#34 フィンテックのレジェンドが考える、web3ビジネスの広げ方 〜Nudge沖田CEO × ACV唐澤・村上〜

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ(ACV)がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャストでは旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

前回に引き続き、次世代型提携クレジットカード「Nudge」を展開するナッジ代表取締役の沖田貴史氏に話を聞きます。便利なデジタルツールを、ツールとして存在するだけでなく広く人々に使ってもらうこと、これを「社会実装」と呼んでいますが、新たな技術によって世の中が底上げされるには、それがカギとなります。

近年、新たな技術は社会実装に要する時間は短くなってきました。仕組みなど知らなくても、ここ30年ほどでインターネットは誰にも身近な存在となりました。Web3の今後にも同じような展開が期待されていますが、一部の人たちのだけものではなく皆のインフラにするには何が必要か。沖田氏ならではのアプローチを提案いただきました。

ポッドキャストで語られたこと

  • 「Cashless to Earn」とは何か。
  • web3を知らない人にも、NFTに親しんでもらうには
  • ファンに対する新しいリワードの形

前回からの続き)

唐澤:リワードの一つとして、NFTにはweb3的な要素が埋め込まれていると思うんですが、どうしてそれをやろうと思われたんでしょうか? また、今回期間限定でPoC(実証実験)をやられていたということですが、何を捉える作業で、どんな結果だったのかについて教えていただけますか?

沖田:「Cashless to Earn」というのは2022年の4月からやらせていただいているんですが、仕組みは今おっしゃっていただいた通り、体験型の特典をNFTにしましょうということです。最初は、とあるIPホルダーさんで大手企業の役員の方から「沖田さんブロックチェーン詳しいですよね。NFTについて、いろいろ考えたいんだけど」とご相談いただいたのが去年の春ぐらいですかね。

まだサービスを始める前のタイミングで、そういったご相談をいただいたんです。私は前職でブロックチェーンの会社をやっていましたが、最初は(Nudgeの機関システムは)ブロックチェーンを使う必要はないと思っていたので、当初のビジネスモデルの中にブロックチェーンは組み込んでいないんです。逆に言うと、IPホルダーサイドからNFTにどう取り組んでいいのか一緒に考えてほしい、と言われたのがきっかけですね。

何を申し上げたいかというと、前職は私まさにブロックチェーン屋さんだったので、ブロックチェーンを使わなくて良い時もブロックチェーンを使わないと会社の存在意義が無いわけです。でも今回は全然そうじゃなくて、ブロックチェーンが手段として有効であれば使う。今回で言うと、NFTは確かにリワードとして優秀だなと思います。

例えば、紅白出場歌手の加藤ミリヤさんに書道で文字を書いていただいているんですけど、その書がNFTになっているんですね。すごい達筆なんですが、普通のデジタルデータだと本当に本人が書いているかは分からないじゃないですか。いわゆるユーティリティトークンで、アクセストークンのような仕組みで、NFTの中にURLを埋め込んであって、そのNFTを持っている人だけが、その書いているシーンの動画が見られる設計にしています。

今回、何をPoCで確認したいのかというと2つあって、究極的にはユーザの使い勝手なんです。言ってみればウォレットとかも、多分我々も正直ベースで使いにくいなと思って使ってると思うんですよ。

NFTの初期は、元々クリプトに精通している人が入ってきているので、ウォレットとかに対して抵抗が無い、もしくはあったとしても、それなりにリテラシーの高い人なんです。今回のPoCでNFTを受け取っていただく方々はWeb3が目的じゃなくて、「加藤ミリヤさんが好き」「松井秀喜さんが好き」という人たちなので、そういう人たちが違和感なく使えるのかというのを確認したい。もう一つはアクセストークンとしての使い方が、ユーザに受け入れられるかどうかを確認したいということです。

今のところまだそんなに大々的マーケティングをやっている訳ではないので、ユーザが爆発的にいるというわけではないですが、今申し上げたような辺りのところは、一緒に組んでいる会社さんとUIを日々改善した結果、今のところはそこまで問題ないかなと思っています。

唐澤:別にクリプトとかweb3を知らなかったとか興味無かった方でも、問題なくウォレットを作ってNFTをホールドできたのは、「好き」が勝ったと捉えたら良いでしょうか?

