リサイクルに経済合理性を/テラサイクルジャパン エリック・カワバタ氏 × ACV芦田ゆきの・酒寄稚夏【ACVポッドキャスト】

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を取り合い、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト・シリーズです。旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

テラサイクルは2001年に、当時プリンストン大学の学生だったTom Szaky(トム・ザッキー)氏が創業しました。「捨てるという概念をなくす」をミッションを掲げ、現在では世界20〜21カ国で事業展開しています。一般的に、ごみの問題は、組織や企業の自助的努力により解決しようという動きが多い中で、テラサイクルは課題解決をビジネスとして運営できているのが非常に興味深い点です。

テラサイクルの日本法人であるテラサイクルジャパンが設立されたのは2013年のこと。2021年には、循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」が日本での事業を開始しました。現在、テラサイクルジャパンで代表を務めるエリック・カワバタさんは、2014年にジェネラルマネジャーとして国内事業を開始し、2016年にテラサイクルのアジア太平洋の統括責任者に就任しました。

国連で2015年にSDGs(持続可能な開発目標)が発表されたのを機に、サーキュラーエコノミーを促す企業にも注目が集まるようになりました。ポッドキャストではアクセンチュアの芦田ゆきの・酒寄稚夏が、テラサイクルが目指すビジネスの方向性などについて、エリック・カワバタさんに話をお伺いしました。ポッドキャストから一部をテキストにしてお送りします。

【ポッドキャストリンク】

テラサイクルとの出会い

カワバタさんについて、そして、テラサイクルやLoopの取り組みについてご紹介ください。

カワバタ:私は元々法学者で、その後、弁護士の仕事をし、長く投資銀行業界に勤めていました。その中で商品開発とか市場開発の仕事をやりながら、CO₂の排出権のマーケットの立ち上げに関わりました。グリーンボンドの引受や発行の仕事もしていましたが、そのときには誰もそういったビジネスに関しては興味ありませんでした。2004〜2006年あたりですね。

そのころ、友人が同じく環境に関心があり、環境コンサルティングの会社を作ったんです。(中略)私がそれで、ボランティアで少しお手伝いさせていただきました。いろいろな企業に、どのようにCO₂のフットプリントを減らせるかをコンサルティングしたり、LCA(ライフサイクルアセスメント)を測ったり、削減したCO₂を登録して排出権発行したり、そういう仕事をやりました。

友人とはまた、温暖化で日本の海水温がすごい高くなっていて、沖縄でサンゴ礁が死んでいるという事実を発見して調べ始め、Ocean Green AssociationというNPO法人を設立しました。海のCO₂吸収力が減ったとか、温暖化のせいでどのように環境に影響を与えるかとか、そういったことを研究しました。

そんなことをしていく中で、2013年にテラサイクルに初めて出会いました。私、ソーシャルメディアを全然使わないので、たまたま妹からソーシャルメディアで環境問題とかいろいろ調べて情報が得られると聞いて、テラサイクルを発見しました。それで問い合わせしました。すると問い合わせしてから2時間後に電話がかかってきたんです。

「もしもし、テラサイクルのCEOです」と言われて、妹が私の履歴プロフィールをソーシャルメディアに載せていたのです。「興味があって、自分たちは北米と欧州で回収リサイクルプラットフォームの展開をやっていて、アジアの方でもスタートしたいんだけど、何か一緒にできない?」と言われました。

(CEOには)会社のバックグラウンドとかテーマとかミッションとか説明していただきました。まずconsumerism(消費主義)の問題で使い捨てのものが多い。(今では話題に上る)廃プラのいろんな問題は、2013年にはそこまで盛り上がっていなかったんです。ですが、実際には大きな問題となっていると。

そんな話を聞いて「日本もリサイクルをもっと増やした方がいい」というふうに言われたんですが、正直なところ、疑問がありました。電話を切ってから、少しネットで検索したら、日本のリサイクル率はとても高いんですね。だからこの会社は良い会社だと思うけど、日本では必要ないなと思いました。

日本の「リサイクル」定義の罠

Image credit: TerraCycle

日本(のリサイクル率)は80%ですよね。

カワバタ:環境省とかいろんなホームページを見て、日本のリサイクル率は7〜8割だと思っていました。翌日にテラサイクルのCEOらとビデオ会議の約束をしたので参加して、最初に、「多分あなたたちは日本では必要ないですね、別の市場の方が良いのではないでしょうか」と言ったら、「いやそう思っていると思うんですけど、まず日本国内のリサイクルの定義を調べた方がいいですよ」と言われたんです。

それで調べたらびっくりしました。行政に問い合わせをしたり、最終処理場とかいろんなところに調べに行ったり、市役所や環境省にも連絡しまして、正直1ヶ月ぐらい時間がかかりました。なかなか事実が出てこなくて。最終的にはサーマルリサイクルという方法が4〜5割ぐらいリサイクルの中の定義に含まれていると聞いて、そのサーマルリサイクルって何だろうと思いました。

それで、最終処理場に、ご友人と見学に行かれたんですね?

