中山充氏が率いる南米市場向けシード特化ファンド「BVC」については何度か取り上げているが、8日（現地時間）、コロンビア・ボゴタ市内でミートアップイベントが開催された。2020年から活動を開始した BVC だが、このような現地のスタートアップエコシステムを対象としたイベントは、昨年11月にブラジルのサンパウロで開催したのに続く2回目で、コロンビアの国内では初めての試みとなる。ボゴタを中心に、現地の起業家や投資家、スタートアップ支援を行う人々などが200人超集まった。

BVC は2つのファンドを通じて、現時点で10〜20億円程度の規模で運用されているとみられる。これまでに34社に投資を実行し、うち2社（ブラジルのモバイル決済 Code Money を ASAAS が買収、企業が顧客優遇プログラムを実装できる Collact を StoneCo が買収）がイグジットを果たしている。活動拠点も、ブラジルのサンパウロから、ペルーのリマやコロンビアのボゴタへと拡大し、より広範な地域のスタートアップへの投資を行っていることから、名前を Brazil Venture Capital から B Venture Capital にリブランドしたことも明らかにした（略称は BVC のまま）。

イベントの冒頭、ユニコーンでフードデリバリアプリ「Rappi」の共同創業者 Andres Bilbao 氏、ブラジル・メキシコ・チリ・エクアドルでラストマイルのトラック物流を効率化する「Liftit」の共同創業者 Felipe Betancoourt Celis 氏らが登壇した。こうしたコロンビア発のスタートアップに共通するのは、中南米（LATAM）全体へと市場を広げようとしている点だ。コロンビア単体での人口は5,000万人強だが、中南米では6.6億人と東南アジアの ASEAN と同等のビッグマーケットが広がっているからだ。

2つ目のセッションには、日本から、スカイライトコンサルティングの創業者で代表取締役の羽物俊樹（はぶつ・としき）氏、モンスターラボホールディングス（東証：5255）の創業者で代表取締役の鮄川宏樹（いながわ・ひろき）氏、HENNGE（東証：4475）の創業メンバーで取締役副社長の天野治夫氏が登壇し、コロンビアのスタートアップシーンへの期待などについて語った。登壇者に2人もの上場経験のある創業メンバーが含まれていたこともあり、将来、アメリカなどでの上場を目指す起業家らから登壇者に多くの質問が寄せられた。

登壇者のうち、天野氏は個人投資家として BVC 2号ファンドに投資していることが明らかになっている。モンスターラボホールディングスは2020年、北米向けのニアショア開発拠点としてボゴタに Monstarlab Columbia を設立した。スカイライトコンサルティングは国内外でスタートアップに出資していて、海外では、アフリカをはじめ新興国での出資が目立つ。また、ブラジルでは2019年、プロサッカー選手の育成を目的とした事業会社 FC SKA Brasil をサンパウロに設立している。

イベントの終盤には、保険会社やブローカーに対して保険ポリシーを提供し、容易に新たなデジタル保険をローンチできるようにする「Sekure」、建物オーナーがテナントから家賃集めを効率化できるサービス「Dora」、中小店舗向けの生鮮食品マーケットプレイス「SuperFruit」、バーチャルカードをはじめ新興企業向けの金融サービスを提供するデジタルバンク「Mono」らがピッチした。これら4社はいずれもコロンビアを本拠としていて、B Venture Capital から出資を受けている。