5人のビジョナリーVCに聞いた、2023年のスタートアップシーン予測【ゲスト寄稿】

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mark-bivens_portrait本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。彼は、日本で Shizen Capital(旧 Tachi.ai Ventures)のマネージングディレクターを務める。英語によるオリジナル原稿は、BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Mark Bivens. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist. He is the Managing Partner of Shizen Capital (formerly known as Tachi.ai Ventures) in Japan. The original English article is available here on Bridge English edition.


2022年は、様々な意味で激動の1年だった。そのような1年が明けた中、洞察力のあるベンチャー投資家の方々から、新年に向けて注目しているトピックを教えていただくことにした。

例年通り、シリコンバレーの有名VC以外の声をお届けし、今回も女性ベンチャーキャピタリストの知恵を紹介する。

2023年も我々にとって、より悟りの多い年でありますように。ハッピーホリデー!

関 美和氏(日本・MPower Partners)

2022年は、ESG投資に対する懐疑的な見方が広がり選別が強まった年だった。さらにEからSへ、特に従業員エンゲージメントの分野に焦点が移行してきた。その中でDEI (Diversity, Equity and Inclusion) は不可欠な要素として注目が高まると思われる。

MPowerでは、男性創業者のみのスタートアップと女性・マイノリティ創業者がいるスタートアップのIPOリターン格差について調査を行った。その結果、IPO時の資金調達額あたりのリターンは、女性・マイノリティ主導のスタートアップの方が高いことがわかった。

また、弊社が実施したスタートアップ調査でも、ESGを経営に取り入れているスタートアップは、従業員のエンゲージメントが高いという結果が出ている。このように、2023年はスタートアップやベンチャーキャピタルの間でDEIがより注目されるようになるだろう。

太田 明日美氏(日本・D4V)

日本発のコンテンツ、技術、製品(マンガや質の高い「Made in Japan」製品など)のグローバル展開を狙うビジネスに期待している。日本のベンチャー企業で働く人材の多様化、グローバル投資家からの日本への関心の高まりから、様々な分野で日本の優れたものを海外に発信しようという起業家が増えていると感じる。

昨年までに引き続き注目しているのは、ペインを抱えながらも、これまで大きな変革に踏み出せなかった業界・産業のデジタル化領域だ。例えば、ヘルスケア業界は個人情報保護やその他の規制によってイノベーションのハードルが高いとされてきたが、治療用アプリの医療機器認定を推進する動きや遠隔診療の普及をきっかけに、目覚ましい進化を遂げようとしている。

コロナ禍はレガシー手法を貫いてきた企業・業界が変化せざるを得ない状況を生み、斬新なアイディアを素早く形にするベンチャー企業が入り込む余地を作り出した。こうした事業領域では、大企業や政府、自治体などのステークホルダーとの協業が重要になる。デジタル化やオープン化、ベンチャー投資を進める政策と世相の後押しを受けて、スタートアップが大きな進化を遂げる土台が整ってきたと言える。

最後に、厳しい経済環境が続くなか、スタートアップの調達に関しては会社ごとに明暗が分かれ、二極化した状態が続くだろう。そうした影響から黒字経営やESGへの取り組みが今後さらに重要度を増すと予想する。消費者は企業が掲げるミッションやストーリーへの共感を重視し、大企業はESG関連投資を拡大していく流れがある。ESGへの取り組みはもちろん、それを発信していくためのストーリーテリング力がある企業に、資金が集中することになるだろう。

Janneke Niessen氏(オランダ・CapitalT)

気候変動は、シャレにならないほどホットな話題だ。気候変動に関する当社のポートフォリオ企業は、事業成長を実現し、多くのVCコミュニティからの関心を得ている。

2023年にはこの傾向がさらに強まり、これによって地球規模での気候変動の反転が加速されると期待している。

また、この分野のハードウェア企業は、これまで資金調達が困難だったが、気候テックへの関心が加速しているため、新年には資金調達の選択肢が増えることになるであろう。

宮原 綾子氏(日本・Genesia Ventures)

新たな資金の流れ:グローバルな市況の変化からスタートアップ向けの資金流入はよりセレクティブになるだろう。一方で、徐々に満期を迎える日本国内ビンテージファンドにおいては、DPI(実現倍率)やネットマルチプルが芽を出し始めると言われており、こうしたトラックレコードを梃にした新たな資金の流れに注目している。

インパクト投資:岸田政権の打ち出す「新たな資本主義」にアラインする形でスタートアップエコシステムの再構築が進展。経済的リターンに加えて社会的インパクトの重要性に対する認知度が拡大する中で、資本市場における評価手法など環境整備の議論が本格化すると予想される。

アジアとの連携:東南アジアやインドは、力強い経済成長やLeapfrog的に立ち上がるデジタル領域における将来性、そして日本企業のExit機会が豊富に存在することなどにより引き続き有望な市場。特にインドは2023年に中国を抜いて世界一の人口に達すると言われており、米中対立やウクライナ問題を忌避する投資家から注目を集めている。日本企業は製造業を中心にインドへの進出が進んでおり、同セクターで展開されるインフラテックに注目したい。

高森 遥氏(日本・STRIVE)

AIの民主化が飛躍する年へ

2023年はAIの技術進歩によりデジタルプロダクトの進展がさらに期待されるでしょう。

2022年にはOpenAIのChatGPTがリリースされたことにより、ハイレベルなAI知識がなくとも容易にAI技術を開発やプロダクトクリエイションに応用することができるようになりました。言い換えますと、今までにない精度と効率性でAPI連携を通じて、目的に相応したLow-Code, No-Code, Generativeプロダクトを作成することが可能となるということです。

AIのアウトプットを言語・非言語二つの軸で分けるとすると、言語解析領域においてはプログラミング知見の普遍化、非言語解析領域ではプロダクトデザインにおける心理・認知関係の解明がさらに進み、その結果パーソナライズされたプロダクトの需要も高まると予想されます。

さらには、プロダクト作成プロセスの効率化・最適化のみならず、AIによって生成されたプロダクトの検証作業を担うサービスへの需要が高まることを予測します。

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