塩漬けのNFTを資産運用「NFT-Fi」が破綻しないワケーーUnUniFi Yu Kimura #IVS2023

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写真左からWeb3インキュベーター「Tané」を主催する六人部生馬氏とUnUniFiの木村優氏、アクセンチュアの唐澤鵬翔氏。

本稿は、6月28〜30日に開催されている、IVS 2023 KYOTO の一部。

社会におけるNFTの魅力はどこにあるのだろうか?

人々は非代替性ーーつまりは交換できないデジタル証明ーーというアイデアを、自己のアイデンティやデジタルアイテムのトレード、仮想空間における所有などに使った。最近ではイベントでの参加証明(POAP)や不動産などの「リアル」と紐づけたNFT会員証などへと展開を広げている。

このNFTの魅力をインフラとして支えるのがブロックチェーン・ファイナンスの技術だ。OpenSeaなどをはじめとするマーケットプレイス・CeFi/DeFiの世界が広がり、人々はこれらデジタルデータを容易に流動化させることができるようになった。流動化が活性化すれば、参加する人やアイデア、資金の総量も増えることに繋がる。

このNFTの資本効率・流動性に一役買って出ようというのが今回、ご紹介するUnUniFiの木村優氏だ。2018年に京都大学経済学部の学生だった彼は、ブロックチェーンの魅力に触れ、裏側の技術を読み解く過程でどんどんとその世界に浸るようになる。4年後の2022年にはホワイトハッカーとしてタイムラインを賑わせるまでになった。

木村氏が取り組むUnUniFiはネットワーク的な思想を持つCosmosの流れを組む独自のブロックチェーンだ。ここで動くNFT-Fiプラットフォームは保有するNFTを担保とした資産運用ができるものになっている。

今回、木村氏と一緒にこの話題を語ってくれたのはWeb3インキュベーター「Tané」を主催する六人部生馬氏とアクセンチュアの唐澤鵬翔氏。

話はまず、このNFT-Fiとは何かから始まった。

NFTを担保にできるNFT-Fi

六人部:今、ようやく一般社会でもNFTやDeFiあたりは認知されるようになってきたんですが、「NFT-Fi」となるとまだまだだと思うんです。まずはこれがなんなのか、というところから始めましょうか

木村:そうですね、とても簡単に言うとNFT-Fi自体はNFTを担保にして借入ができるC2Cの仕組みになります。

そもそもの思考回路の変遷としては、最初はステーブルコインの発行について模索していたんです。当時は暗号資産を担保にしたステーブルコインがあったんですが、資本効率があまり良くなかったんですね。例えば、100ドル分のステーブルコインを発行しようとすると、150ドル分の担保が必要になるという過剰担保が問題になったりしたんです。

そこでこの資本効率の問題をどう解消できるかと考えた時に、資本効率の悪いものを担保にすれば、資本効率の問題が解決されるのではないかという仮説に基づいて、NFTを担保にしてステーブルコインを発行することを思いついたんです。

ただ、NFTを担保にしてステーブルコインを発行するだけでは制約が大きいため、単純にNFTを担保にして借り入れをするという一般化した形にすればもっと広い使い方ができるのではないかと考え、現在の形に落ち着いています。

唐澤:そういう流れだったんですね。オンラインの中で資本効率をどう高めるかではなく、逆に担保を入れるものを変更するという考え方は面白いですね。逆の発想で言うと、NFTの資本効率を上げることにもなりますね。

木村:これは、NFTが資本効率が悪いとされていて、持っていてもキャピタルゲイン(値上がり益)は狙えるものの、インカムゲイン(収入)が狙えないという状況があるからなんです。そういうものを担保に入れることで、NFTの資本効率も上がり、逆にNFTを担保に入れることによる資本効率の低下を避けられるというわけですね。

唐澤:ただ、もし担保に入れるNFTの価格がある程度安定していれば良いのですが、もし価格が大きく変動すると、担保としての不安定さが問題になりますね。

木村:おっしゃる通りですね。ボラティリティが高いNFTを担保に入れると、実際に担保の価値が急落してしまい、借りられなくなる状態が生じることがあります。このような事例は他のプロジェクトでも散見されています。我々は他のプロジェクトで採用されている仕組みとは少し違うアプローチでリスクを軽減し、そのような状況が極力起こらないような設計にしています。

六人部:そこをもう少し深掘りしましょうか。

木村:そうですね、今まで清算が起きた仕組みを簡単に説明すると、NFTを担保に入れた人は、流通している価格の例えば30%分だけ借りられるような仕組みになっているのが従来のものなんです。

しかし、ここで疑問が生じます。「世の中に出回っている流通価格の30%しか借りられないのはなぜか?」と。さっき議論していたように、NFTの価格が急落すると、担保の価値が下がってしまい、不良債権になってしまうという可能性があるためです。それを防ぐために、安全のために30%までしか借りられないようにしているんですね。

唐澤:それ以上下がることもありますよね

木村:そうなんです。もちろん30%に制限しても、例えば価格が80%下落して20%になってしまった場合など、問題は発生するため、根本的な解決にはなっていません。

では、私たちの仕組みはどうでしょうか。他のマーケットで流通している価格を使うのではなく、貸し出しを希望する人に対してNFTに値付けをしてもらうようにしているんです。値付けした額のうち、いくらまで借りられるかということを提示してもらうんですね。

