エネルギーを熱のまま蓄えられるボイラーで脱炭素化、Blossom Energyが3.5億円をプレシリーズA調達

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開発を進めるクラスタ型高温ガス炉の概念説明図
Image credit: Blossom Energy

エネルギーを熱のまま蓄えられるシステムを開発する Blossom Energy は28日、プレシリーズ A ラウンドで3.5億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、インキュベイトファンド、アニマルスピリッツ、常石商事、ReGACY Innovation Group、グロービス。Blossom Energy の前回ラウンド(シードラウンドと推定される)は明らかになっていないが、今回の調達を受けて、同社は累積調達額は約4.5億円に達したことを明らかにしている。

Blossom Energy は、日本原子力研究開発機構で高速炉・新型炉の研究・開発などに従事していた濱本真平氏により創業。原子力のために開発していた技術を元にしているが、そのままでは用途が限定的なものになってしまう。同社はより多くの産業で広く社会実装してもらえるよう、高温ガス炉を使ったエネルギーを熱のまま蓄え、熱のまま取り出すことができるシステムを開発した。このガス炉はモデルにもよるが、構造上、安全かつ家庭用の物置程度で大きな容積を必要としないため、同社では中小工場などに配置できるモデルを複数開発する予定だ。

世の中では、多くの仕組みを動かすために電力が使われているが、家電の中でも、アイロンやドライヤー、ファンヒーターなどの熱器具の消費電力が大きいことから推測できるように、熱を生み出すのには大量の電力が必要になる。しかし、原子力発電所の多くが停止している現在、発電の多くを担っている火力発電は、簡単に言えば、湯を沸かして蒸気を作るか、ガス熱を使ってタービンを回して発電しているわけで、我々は熱を電力に変え、その電力を再び熱に変えるというエネルギー変換効率上、非効率なことをやっていることになる。

熱を得るために電力が使われるのは、もちろん、家庭よりも工場によるものが多い。濱本氏によれば、発電/消費される電力の実に7割が熱を得るために使われていて、地球温暖化で問題になっている化石燃料の消費を抑制するには、この点を改善する必要があると考えたという。ただ、化石燃料に代わるものとして、太陽光や風力といった再エネ電力が注目されているものの、これらは自然由来なので使えるタイミングが限定的で蓄電する仕組みの併設が必要になる。しかし、充・放電のプロセスもまた、エネルギー変換でロスが生じる。

Blossom Energy が開発を進める高温ガス炉を使えば、熱を熱のまま蓄えておき、熱のまま取り出すことができるため、エネルギーが無駄にならない。理想的な使い方としては、工場などで熱が必要になる工程に対して、予め再エネ電力などで熱を産生し蓄えておき、それを必要なタイミングで熱として取り出す、といったことが考えられるという。電力消費のピークシフトなどにも有効に働くため、世の中全体で、電力インフラを増やさず、化石燃料の消費抑制にも効果が期待できる。

高温ガス炉には、炉心・燃料の構成材に耐熱性の高い黒鉛が使われるが、黒鉛は希少金属ではないし安定した元素であるため、調達がしやすく環境問題を引き起こすリスクも低い。また、電力を蓄えるバッテリーは、充・放電の繰り返しや経年で性能が劣化するため数年から10年程度で交換が必要になるが、高温ガス炉を使った蓄熱式ボイラーでは、電力の場合ほど性能劣化が顕著にならないという。同社では工場のほか、ボイラーの並列利用で火力発電所のような使い方もできるとして、技術の普及に期待している。

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