不動産オーナー・管理会社向けサービスのヤモリ、10億円をシリーズA調達——三菱UFJ信託と空き家賃貸ファンド組成へ

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Image credit: Yamori

「大家のヤモリ」「管理会社のヤモリ」など不動産賃貸管理の業務効率化 SaaS を開発・提供するヤモリは28日、シリーズ A ラウンドで10億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、DNX Ventures、三菱 UFJ 信託銀行、アメリカのプロップテック向けファンド Metaprop。

これはヤモリにとって、2021年6月に実施した5,000万円の調達(ラウンドは不明)に続くものだ。DNX Ventures は前回ラウンドに続くフォローオンでの参加。同社では調達した資金を使い、また、三菱 UFJ 信託銀行と協業し、日本で初めてとなる空き家賃貸ファンドの組成を目指す。

ヤモリは2019年11月、三菱商事でインフラ都市開発の新規事業立ち上げの後、需要に合わせてフレキシブルなオフィス環境を実現する Knotel の日本代表を務めていた藤澤正太郎氏(現代表取締役)、三菱商事でAI・DX 推進に従事し、個人でかねてより不動産事業に取り組んできた廣瀬涼哉氏(現取締役)により創業(ちなみに、Knotel は DNX Ventures の「SPROUND」の設計に参加)。

これまで東京大学 FoundX や 東大 IPC 1st Round に採択され、クラウド・AIを活用して不動産賃貸事業の学習から、購入、管理、売却まで、不動産オーナーの経営を支援するサービスを提供してきた。2020年のローンチ以降、2024年2月現在で登録資産規模1,000億円、利用者は5,000人、不動産投資・教育サービスの有料会員1,600人以上に達している。

ヤモリでは今後、地方や郊外を中心に自社での不動産物件取得を進める。ヤモリがこのファンドを通じて目指すのは、空家物件の小口化と流動化、いわば、都市部のビルなどに適用の多い REIT(不動産投資信託)の地方空き家版だ。今後2年で150から200物件、さらに、ファンドを組成して資金を集めることで、今後5年で7,500物件の取得を目指す。

空き家などの中古不動産物件は、リフォームするなど手を加えた上で、最適な市場に流通させることができれば、賃貸収入を得られる可能性がある。不動産の利回りは、取得額、リフォーム費用、固定資産税などの支出に対し、年あたり賃貸収入をいくら得られるかで計算するが、藤澤氏によれば、空き家では2桁パーセント台を稼ぎ出す物件もあるそうで、他の金融商品と比べても期待の持てる投資と言えるだろう。

ヤモリはこれまでのサービスを通じて形成してきた不動産オーナーのコミュニティなども活用しながら、物件の取得などを行う。不動産投資・教育サービスの会員が購入してリフォームした物件をヤモリで買取り運用管理できるようになるため、会員は投資回収に要する期間を短縮できるなどのメリットも得られるようになる。

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