トークン投資で温室効果ガスも削減、a16zが支援する「Flowcarbon」の方法(2)

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Image credit:Flowcarbon

(前回からのつづき)ニューヨーク州ニューヨークに拠点を置くFlowcarbonは、ブロックチェーンを用いて気候変動に対処するプロジェクトに投資できるカーボンクレジットのマーケットプレイスを運営するスタートアップだ。2021年創業の同社は、これまでにa16z cryptoなどからシリーズAラウンドの資金調達を完了し、累計調達額は7,000万ドルになっている。

カーボンクレジットの市場規模は2030年までに500億ドルを超え、2050年には2030年の5倍を超える市場規模に発展する可能性があるという。しかし、現状の市場はカーボンクレジットの質と透明性という面において信用できる選択肢がなく、専門知識を社内リソースとして持たない大小様々な企業が足踏みし、個人は参加する権利がなく蚊帳の外にいる状態だ。同社はブロックチェーン技術によりカーボンクレジットをトークン化することでアクセスの民主化、価格の透明性、クレジットのトレーザビリティを市場にもたらし、市場停滞のボトルネックの解決を目指している。

同社が発行するのGoddess Nature Token (GNT)だ。GCO2と呼ばれるERC-20トークンで構成されるバンドルトークンで、GCO2の1トークンと大気中1トンの二酸化炭素相当量の削減または除去を表す1カーボンクレジットを等価としている。この対比評価は第三者機関を通じて信頼性を担保しており、カーボンオフセットの利用だけでなく、売却や借入れ、貸出しなどの実世界の信用取引も可能になるとしている。

Image credit:Flowcarbon

同社が開発するマーケットはVoluntary Carbon Market (VCM)と呼ばれる。VCMは個人、企業が自主的にカーボンクレジットを売買する市場のことで、カーボンクレジットを購入すると、大気から温室効果ガス (GHG) 排出を除去するプロジェクト、または輸送、再生可能エネルギー、農業、林業などのGHG排出を削減する取り組みに資金が提供され、削減活動が促進に貢献できる場を提供する。パリ協定で設定された温室効果ガス削減目標を達成するために国同士で行われる二国間クレジット制度(JCM)を民主化し、企業同士で残留排出を中和するための仕組みとも言える。そのため、VCMはパリ協定第6条の規則に準拠する必要がある。

これは同社のマーケットも例外ではない。カーボンクレジットのトークン化は既存のクレジットの基準を満たし、International Carbon Reduction and Offset Allianceによって設定された厳しいカーボンクレジット要件をパスすることが求められる。マーケットフィットと高い基準を突破するプロダクト製作力、これが同社の強みと言えるだろう。

同社の取り組みは分散型金融 (DeFi) と再生経済学を組み合わせたリジェネレーティブ・ファイナンス(ReFi)の最たる事例になる可能性がある。長期的な経済的成長を前提に、失われたものを再生しつつ、残っているものを保存するように経済を設計するのが再生経済学と呼ばれるもので、アクセス性と品質が問題となる市場と、不透明な中央集権的を排除するDeFiはそもそも相性が良いのだ。

すでに存在するカーボンクレジットをアップデートし、善意によって成り立つイメージが先行する環境保全、ESG領域に対して経済的インセンティブを生み出せる仕組みを作ったのがFlowcarbonということになる。

次につづく:インパクト投資をクラウドファンディングにした「Raise Green」のメリット(3)

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