
Creators × Publishingは「テクノロジーから見える編集のミライ」をテーマにした勉強会をお送りします。雑誌の定期購読サービスを展開する富士山マガジンサービスと連携し、旬のテクノロジーと雑誌社を組み合わせた話題を提供いたします。本稿は9月1日に開催した出版ハックデイのレポートの一部。
公認会計士とエンジニアという「二つの顔」を持つのがジュリオ代表取締役の姥貝(ウバガイ)賢次氏だ。彼らが開発する「財務AIジュリエット」は財務分析を効率的に行うためのAIツールで、対話型AI「ChatGPT」をベースに独自に開発した。数時間かかる財務分析業務をワンクリックで実現してくれることから、今、話題のサービスになっている。
そんな姥貝氏が出版業界に持ち込んだアイデアは、この財務AIジュリエットを開発した知見や、ここに最近搭載されたばかりの「業務プロセス図」自動生成機能を活用したものだった。姥貝氏はまず、「旅行アプリなどを提供する事業者に旅専門のAIをAPI形式で提供する」アイデアの全体像を語った。
「旅行アプリ事業者は世界中に多く存在しており、各々がユーザーに対して様々な情報を提供しています。しかし、より高品質で深いデータが欲しいはず。ここに、ことりっぷマガジンの持つ良質なデータをAPI化し、それを最適化した形で提供することで新たなビジネスにする」(姥貝氏)。
姥貝氏のアイデアはこうだ。まず出版社が持つ独自の書籍データを生成型AIに組み込む。出版社はこれを直接アプリやサービスとして消費者に展開するのではなく、API形式で提供する。これらのデータを使ってサービスを展開したい事業者はAPIを叩いて独自のアプリやサービスを展開する。ジュリオでは特にデータをAIに統合させる技術について強みを持っている。この最適化の技術が開発に役立つとした。

今回はことりっぷマガジンがテーマとして提供されていたので、姥貝氏は書籍データAPIを活用した旅行ガイドアプリを用意しデモを披露した。サービスのデモでは旅行アプリを提供する事業者がチャット形式でおすすめの旅の工程を提供するシーンがデモで示された。例えばユーザーが「京都への旅行」に関する情報を求めた場合、特定の旅行雑誌やガイドブックの内容(今回のデモではことりっぷマガジンを想定)を組み合わせて、パーソナライズされた情報を出力する。出力結果に「何月号の特集記事からの情報」といったメタデータと、電子書籍の購入リンクを併せて提供することでアフィリエイトにすることも可能になる。
雑誌の場合、どうしても最新号に目が行きがちだが、過去のバックナンバーにも魅力的な情報が眠っているはずだ。こうした過去データを活用して新たなサービスに展開できるのもこのアイデアの魅力の一つと説明した。また、今回出力された旅行工程に対して「プロセスに変換」というボタンをクリックすると、旅行の工程表がテキストではなく、プロセス図として表示されるデモも示された。
「例えば、東京から新幹線に乗るというプロセスを文章で入力すると、それを視覚的な図に変換します。この変換は専用のボタンを押すだけです」(姥貝氏)。
書籍データをサービスに変換するという点ではソラジマ社のアイデアと類似するが、書籍データを活用したAIをAPI提供する点や、テキスト情報を視覚的なプロセス図に変換する箇所については新たな可能性として示された形だ。
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