やさしい空白を持ったガイドエンジン「ことりっぷAI」: #出版ハックデイ /Apollo

Apollo代表の鈴木アレン啓太氏

Creators × Publishingは「テクノロジーから見える編集のミライ」をテーマにした勉強会をお送りします。雑誌の定期購読サービスを展開する富士山マガジンサービスと連携し、旬のテクノロジーと雑誌社を組み合わせた話題を提供いたします。本稿は9月1日に開催した出版ハックデイのレポートの一部。

ふんわりした気持ちで旅に行きたいと思ったことはないだろうか?目的地も決めず、これをやりたいという何かに縛られず、でも心地よい旅行。もしそんな旅を実現させてくれるガイドブックがあったらーーApollo代表の鈴木アレン啓太氏が提案したのはそんなアイデアだった。

Apolloはエンタープライズ向けのAI開発インフラを提供するスタートアップ。2019年創業で、Apollo独自のAI技術とChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)を組み合わせたAIオーダーメイド「+AI Studio」を提供している。

「多くのガイドブックは目的地が既に決まっていて、カテゴリーも主に地名や土地に基づいています。今回の提案ではそれらの課題に対応した新しい形のガイドブックを考えています」(鈴木氏)。

アイデアとしては、Apolloの開発経験で培ったデータ整形技術を使い、独自の対話型AIを開発することで、目的の明確ではないセレンディピティを特徴としたガイドエンジンを作る、というものだった。鈴木氏が「やさしい空白」と表現した出力を可能にする「ことりっぷAI」は、ことりっぷマガジンなどの出版物をベースにした独自のデータを使って訓練することで、独自の情報を織り込んだガイド提案をしてくれる。

出版物のデータからオリジナルのことりっぷAIを開発するアイデア

また、Apolloでは独自にAIを活用した編集支援サービス「+Al Writer」も開発・提供しており、これらの技術を使うことで「ことりっぷマガジンオリジナルの言い回し」を再現した、コミュニケーションAIを開発することも可能とした。

出版物には読者アンケートや出版物のデータ、運用するソーシャルメディアなどさまざまなデータが存在する。しかし、それらはDTPソフトに入ったままのデジタルデータであったり、場合によっては「はがき」のような非デジタルの状態で散在している。さらに言えば、これらが日々、出版される度に過去のデータとして積み上がることになる。

Apolloが得意とするのはこうした散らばるデータを使える形に整形する技術だ。もし、出版物がそれぞれ独自の生成型AIを持つ未来がやってくるなら、この頭脳はすなわち「会話してくれる本」ということになる。このように出版物を生活の友にできるビジョンは非常にわくわくするものだった。

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