カワバタ:ダンプトラックから灰を下ろして、海を埋め立てているのを見ました。その灰はどこから来るのかと聞くと焼却場から来ると。850度以上でモノを焼却するとダイオキシンを減らすことができ、そうすると熱がたくさん生まれるので熱回収をすれば発電に繋がる。あるいは、焼却場の隣の温泉プールが温まる。それがサーマルリサイクルですと言われました。

「え、それって燃料じゃないか」と思いました。「燃料として廃プラを使ってるんじゃないの」って言ったら、「そういうふうにも言えます」と言われました。その体験を持ち帰って「これリサイクルじゃないですよね」と行政と相談しました。確かに、それはリサイクルの定義に入らない国もあります。

海外ではリサイクルとして認められてないんですね。

カワバタ:認められてないんですよ。焼却すると「Waste to Energy」と呼んでいるんですね。つまり、燃料なんです。そこで、テラサイクルに「分かりました。やはりマテリアルリサイクルが必要なので、日本でビジネスをやる意味があります」と答えたんです。

ちなみに日本だと、マテリアルリサイクルっていうのは現状どれくらいなんですか。

カワバタ:正直はっきりわからないんですよね。大体、20〜25%と言われるところもあるんですけど。ただまだ日本は特に一般廃棄物から出る廃プラをかなり輸出するところもありますので、その輸出分もリサイクル率の中にカウントされています。

日本の人々は元々、リサイクル意識も高くて、消費者からすると「リサイクルになる」と思って、一生懸命、ごみの分別をよくやっていますよね。でも、それが結局ほとんど燃やされてしまっている。CO₂を出してしまっているし、マテリアルリサイクルされていないことが、日本で事業をやっていくべき意義があると思われたきっかけだったんですね。

カワバタ:そうです。テラサイクルを日本でやろうと考えた時、日本人は本当にリサイクルに関心を持ってくれるかどうか悩んだこともあるんですが、日本には元々「もったいない精神」があります。江戸時代はすごく大変な時期だったんですが、かなり資源循環に必死だったんですね。島国で元々資源はそんなになく、必要性があるからそういう生活をしていました。だから問題意識が高まれば、行動は変わるんではないかと期待しています。

テラサイクルの3つの事業

Image credit: TerraCycle

テラサイクルは、大きく分けて3つの事業を展開されています。一つ目が小売事業者やブランドと取り組まれている無料のリサイクルプログラム。二つ目が海洋プラスチックを集め、それを原料としてコラボ製品を作っていくものそれぞれについて、詳しく伺えますか?

カワバタ:テラサイクルが日本で業務開始したのは2014年です。経済合理性がないからリサイクルされないものは多いんですが、お金と時間さえかければ、本当にいろんなものがリサイクルできるんです。回収リサイクルを始めると、最初は安定せず、すぐにはスケールメリットが出ないんですが、回収量を継続的に増やし、加工量も安定すれば合理性が高まるんです。

それを初めて実施する、経済合理性が実現できるまで弊社がリードすることが大きな仕事です。ブランド、消費財、食料品、日用品の会社に頼んで、自社商品の使い済み容器をリサイクル可能にしましょうと提案しています。SDGs12番のテーマ(つくる責任 つかう責任)で話しかけ、日本でもブランドスポンサーはたくさん見つけました。吸い殻のリサイクルも実施しました。

海の近くに住んでいるのですが、海のごみには吸い殻も多いですよね。

カワバタ:おっしゃる通り、海の漂着ごみは吸い殻が一番多いんです。他には、日本ロレアルさんにスポンサーしていただいて、化粧品の容器回収リサイクル、ライオンさんにスポンサーしていただいて、歯ブラシを学校等で回収しリサイクル原料を作って植木鉢を作ったり、キールズのスキンケア容器からスキンケアに使う製品を作ったりしています。

そういうものを店舗や学校等と一緒に回収してリサイクルするものづくりが2014年から始まったんですね。これを継続して1年目は2社、翌年は5社、今はもう数十社にまで成長しました。最近は、例えば日本で、イオンさんにある化粧品の売り場「Glam Beautique(グラムビューティーク)で日本ロレアル・コーセー・資生堂・P&Gジャパンで4社一緒に回収リサイクルしています。

競合が集まって一緒にやっているのですね。

カワバタ:もちろん話はそんな簡単じゃなかったんですけれど、各社をまとめるのは。2022年から日本チェーンドラッグストア協会と一緒に、マツモトキヨシ・ウエルシア・トモズ・P&Gジャパン・ユニリーバ・花王・ライオンの7社と共に、横浜市内のドラッグストアで日用品の空き容器の回収リサイクルを行っています。昔は1社1社でしたが、最近、複数社で一緒にやっているケースもあるんです。ロフト全店舗で容器回収を行う「ロフト グリーンプロジェクト」では、当初は化粧品メーカー各社の28ブランドが参加しましたが、今では35ブランドに増えました。今後ももっと一緒に回収したいと思っています。

回収したものを違う製品に作り変えていく話を伺いましたが、テラサイクルはその原料になるリサイクルすべきものの回収を提供されているのでしょうか。それとも製品開発まで企業とコラボレーションされているのでしょうか。

