6人のビジョナリーVCに聞いた、2024年のスタートアップシーン予測【ゲスト寄稿】

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本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。彼は、日本で Shizen Capital(旧 Tachi.ai Ventures)のマネージングディレクターを務める。本稿は Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。英語によるオリジナル原稿は、BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Mark Bivens. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist. He is the Managing Partner of Shizen Capital (formerly known as Tachi.ai Ventures) in Japan. The original English article is available here on Bridge English edition.


私は、読者の皆様にとって建設的な対話の機会となると同時に、洞察力のある女性VCの声が世界的な舞台で認知されるよう、テクノロジーやスタートアップ業界に関する予測記事を数年前から毎年発表し始めました

そして今回は、以下の女性キャピタリストの方達からインサイトをご提供頂きました。彼女たちは、2024年のベンチャーエコシステムに大きな好影響を与えていくことでしょう。

皆さん、良い年末年始をお過ごしください!

Kathy Matsui 氏(MPower Partners ゼネラル・パートナー)

1. ESG の復権:2023年には「グリーンウォッシング(訳注:環境配慮をしているようにみせかける企業の欺瞞的な環境活動)」などの批判が世界中の ESG センチメントにマイナスの影響を与えましたが、投資家と規制当局による ESG の本質に関する監視が強化されれば、より質の高い情報開示と長期的な価値創造の強化につながる可能性が高いため、実際にはポジティブな展開であると考えています。

2. 日本の IPO と M&A 市場の復活:他の市場と同様、2023年は日本の IPO 市場も冷え込みましたが、世界的な景気後退が回避され、インフレ・金利が抑制されると仮定すれば、国内 IPO 市場は2024年に回復する可能性が高いと思います。さらに、最近の日本のスタートアップ企業の買収に伴い、 M&A がますます人気のある Exit オプションになる可能性があると弊社は見ております。

Maria Gutierrez Peñaloza 氏(Nido Ventures 共同創業パートナー)

メキシコにおけるニアショア開発は、特に製造業とテクノロジー分野で大きな成長を遂げようとしています。地理的な近さ、文化的な結びつき、同じタイムゾーン、コスト面のメリットなどを背景として、メキシコ近隣への事業移転を検討する米国企業にとって理想的な進出先として位置づけられるようになっています。

かつてはハードルと見なされていた製造業の技術格差ですが、メキシコ企業にとってこの動向は今や品質・効率性・革新性の高い技術開発にコミットするまたとない成長機会となっています。この技術進歩が、メキシコの潜在成長力への自信の根拠となり、外国直接投資の着実な増加とともに、ベンチャーキャピタルからの多額の投資を引き付けており、今後もその傾向は続くことでしょう。

私たちはニアショア開発のインパクトがより大きくなると予想しています。メキシコ現地企業が技術力を高め技術格差を埋めることで、ベンチャーキャピタルが集まり、イノベーションと成長を推進していくのです。これにより、テクノロジーと製造業が融合するダイナミックなエコシステムが形成され、メキシコがアメリカ大陸におけるハイテク製造業のハブとして確立される可能性があります。

Nido Ventures は、このニアショア開発の波に積極的に投資しており、ニアショア開発の効率性を直接・間接的に高める企業を投資ターゲットにしています。来年は、重要な戦略的パートナーシップ、ベンチャー資金調達の増加、B2B 領域におけるハイテク主導の新興企業の増加が見られ、メキシコの世界的な経済的地位がさらに強固なものになることでしょう。

中山悠里氏(アニマルスピリッツ ディレクター)

2024年も、2023年に引き続き Climate Tech 領域の動向に注目しています。
2015年の COP21で採択されたパリ協定を契機に、世界各国/多くの企業がカーボンニュートラル目標を宣言するようになりました。また、その目標を達成するためには技術的なブレイクスルーも求められていることから、本領域でのスタートアップ創業・投資活動が活発化しており、気候変動領域に特化したファンドも多く誕生しています。

