サービス終了したZenlyの創業者が新会社を設立、時価総額1億米ドルをつけたアプリ「ID」勝算はいかに

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「ID」
Image credit: Amo

2017年、Snap はソーシャル地図アプリ「Zenly」を2億米ドルで買収した。Zenly はかつて3,500万人のアクティブユーザを誇り、地図機能を備えた SNS だった。しかし、Snap は同社が開発したいと考えていた「Snap Map」とサービスが被るため、Zenly を閉鎖することを決定したと2022年に発表した。Zenly の共同創設者である Antoine Martin 氏はこれに遺憾の意を表明するとともに、数社の Zenly パートナーと提携して新会社 Amo を設立すると発表した。

Amo のプロダクト「ID」は初期の Tumblr と似ており、フォロー、コメント、リブログによって友人同士が交流できるようになっているが、コンテンツが短い投稿からスタンプや写真に変わった点が異なる。現在、Amo は1,800万米ドルを資金調達しており、評価額は1億米ドルである。

Amo は Zenly の本来の目的「積極的なソーシャルインタラクション」を継承

Antoine Martin 氏

Facebook や Instagram などの SNS は、何度もアルゴリズムが変更され、今では、現実の友人との交流を深めるよりも、見知らぬ人の近況や広告、コミュニティのホットな話題など、より多くのコンテンツを見ることができるように設計されている。

Martin 氏は、コミュニティが無限にスクロールするコンテンツのプラットフォームになれば、満足するのはユーザではなく広告主だと考えている。彼がかつて共同創業した Zenly は、SNS を現実のソーシャルインタラクションに戻すことを目的としていたユーザは GPS で友人の位置を確認したり、アプリ内で友人にインスタントメッセージを送ったり、特定の場所で会ったりすることができる。

Zenly が Snap によって閉鎖された後、Martin 氏は新会社 Amo を設立し、新製品 ID を発表した。ID は Tumblr や Pinterest に似ており、真っ白なキャンバスをコンセプトに、ユーザがプラットフォーム上で好きなものを作成し、クリエイティブなインスピレーションを集め、自分だけのパーソナライズされたホームページを通じて交流することを可能にする。Martin 氏は、ユーザが創作の過程で商業的な情報に邪魔されないことを望んでいると考えており、ID ではアルゴリズムによるレコメンドはない。

広告のない SNS で、どのようにポップカルチャーを創造できるのか?

ID をタップすると、ユーザは広告のない真っ白なキャンバスに移動し、そこで自分の部屋のようにレイアウトをデコレーションすることができる。写真や動画を挿入したり、ID のクリエイティブツールを使って、さまざまなフォントやブラシを使って独自スタンプを貼ったり、テキストを書いたり、絵を描いたりすることができる。

友人との関わりもこの真っ白なキャンバスで行われる。メッセージボードと同様に、友人であるユーザは、自分だけのサイン、写真、スタンプなどを残すことができ、友人のキャンバスにある気に入ったコンテンツを自分のキャンバスに直接コピーすることもできる。

このような機能によってユーザ間の交流が深まるため、アルゴリズムによるレコメンドがなくても、プラットフォーム内でポップカルチャーが形成される可能性がある。また、将来的には ID は、アンロックに料金支払が必要なツールの導入も予定している。

ID はユーザ同士の会話をどのように促すのか?

ID は現在、iOS ユーザのみが利用可能で、16歳以上である必要があり、携帯電話番号でのみ登録できる。ユーザがアカウントを悪用しないよう、携帯電話番号1つにつき1つのアカウントしか作成できず、連絡先情報は携帯電話と同期していなければならない。Zenly の登録と同様、Martin 氏はバイラルマーケティングを利用して ID を宣伝し、ユーザに ID を友人と共有してもらうことで、ユーザ間の敬意と SNS の話題性を生み出している。

しかし、このような厳しい設定により、ID はアプリストアの SNS 部門で22位にランクインしているにもかかわらず、多くの否定的なレビューが寄せられている。「アカウントを作成するために、連絡先にある友人を招待しなければならない意味が分からない」「自分用にアカウントを開設するためだけに、友人にアプリのダウンロードを依頼しなければならないのは迷惑だ」など。

ユーザの「リアルな関係」と「プライバシー」のバランスをどう取るか、ネガティブなコメントをどう改善していくかは、ID が今後考えるべき方向性なのかもしれない。

ID はまだアプリストアで入手可能である。Martin 氏がまだ市場でバランスを取るために試行錯誤しているのは明らかなので、この新しい SNS の試みがどうなるのか見守りたい。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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