CESで披露されたAIポケットアシスタント「Rabbit R1」、3月末までの発売を前に事前予約が2万台を突破

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Image credit: Rabbit

今年の CES では、2つのハードウェア製品が立て続けに登場した。

一つはスタートアップ企業の Humane が開発した「AI Pin」で、スマートフォンよりも軽量ながら生成 AI機 能を搭載し、ユーザが必要とする情報を直接手に投影するもので、「スマートフォンに代わる画期的な製品」と評されている。

また、これに匹敵する AI ポケットアシスタント「Rabbit R1」は、ブースも宣伝もせずデモを行っただけだったが、主要メディアがこぞって報道した。

2.8インチの小型画面、軽量設計、音声操作で携帯電話の全機能を実行できるなど、まさにAI Pinのような存在だが、なぜ OpenAI と Kakao から3,000万米ドルの出資を受け、AI Pin の競合と呼ばれるようになったのだろうか。

ChatGPT より強力、LAM の学習と複製

Rabbit の創業者で CEO の Jesse Lyu(呂騁)氏は、次のように語った。

R1のゴールはできるだけ UI フリーであることだ。現在のスマートフォンは、タクシーを呼ぶにも、フードデリバリを頼むにも、アプリをタップする必要があり、直感的で効率的とは言い難い。

テック大手の Apple、Microsoft、Amazon は10年前に AI アシスタントを発売したが、それらの性能は AI が理解できる簡単な要件に限られていた。

現在では、AI Pin や Rabbit R1のような AI デバイスは、AI がより高度な要求に応え、より直感的に操作できるように設計されており、ユーザは、タクシーを呼んだり、株式市場の動向を尋ねたり、フードで威張りを頼んだり、チャットボットのように何でも尋ねることができ、声で質問を上げるだけで、AI が自動的に作業を行ってくれる。

この種の AI デバイスの最大の競争ポイントは、自動判定の速さであり、これは Rabbit R1 の最大の競合優位性でもある。

ユーザに Rabbit R1をトレーニングさせ、より多くの機能を開発させることは、実際にユーザに自分の AI スマートフォンを作らせることだ。(Lyu 氏)

Lyu 氏によると、従来はスマートフォンの機能は出荷前に固定されていたが、Rabbit は LAM(Large Action Model=大規模行動モデル)と呼ばれる AI モデル群を開発し、AI が「観察と複製」を通じて機能を開発できるようにしたため、Rabbit R1はテキスト、画像、音声など、より豊富で多様な学習データと情報を持つことができ、機能も制限されないという。最終的な目標は、ユーザが自分で操作することなくコマンドを完了できるようにすることだ。

例えば、Rabbit R1にコマンドを与えるには、本体側面の「Push-to-talk」ボタンを押し、トランシーバーを使うように Rabbit R1に話しかけるだけだ。
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例えば、Rabbit R1にコマンドを与えるには、本体側面の「Push-to-talk」ボタンを押し、トランシーバーを使うように Rabbit R1に話しかけるだけだ。Nvidia の今日の株価を尋ねたり、来月の航空券を予約したり、旅行の日程を調整したりできる。フードデリバリを注文したり、音楽を聴いたりしたい場合は、初回のみ、他のデバイスで Spotify や Uber のアプリにログインし、Rabbit の自社開発 OS システムで認証する必要があるが、この一連の操作を Rabbit R1が記憶がするため、以降は、ユーザが音声でコマンドを与えるだけで、 AI が勝手にすべてのプロセスを完了させてくれるようになる。

かつては Baidu(百度)に気に入られたベテラン起業家が再挑戦

AI を既存のスマートフォンに導入するのではなく、なぜハードウェア事業を始めるのか? これらすべてを生み出した中国人起業家、Lyu 氏は、その理由を次のように語った。

Apple や Google などの大企業と協業すると、結局、彼らのシステムやニーズに合わせてソフトウェアを設計し、最終的にはその一部になってしまう。

彼が「本当に自分だけのもの」を作るという彼のこだわりは、これまでの仕事の経験に関係している。

CEO の Jesse Lyu(呂騁)氏は、Rabbit を創業する前に複数の起業経験を持つ。それが彼に「本当に自分らしいソフトウェア」を作ることにこだわらせた。
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2014年、彼は中国初のスマートハードウェア設計会社 Raven を設立し、Y Combinator に採択されただけでなく、Baidu(百度)に買収され、Lu 氏は Baidu のスマートホームハードウェア担当ジェネラルマネージャーに招聘され、その2年後、彼と彼のチームは AI スマートオーディオシステム「Raven H」を開発した。

Raven H は Apple の Siri のような AI アシスタントだが、Raven H は市場でうまく機能せず、Lyu 氏は Baidu を離れ、アメリカで起業することを決意した。彼は昨年(2023年)、Rabbit の前身となる Cyber Manufacture Co.(ラビット前身)を設立し、可能な限りシンプルな AI デバイスを作ることをビジョンにを掲げ、製品を AI に集中することにした。

今後の課題は、AI 市場における大手企業との競合

昨年設立された Rabbit R1は、OpenAI や Kakao などから3,000万米ドルを調達した。現在、製品の価格は199米ドルで、CESで発表されて以来、約2万台の予約注文を受けており、今年3月末までに出荷を開始する予定だと Lyu 氏は述べた。

Rabbit R1の前途は有望で、企業の投資も受けているが、他の大手企業との競争から Rabbit が直面する課題を無視することはできない。先に発売された AI Pin も、今年発売された Samsung の AI スマートフォン「Galaxy S24」も、より簡単な自動検索やリアルタイムの翻訳など、AI 機能の追加に力を入れており、Apple、Google、Microsoft などは、スマートフォンシステムに AI ツールを組み込む方法を検討し続けている。

AI Pin と Samsung の AI スマートフォン「Galaxy S24」は、どちらも Rabbit が市場で直面する課題である。
Image credit: Samsung

一方、Rabbit R1が開発した LAM という AI モデリング技術は、さまざまなデータを処理・学習することができ、今後の普及が期待されるものの、まだ実験的な技術とされており、その地位は安定していない。確かなことは、AI スマートフォンの時代がやってくるということ、あるいは将来、このデバイスはもはやスマートフォンとは呼ばれず、最も親密な AI アシスタントと呼ばれるようになるかもしれないということだ。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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