日本でも少し遅れて Climate Tech というテーマが注目・資金を集めるようになってきました。まずはソフトウェア領域における Climate Tech テーマが盛り上がっている印象でしたが、ここ最近は Deep Tech 領域のスタートアップにおいても資金調達が盛んになってきているように思います。温室効果ガスの上位排出国である日本も脱炭素化に向けた対策は急務であり、来年以降もこの流れは続いていくものと思います。

後町陽子氏(キャピタルメディカ・ベンチャーズ ベンチャーキャピタリスト/マネージャー)

2023年は新たなインパクト投資ファンドが複数誕生し、初のインパクト IPO 企業も誕生するなど、国内においてこれまで以上にインパクト投資・インパクトスタートアップ企業が注目を集めました。

2024年もこの傾向は加速すると予想しますが、プレイヤーが増えるにつれ、「インパクト投資・インパクトビジネスを実践している」というだけの価値は相対的に薄れ、その中身が強く問われるようになるでしょう。インパクト測定・マネジメント(IMM)により創出するアウトカムに対し、PDCA を回し改善をかけられているのか、また創出するインパクトに対し自社の貢献性があるのか(自社の事業がなければ達成されなかったのか)が問われると考えます。これはスタートアップ企業のみならず投資家も同様です。

投資家の貢献性が社会からも起業家からも強く問われる年となるとみられることから、私自身もインパクト投資実践者として一層気を引き締めて取り組んでいきたいと考えています。

高橋桃花氏(HAKOBUNE ベンチャーキャピタリスト)

2024年は、AI 技術とイマーシブな体験の進化や融合、そして IP(知的所有権)と UGC(ユーザ生成コンテンツ)が鍵となって、エンターテインメントや購買体験を大きく躍進させる年となると考えています。映画や音楽、ゲームや文化などを題材に消費者が直接コンテンツの一部となる没入型体験と、そこから生まれる UGC が互いに影響を与え合い、AI によるパーソナライズによって、より鮮やかでいきいきとしたエンターテインメント体験が実現します。

また、購買体験も消費者の好みや経験を反映することで、購入プロセス自体が個性的でエンターテインメント性のある体験へと変わるでしょう。AI の進化と民主化が、消費者に前例のないレベルのカスタマイズと没入感を提供し、さらにコミュニケーションとクリエイティビティの新たな局面を開き、未来のライフスタイルを形作る新しい文化的パラダイムへと導くことでしょう。恐れずこの変革の波に乗っていきたいと思います。

分部真由美氏(自然キャピタル インベストメント・ディレクター)

2050年、アフリカ大陸の人口は約25億人(世界人口の1/4)に到達すると予想され、それは大きく若い市場であると共に人材の宝庫である事も意味します。また、アフリカ大陸自由貿易圏構想の元、人やサービスの域内移動の自由化・単一市場への動きが始まっています。

この潜在力を前に、様々なグローバルプレイヤーとともに、欧米で生まれたアフリカンダイアスポラ(訳注:アフリカ出身者の世界に離散したコミュニティ群)が資金・ネットワークを携えてスタートアップや VC としてアフリカ経済に参戦しています。アフリカ各国政府も経済成長のドライブとしてスタートアップに注目し規制改革や連携事業も盛んです。

2023年は、2022年のアフリカ全体の投資額約65億米ドル(うち、16億米ドルはデット)に比べてかなり落ち込みました。また、InstaDeepの買収(6億8,200万米ドル)等の Exit があった一方で、メディアで話題になったスタートアップのダウンラウンドや廃業も起きました。つまり、Exit への肌感が増したとともに、DD(デューデリジェンス)・組織経営・変化する経済情勢(供給コストの急騰や通貨等)への意識を高める重要な年になったと言えるのではないでしょうか。

加えて、アフリカ内外問わず(日本発も複数)既存ファンドだけでなく新規アフリカファンドも、キャピタルゲインや事業シナジーを求め増え続けています。故に2024年は、視座高く2022年以上の投資が実行されるアクティブな年になるとともに、私自身もその動向を後押しする活動をしていきたいと思っています。

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