ストリーミング・エンターテインメント・プラットフォーム「17 LIVE(17直播) 」が8日、シンガポールで上場した。シンガポール初の SPAC(特別目的会社)である VTAC Technology Acquisition Corporation Limited との合併により上場し、17 LIVE の時価総額は9億9,910万〜11億6,190万シンガポールドル(およそ1,080〜1,260億円)の範囲になると推定される。
17 LIVEが財務目標を達成した場合、VTAC は該当する株主に1株当たり5米ドル、総額約1億2,200万米ドルの価格で2,440万株の新株を配布し、買収総額は最大9億2,290万米ドルに引き上げられる。
シンガポール証券取引所グループ(SGX)の社長兼グローバルマーケット責任者 Michael Syn 氏は、次のように語った。
17 LIVE の SGX メインボードへのデビューを祝っていただき、ありがとうございます。これは17 LIVE と Vertex にとって勝利の瞬間であり、シンガポール初の De-SPAC 取引における重要なイベントであり、両者の共通のビジョンと戦略的パートナーシップを示すものです。これにより、ライブストリーミング市場は、特に創造性、新しいユーザ体験、そしてお金を使う能力への欲求を持つ多くのデジタルネイティブが存在する東南アジアにおいて、加速度的に拡大するでしょう。
17 LIVEの名誉会長でシンガポールの起業家 Joseph Phua(潘杰賢)氏は、次のように述べた。
私たちは会社の歩みの中で重要な節目を迎えました。世界的なライブストリーミングブームの中、当社グループをさらに拡大するチャンスをつかむため、シンガポール取引所や個人株主など、新たなステークホルダーの参加を歓迎します。シンガポールを国際的なゲートウェイとして活用し、東南アジア市場でのグループの存在感を高めるための足がかりにします。
1分でわかる17 LIVEのビジネスモデル
17 LIVEは、AI 技術(インテリジェント・パーソナライズド・サーチ&レコメンデーション)を活用したライブストリーミング企業である。プラットフォーム上で、ユーザはライバーとリアルタイムで交流し、バーチャルギフトを送ることで彼らへの感謝や応援を表現することができ、ライバーに成功をもたらす。
2023年度上期を振り返ると、17 LIVE の月間平均アクティブユーザ数(MAU)は約55万人、ユーザの1日平均閲覧時間は約93分、月間平均ユーザ利用率は16.1%だった。2023年6月30日現在、17 LIVE は日本、台湾、香港、シンガポール、アメリカ、フィリピン、インド、マレーシアで、契約ライバー約8.7万人、会員5,000万人以上を擁している。
17 LIVE は近年、オンラインでのライブストリーミング体験に加え、オフラインでのコンサート、セレモニー、ファッションショーなどのオフライン活動の開催にも力を入れており、ライバーとユーザとの交流を深めるため、ライバーがブランド協力の場に参加することも奨励している。
営業状況
— | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
売上高 | 4億1,140万米ドル | 4億9,780万米ドル | 3億6,370万米ドル |
粗利益 | 1億7,540万米ドル | 1億8,770万米ドル | 1億2,610万米ドル |
営業利益 | 2,440万米ドル | 1,040万米ドル | 1,010万米ドル |
純利益 | 5,190万米ドル | 1,095万米ドル | 5,100万米ドル |
EBITDA | 3,030万米ドル | 1,550万米ドル | 1,500万米ドル |
2022年通年の業績を見ると、17 LIVE 全体の売上高は約3億6,370万米ドル、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は1,580万米ドルとなる。
しかし、リスクもある。シンガポールのメディア「The Straits Times」によると、17 LIVE の収益性は2021年以降、アクティブユーザの減少や経営陣が大規模な有料会員獲得に注力していることなどが原因で低下している。
2023年上半期の売上高は1億5,100万米ドルで、前年同期の2億400万米ドルから約25%減少した。上半期は1億1,820万米ドルの赤字だったが、前年同期は4,200万米ドルの赤字だった。
IPO後の業績はどうなるのか? 目が離せない。
主要株主
以下の株主グループが17 LIVE Group Limited の株式の10%以上を保有している。
- Vertex Holdings(シンガポールの投資会社 Temasek の子会社)
- 創業者チーム(Joseph Phua 氏の会社 Dragon Alexander Limited、Angela Phua 氏、グループ CTO Jing Shen Ng=呉勁燊氏)
- IVP ファンド(M17 Growth SPV LLC、M17 Growth SPV B LLC、Infinity e.Ventures Asia III, L.P.、IVP Annex I LLC を含む)
ライブストリーミング技術に注力し、3つの方向性で事業を拡大
17 LIVE は今後、ライブストリーミング技術をコア事業とし、「バーチャルライブストリーミングホスト(V ライバー)の採用拡大」、「ライブストリーミング中のインタラクティブゲームの開発」、「ライブストリーミング e コマースの構築」の3つの方向で事業を展開していくことを確認した。
IPO のニュースを受けて、Phua 氏は次のように語った。
時間をかけて、私たちはコアコンピタンスに磨きをかけ続けてきました。同時に、ライブストリーミング・エコシステムというビジョンの下、いつでもどこでも人々とより良いつながりを作る準備ができています。そして今、VTAC の強力な技術的専門知識により、私たちはこのビジョンを実現するためのさらに大きなチャンスを手にしています。イノベーションのリーディングブランドとして、このパートナーシップは当社のリーダーとしての地位を強化するものです。
【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup
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