六人部:つまり貸す側が「この価格で取引をする」という意思をしっかり示しているんですよね。例えば100万円分でこのNFTを買えるという人がいらっしゃって、その人が10万円分を貸してもいいよという場合は、その人に10万円分をデポジット(ロックアップ)してもらいます。

木村:そうですね、例えば100万円分で買えると言って10万円分まで貸せるという人が5人いたとすると、積み重なっているデポジット額は50万円分になりますよね。

そしてこの50万円分を利益として確定し担保に入れることができます。仮に50万円分を返せなくなって債務不履行に陥った場合、どこから取り返すかということになるのですが、100万円分でNFTを買えると言っている人が5人いるので、その5人のうち誰かが買い取ってもらえば全員に返すことができる、という形ですね。

最初に10万円をデポジットをしてもらう意味は何かというと、100万円で買えると言ったのに買わなかった場合、デポジットが没収される仕組みになっているんです。もし全員が嘘をついたとすると、全員のデポジットが没収されるので絶対に損は出ないという仕組みになっています。

NFT-Fiと独自チェーンの可能性

NFTの資本効率をあげることができれば、さらに利用は拡大する。一方、ブロックチェーンやWeb3、NFTなどのキーワードにまつわる課題が「マス・アダプション」だ。今もなお、一般の消費者がメタマスクを自由に扱い、ガス代に理解を示す環境は整っているとは言い難い。NFT、そしてNFT-Fiにはどのような利用シーンがあるのか。

六人部:今、NFTの市場が冷え込んでいる中で、冷静に利活用シーンを考えている人も多いと思うんですが、木村さんはどうみてますか。

木村:固定観念を持っている方からは、どうしても画像を担保にして価値が付くことに疑問を持たれることがたまにありますね。

私たちはNFTのユースケースは、プロフィール画像などに限定されないものだと考えています。NFTはあくまで非代替的なトークンであり、何に使っても問題ありません。画像だけに使ってはいけないというわけではありません。

例えば現実世界では不動産やその他のアセットを表現する方法として、NFTが活用されることもありますよね。不動産NFTを担保にして、借り入れするという現実の金融取引を分散的に再現することも可能です。

実際、プロフィール画像やその他のNFTのマーケットの将来はまだまだ未知数ですが、それにとどまらず幅広い視野でNFTの活用ができると考えると、可能性は広がっていると思います。

唐澤:不動産をわざわざNFTトークン化する価値ってどこにあると思われます?

木村:不動産を分割して小口所有するというプロジェクトは実施されているところがありますし、それをNFTに適用する方もいますね。さらに、そのNFTを分散型金融の中で利用することによって、非常に透明性のある形で、独占的ではない、いわゆる分散型のプロトコルの中で取引が行えるという点で、新しい世代の可能性が広がるのではないかと考えています。

唐澤:企業がどんどんNFTを保有するような未来も考えられますよね。他社のNFTを持つケースもあるでしょうし、自社が発行した分については、例えば一部の在庫を持っているものをただ寝かせておくのではなく、売れるまで貸し出すといった使い方もできるでしょうね。

木村:IPであれ、不動産であれ、自社で持っているアセットをNFT化することが方向性を企業が考えるのであれば、より資本効率を上げる手段や多様性が重要になってくると思います。

唐澤:木村さんはCosmos系の独自チェーンとしてUnUniFiを開発されていますが、企業がそれぞれ独自のチェーンを持つという選択肢についてどう考えてますか

木村:これまで企業がブロックチェーンを活用する方法としては、既存のパブリックブロックチェーンに乗るか、もしくは独自のプライベートチェーンを作るかの2択しかなかったと思います。

しかし、インターオペラビリティの考え方が登場し、異なるブロックチェーン同士を連携させる機能が生まれたことで、新たな選択肢ができました。それは、プライベートブロックチェーンでありながら、別のパブリックブロックチェーンと連携できるという選択肢です。

唐澤:これまでにもコンソーシアム型のプライベートチェーンなど取り組みありましたが、このハイブリッドな形だと何が違いますか

木村:プライベートブロックチェーンの場合、1社だけで運用しますから当然、迅速な意思決定を社内だけで済ませることができます。しかし、別のパブリックブロックチェーンと接続できるような性質を持つ新しいブロックチェーンを作ると、他社との連携も視野にいれつつ、かつ意思決定のコストを下げることができるんですね。つまり両方のメリットを共有できるという点が大きいかと思います。

唐澤:いくつかのケースでこのようなハイブリッドなチェーンが出てきていますが、今後も増えると予想されていますか

木村:まさにUnUniFiがこれまでのパブリックブロックチェーンに依存しないアプリを作成している理由は、今後独自のブロックチェーンがどんどん登場することを予想しているからです。インフラとして独自のブロックチェーンを運営している方が、既存のブロックチェーンのガス代やトランザクション手数料に左右されずに済むという利点もあります。すべてをパブリックブロックチェーンにしなければならないという考え方ではなく、適材適所でパブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーンを使い分けることが重要です。そして、それらを接続させて相互運用できるようにすることが良いという考え方が、この世界観の基本となるんじゃないでしょうか。

過去に失敗したプロジェクトでも、独自ブロックチェーンで再挑戦する価値はあると思います。分散型アプリやスマートコントラクトでうまくいかなかったからといって、将来性がないと決めつけるのではなく、独自ブロックチェーンによって全く違う世界が広がるかもしれないという点が、重要なポイントだと思います。

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