東京の不動産業界にはまだ大きなチャンスがある【ゲスト寄稿】

本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。彼は、日本で Shizen Capital(旧 Tachi.ai Ventures)のマネージングディレクターを務める。本稿は Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。英語によるオリジナル原稿は、BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Mark Bivens. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist. He is the Managing Partner of Shizen Capital (formerly known as Tachi.ai Ventures) in Japan. The original English article is available here on Bridge English edition.


神谷町トラストタワーから見た麻布台ヒルズ
Image credit: Masaru Ikeda

先日、ヨーロッパのある大手成長株ファンドから連絡があった。このファンドは北米だけでなくヨーロッパ全土に投資している。東京にオフィスを開設することを検討しているとのことで、私に連絡をくれた。

これはもちろん素晴らしいニュースであり、日本のデジタルルネッサンスという投資機会に、世界各地の資本配分担当者がいかに目覚めているかを示すものだ。

このファンドとの話し合いの中で出てきた逸話に、東京のオフィス探しに関するものがある。東京の不動産会社がいかに大きなチャンスを盲目的に見逃しているかを思い知らされた話だ。

このファンドは、ある有名な不動産デベロッパーのウェブサイトの問い合わせフォームから問い合わせをしたらしい。彼らは、その不動産会社の web サイトの英語版で、英語で問い合わせをした。これが最初のミスだったのかもしれない。

それから2ヶ月以上が経過したが、ファンドマネージャーはいまだに不動産会社から何の返答も受けていない。

東京の皆さん、お留守ですか?

このファンドの運用資産は20億米ドルを超え、投資先企業は10カ国に100社以上ある。彼らは将来の東京オフィスを、APAC(アジア太平洋地域)への投資とヨーロッパ企業の日本市場参入のための発射台として利用するつもりだ。言うまでもないことだが、このファンドが運用レベルで初めて日本と接したときの印象は、決して良いものではなかった。

私は幸運にも、日本のいくつかの不動産会社の投資チームやイノベーションチームのメンバーに会うことができた。お会いした方々はほぼ全員、驚くほど知的でオープンマインドで、革新的な方ばかりだった。しかし、一方では日本の不動産会社の戦略と、他方では日本をスタートアップ国家に変えようという政府の野望との間に断絶があるように思える。

日本政府は、短期間で日本のベンチャー・エコシステムを加速させるという驚くべき進歩を促す政策を打ち出した。私は、こうした改革を推進する政府の先進的なチャンピオンに脱帽する。確かに、日本は北米やヨーロッパなど他の成功したベンチャーエコシステムの後塵を拝しているが、遅れていることの利点は、日本が見習うべき成功モデルが存在するということだ。

グローバルイノベーションハブの構築に向けて不動産を配分する場合、フランス、オランダ、北欧諸国が素晴らしい成功を収めた経験から得た教訓は、日本が検討すべきことである。

ヨーロッパの友人たちが発見したように、最高のイノベーションは、物理的に近い場所に多様なスタートアップに取り組む起業家が密集しているときに生まれる傾向がある。これは理論的に正しいだけでなく、それを裏付ける実証的証拠もある。創業者の密度がある閾値を超えると、ユニークな洞察や画期的なイノベーションが生まれる確率は指数関数的に上昇する。

20年前、前述のヨーロッパ諸国は、シリコンバレーをそれぞれの地域で再現することを目指した。しかし、サンフランシスコ・ベイエリアがスタートアップのハブになるための肥沃な条件の多くが欠けていた。何度かの失敗を経て、彼らは最終的に必要な起業家の密度を高めるためのコードを解読した。

国際的なスタートアップハブを育成する方法

では、ヨーロッパではどうだったのだろうか? 重要な要素のひとつは、スタートアップに無料でオフィススペースを提供する方法を見つけたことだ。政府が直接資金を提供した例もあれば、銀行や不動産会社などの民間セクターが自ら無料オフィスを提供するよう働きかけた例もある。

スタートアップの創業者からすれば、家賃に1ユーロを費やすごとに、1ユーロがイノベーションに取り組む時間から削られることになる。そのため、当然ながらスタートアップの創業者たちは、こうした無料オフィススペースの提供に群がった。臨界密度のしきい値を超え、好循環が始まるまでに長い時間はかからなかった。

さらに、こうしたスタートアップオフィスハブは、大企業がテナントとして入ることを望む、最も人気のある場所のひとつとなった。不動産所有者の最も狭い財務的観点から見ても、スタートアップに無料でオフィススペースを提供することは、物件の魅力の向上から十二分に元が取れたのである。

日本が国際的な投資家の注目を集めつつある今、不動産会社が従来のビジネスモデルから一歩踏み出し、世界的なスタートアップやファンドマネジャーの東京ハブになる絶好の機会がここにある。

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