リスクコントロールに主体的に取り組むことを可能にする。

ジーフィットは2022年10月、W fund などから2億3,500万円を調達した。ラウンドは開示されていない。

Printio by OpenFactory

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Printio」は、事業者の課題を解決するための「Factory as a Service(FaaS)」だ。このサービスでは、工場のアップデートを進めながら、事業者のビジネスに組み込めるものづくりサービスを提供している。オリジナルデザイン商品を1個から製造し、出荷が可能だ。自社商品を使用したパーソナライズサービス、在庫不要の EC、入会特典のオリジナルアイテムなどに利用できる。

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Printio では、工場の製造ワークフローシステム、注文情報を受け取る受注口、注文を直接行える注文窓口、デザイン登録を行うデザイン窓口など、それぞれの効率化と API 化に取り組んでいる。これにより、エンドユーザを含む「届けたい相手」のアクションを起点に、オリジナルアイテムを個別に届けることが可能となり、「組み込み型ものづくり」が実現する。

OpenFactory は今年3月、シードラウンドで8,000万円を調達した。

CEOclone by タッチスポット

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CEOclone」は、営業活動の生産性向上を支援するサービスだ。提案が均質化されず、個人に依存してしまう、顧客のニーズが把握できず、無駄な商談に時間を費やしてしまう、多くの商談が一度に入り、スケジュールが詰まってしまう、といった課題を解決できる。このサービスでは、CEOやトップセールスマンが商品説明(プレゼン動画など)を URL 1つで、全ての顧客にシェアできる。

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顧客がどの部分を視聴したかを管理画面で確認することができるため、営業のフォローアップの前のヒアリングにも活用できる。個別のインサイドセールス、対面セールスの前に、興味を持っている顧客とそうでない顧客を見極めることができるので、興味を持っている顧客にのみ、集中的に営業リソースを振り向けることが可能になる。初回商談時の決裁者同席、商談前に営業先社内でナーチャリングが完了しているなどにより、有効商談の増加が期待できる。

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