沖田:そこまで楽観視はしていなくて、今回はウォレットを持っていない人でも受け取れるような仕組みを入れているんです。NFTを買う時にはボトルネックが2つあって、一つはウォレットが必要ということと、もう一つはクリプトで買わないといけないということじゃないですか。でも今回購入じゃなくて、あくまでもギブアウェイ(贈呈)なので、そこの部分が無いんです。なので、多少ハードル下がっていますが、今のやり方で本当に全部のマスユーザにリーチできるかというと、そこは相当改善していかないといけないなとは思ってはいますね。

唐澤:今回のPoCで実施されたのは、Metamaskを作ってもらうというより、アプリの中でNFTを見られるようにした感じでしょうか。

沖田:厳密に言うと、ウォレットは持っていただかないと最終的には紐付けられないのでダメなんですが、一旦まずNFTを見る・受け取るまでは、ブラウザベースで行けるようになっています。

村上:それをきっかけに、今まで全く考えてなかった方々でも、いろいろ知ろうとするユーザが増えるわけですよね。そうするとその人のリテラシーも上がって、もしかしたら自分のお気に入りのウォレットを持つようになるかもしれないし、そこでスムーズにオンボーディングできたらいいですし、複数のシナリオを想定しつつ、どういう方向で改善して行くかは、今、結果を踏まえて、振り返られているところですか?

沖田:Nudgeユーザの中でも比較的先進的なユーザじゃないとNFTクラブには入らないので、本当のマスだとは思ってはいないです。それでも元々クリプトをやっていて、ウォレットも当然持っていて、イーサリアムもたくさん持ってます、という人じゃないと今はNFTを買うのはちょっと難しいわけですよ。そういった意味で、裾野を広げるためのきっかけにはなるんじゃないかなと思っています。

唐澤:すごい大事だと思うんです。やはり、今はどうしても(Web3を)アーリーアダプターに閉じたものにしてしまっていると思うんですよね。最近カンファレンスやサミットでいろんな方とお話しても、皆さんどうやってスタートアクションを起こしていくのかはすごいホットトピックだと思います。web2.5とか。

なので、沖田さんが課題意識を持って広げようとしていく方向性に関しては、我々も共感するところです。さっき体験をどう設計するかという話がありましたが、いきなりウォレットでというのではなく、まずはブラウザで見られるようにする。その後で、手に入れるためにウォレット使うと。結構そこでドロップ(続きの手順を諦めて、やめてしまう人がいる)したんですか?

沖田:今回のユーザはどちらかというと分かっている方が多めなので、そこはいけてます。

唐澤:今後ボトルネックになる可能性はあるというところでしょうか。

沖田:そうですね、今段階は本格的なプロモーションは全然行ってないと思うので、本当のスタートアクションのタイミングでは、やっぱりそこはもう一工夫は必要だろうなと思ってますね。

唐澤:沖田さんの中で「Cashless to Earn」という領域をどう捉えていますか?今回は本当にファーストステップのトライアルだと思うんですが、最終的にどういうところに持っていこうとされているのでしょうか?

沖田:「Cashless to Earn」というフレーズは私が名付けたんですが、実はそんなに深い意味は無くて、割と無邪気です。to earnってのは「獲得できる」という意味なので、「キャッシュレスにするだけで、NFTが無料でギブアウェイでリワードとして獲得できますよ」と意味合いがまず大前提です。

ただ、結構言われるのは、「キャッシュレスにすると儲かるんですね」みたいなことなんですよね。別にそこも否定してるわけじゃないんですよ。今回は裾野を広げるために無償提供していますが、ファンが欲しいんだったら有料で販売するのももちろんいいと思います。実証実験だとプライベートチェーンでやるケースが多いんですけど、今回Shidenを使ってますし、ウォレットもShiden対応してればオープンですね。

また、今回はアクセストークンとして使えるようにしてますけど、例えば、加藤ミリヤさんのライブでは、我々も会場にお邪魔してNudgeのクラブをご案内したりもしてたんですが、毎回いらっしゃるファンっていらっしゃるんですよ。全ライブ会場をコンプリートする人っているんですよね。

そういうファンには、全部のライブ会場でNFTを配布して、全会場コンプリートした人は特別な動画が見られるようにするとか、アーティスト側もやりたいわけですよ。ただ、日程の都合とか、どうしても札幌だけ行けなかったとかいう方は、ファン同士で交換するといったこともできます。動画だったら同じ会場で見ることもできるはずなので、そういった新しいファンとアーティスト、アスリート・スポーツチームとの間のエンゲージメントを高めるNFTや、ゴミ拾いしたらNFTがもらえるとか、植樹活動に参加してくれたボランティアの方にNFTを販売するとか、そういった仕組みも取れると非常に面白いなと思っています。

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