JR東、協業プログラム2022年春期のデモデイを開催——ミミズ型ロボットで配管メンテや清掃を効率化するソラリスが優勝

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JR 東日本スタートアップは8日、インキュベーション/アクセラレーション・プログラム「JR EAST STARTUP PROGRAM」の2022年春バッチのデモデイを開催した。これは JR 東日本とスタートアップのオープンイノベーションを促進するためのプログラムだ。

協業プロジェクトをより速いスピードで数多く輩出すべく、今年から1年間に春と秋の2バッチ開催体制に変更となった。今回のバッチには応募のあったスタートアップ116社のうち10社が採択され、約半年間におよぶプログラムに参加、この日のデモデイを迎えた。

今回は、「地域共創」「デジタル共創(DX)」「地球共創(SDGs)」という3つの提案テーマが設定された。本稿ではデモデイでのピッチの結果、審査により入賞した3社を紹介する。

デモデイで審査員を務めたのは、以下の6人の皆さん。提案内容の「新規性」「ビジネス性」「JR 東日本のリソースをいかに活用しているか」の3つの指標によって評価された。

  • グロービス・キャピタル・パートナーズ 共同創業パートナー 仮屋薗聡一氏
  • Q0 代表取締役社長 林千晶氏
  • 守屋実事務所 代表 守屋実氏
  • JR 東日本 代表取締役副社長 事業創造本部長 喜㔟陽一氏
  • JR 東日本 代表取締役副社長 技術イノベーション推進本部長 伊勢勝巳氏
  • JR 東日本 常務取締役 グループ経営戦略本部長 渡利千春氏

(文中写真は、いずれも当日のライブ配信から)

【スタートアップ大賞】生物型ソフトロボットが配管の問題を解決 by ソラリス

副賞:100万円

建物内に敷設された排水管でつまりや漏水が起きたとき、配管深部への侵入経路が無いため、どこに問題を生じているかの特定が難しいことがある。また、清掃作業においても、複雑な形状の配管深部は清掃しきれず、それが新たなつまりや漏水を誘発することもあるだろう。ソラリスは、空気圧で動く人工筋肉を開発するスタートアップで、それを使った、ミミズ型管内走行ロボット「Sooha」や腸管型ポンプロボットを世に送り出している。

配管構造が複雑な建物も多い JR 東日本に対し、ソラリスは Sooha を使った清掃の実証実験を提案した。JR 東日本ビルテック研修センター(FMTEC)での実験では、90°のカーブが4ヶ所、45°のカーブが2ヶ所ある配管を難なく走行し往復することができたという。また、赤羽駅の飲食店の排水管では、下流の排水マスから上へ昇る形で清掃ができたため、立ち会った清掃業者からも前例が無いと驚かれたという。空気圧を使っているため、水が残った排水管の中で操作しても、漏電や故障の恐れはない。

【優秀賞】高架橋鉄筋モデルの自動化と設計業務効率化 by Arent

副賞:50万円

建設業界では、従来の CAD による設計から進化する形で、3D モデルを活用したバーチャル環境での設計ができる BIM(Building Information Modeling)や、それを支援する PIM(Product Information Management)が浸透してきた。BIM や PIM を使えば、3次元の建物を3次元のまま設計できるので設計作業も効率化することができる。Arent は、労働集約型のBIM作業を一気に自動化してくれるソフト「LightningBIM 配筋」を提供している。

ここでいう「配筋」とは、鉄筋コンクリート造の建物工事の際の鉄筋の配置のことだ。鉄道の高架橋は、歩行者や自動車よりもはるかに重い列車が走行するため、通常の建物よりも配筋が超過密で特殊な設計となる。設計に手戻りが発生した場合には、その作業も煩雑だ。そこで Arent では、「スラブ(床コンクリ)自動配筋機能」「マニュアル編集機能」「梁自動配筋機能」を備えた自動モデリングソフトを開発、高架橋の設計業務の効率化を支援する。

【審査員特別賞】「シェアリングサービス」を活用した新たな列車旅行体験の創出 by Peace Tec Lab

副賞:10万円

日常生活において、使いたいが所有する必要がないモノは、貸し借りするシェアで済ませよういうのが、Peace Tec Lab が提供する「Alice.style」のコンセプトだ。現在は、祖業である Alice.style に加え、モノのシェアと賃貸住宅の組み合わせで家具などの引越作業を不要にする「Alice.style Room」や、モノのシェアと旅行の組み合わせで手ぶら旅を可能にする「Alice.style Travel」などを提供している。

Peace Tec Lab は、駅をモノのシェア拠点とする Alice.style Travel を提案。旅を計画するユーザには、モバイルアプリ「オンライン持ち物帳」を配布し、切符予約後に自ら持っていくものと借りるものを一覧整理してもらう。列車の中で使うものは、発駅で借りて着駅で返す、旅先で使うものはホテルで借りられる。駅まで重い荷物を自ら運ぶ手間や、必要なものを家に置いてきてしまうリスクを最小化できる。来年1月からは、東北新幹線の東京〜仙台駅間で実証実験を展開する予定だ。

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