雑誌データから自分だけのオリジナルガイドを自動生成: #出版ハックデイ /ソラジマ

写真左から:代表取締役Co-CEOの萩原鼓十郎(こじゅうろう)氏とCTOの持田章弘氏

Creators × Publishingは「テクノロジーから見える編集のミライ」をテーマにした勉強会をお送りします。雑誌の定期購読サービスを展開する富士山マガジンサービスと連携し、旬のテクノロジーと雑誌社を組み合わせた話題を提供いたします。本稿は9月1日に開催した出版ハックデイのレポートの一部。

続いて壇上に上がったのが今、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長しているスタートアップ「ソラジマ」だ。スマートフォンに最適化されたコミック「Webtoon」は韓国を中心に世界に広がっており、2019年の創業ながら海外11カ国、24アプリに自社制作のオリジナルコンテンツを配信している。脚本からコンテンツ制作まで一貫した体制を持つ同社は、実は開発力もあるということで、代表取締役Co-CEOの萩原鼓十郎(こじゅうろう)氏とCTOの持田章弘氏がイベントに参加してくれた。

萩原氏はプレゼンの冒頭、旅におけるひとつの悩みを打ち明ける。

「北海道旅行が大好きなんですが、北海道ってとても広いため、1日で全てを回ることは不可能なんですね。すでに通り過ぎてしまった場所に良いお店があった、ということもよくありました。そこでこの課題を解決するために、私たちは雑誌の観光地情報と地図情報を簡単に連携させる方法を持ってきました」(萩原氏)。

彼らが持ち込んだのは、自分だけのオリジナルガイドを自動生成してくれる、というアイデアだった。雑誌の掲載データを取り込み、さらに裏側でChatGPTを活用して掲載されている飲食店や観光スポットの情報、住所などを抽出し、それを自動的にリスト化。カテゴリ分類などもした上で、これをGoogle Mapsのデータと自動的に紐づけて場所を表示させる。従来、ガイドブックなどで人手でやっていた作業を「1ページあたり5分」(萩原氏)で概ね完了させることに成功していた。

取り込んだ雑誌データをChatGPTがリスト化。従来これは手動でやっていた面倒な編集作業のひとつだ

もちろん精度の問題はあるものの、日頃、Webtoonの制作において効率化を求めるアイデアが活かされた形だ。従来人力で実施していたリスト化などの業務が効率化されれば、そのリソースを新たな企画などに振り向けることもできる。ちなみに彼らはこのデモアプリを数時間で組み上げたそうだ。

さらにこのアイデアが狙うのが雑誌のデジタル化(DX)だ。今回、テーマを提供してくれたことりっぷマガジンは読み物として、また旅行のガイドとしての価値を提供してくれていた。ここに生成型AIによるアイデアが加わることで、ユーザーにはその場で作ることができる、自分だけのデジタルガイドという体験が加わる。エンゲージメントが向上するだけでなく、このサービスを通じてどのような旅行を楽しんだのか、というデータの収集も可能になる。

すでに持っているデータと生成型AIを組み合わせることで、読み物としての雑誌から体験ができるサービスへと発展させるだけでなく、デジタル出版社としてのソラジマらしい、制作作業の効率化についても触れる提案となっていた。

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