カワバタ:社内にデザインチームや研究開発の部署もあります。だから、この素材でどんなものを作れて、どんなデザインで、何がアピールできるかとか、そういうことも検討しています。オリンピックの表彰台プロジェクトでは、P&Gジャパンにスポンサーしていただき、全国のイオンで空き容器を回収して表彰台を作るプロジェクトを提案し、当社はその事務局を務めました。

End to Endをメインでやっているんですが、リサイクル原料からモノを作る仕事もやっています。恥ずかしながら海洋プラスチックの問題に2016年に初めて気づきました。弊社がグローバルで海洋プラスチックに関して何かできることはあるか考えました。そこで海岸のクリーンアップをするNPO法人と協力し、回収物からリサイクルできるものをピックアップし、それを加工した原料で商品の容器を作りました。

プロジェクトのおかげで、みんなの意識が海洋プラスチック問題にも広がりました。

日本でもこの活動を広げていきたいと思いNPO法人に連絡したところ、「長崎県と対馬市に問い合わせしてください」と言われまして、話を聞いたらびっくりしました。弊社のスタッフ2人が対馬と五島福江、長崎県の島に見学しに行ってみたら、海岸がものすごい量の海洋プラスチックで埋もれていることを発見しました。

(中略)リサイクル原料を作ってから、いろいろな会社に問い合わせをして販売を頑張りまして、2018年にP&Gジャパンさんのジョイの台所用洗剤ボトルを、作りましょうということになりました。2019年秋に、日本ではこれがリサイクル原料を使った商品として初お目見えとなりました。

その後にも、いろんな会社で容器の原料のために提案したんですけど、海洋プラスチックの回収作業は結構高いので、それを商品の代金で回収できない。そこで、ちょっと考え方を変えて、容器ではなく商品の特徴やデザイン性で数を増やせれば、海洋プラスチックの回収コストを回収できるかなと思い、買い物カゴを作ることをコーセーさんに提案しました。

リサイクルスポンサーをコーセーさんにお願いして、買い物かごを海洋プラスチックから作って、イオンさんの店舗内で使用されている普通の買い物かごと入れ替えました。雪肌精のロゴを全部の海洋プラスチックのかごに印刷しました。イオンさんは親切にも「イオンの名前を書かなくてもいいよ、ブランドさんのロゴをつけてもらっていいよ」と言ってくれました。

さらに、パイロットさんに海洋プラスチック使ってボールペン作らないかと提案したら、関心を持っていただいて、もう多分200万本ぐらい売れています。継続的に海洋プラスチックを買っていただいて製造しています。継続的にそれがクリーンアップに繋がることになりますし、

商品のクリエイティビティとかアイデアでバリューを足して、コストをカバーできています。

継続的にクリーンアップに繋がる海洋プラスチックのバリューチェーンを、日本で初めて実現できました。それが2番目の柱のビジネスですね。

“SEKKISEI 買い物かご”をイオンスタイル上尾で使用開始 海洋プラスチックごみをリサイクルした再生樹脂を使用(テラサイクル・プレスリリースより)

Loopの事業

3本目の柱であるLoopの事業についても教えてください。

カワバタ:(Loopの事業は)元々、廃棄物削減することとか、廃棄物を考え直すこととかから来ています。一回限りで使い捨てするのものをリサイクルしても、リサイクルで全ての廃棄物の問題は解決できない。リサイクルだとダウンサイクル、つまり、1回溶かすと、構造的に質が落ちるという事実があって、全部の空き容器を回収しても100%リカバリーはできないんです。

使い捨てのものに対する解決策は、リサイクルは一つなんですけれど、やっぱり使い捨ての考え方をやめること。それでLoopのビジネスを始めたんですね。Loopでは元々使い捨ての容器で販売してるものを再利用できる耐久性がある容器に切り替えて販売するようなシステムとなっています。

Loopは、容器に関しての耐久性や洗浄性のテスト、使われている材料をリサイクルする時にリカバリー率が高いというテストやガイドラインを提供しています。また、今イオンの100店舗では、Loopのリユース容器に入って売られている商品があります。売り場の中にも返却箱を置いてあります。

ユーザーは、商品を買うときに商品の価格と容器代を払います。持って帰って使った後にまた買う時には、容器をお店に持ち込んでQRコードのステッカーを使ってアプリで登録すると、誰が返したかを確認できますので、アプリ内で容器代を返金するんですね。

良く使われる「循環経済」という言葉がありますが、循環経済はデザインから始まったんです。循環できるシステムは最初からデザインされている。うちの容器はほとんど、リサイクル前提で設計されています。再利用する前提でボトルのデザインを考えることで、廃棄物を完全に無くすことができるのではないかという議論のもと、Loopのシステムの展開を頑張っています。

デザインをする上で何が大事になってくるのでしょうか。例えば耐久性を意識していくということでしょうか。

カワバタ:すごい大事な質問ですね。昔、ガラス瓶で(届けてくれる)牛乳配達がありました。牛乳会社が回収して洗浄するので、その容器は牛乳会社の資産だったんです。自分の会社の資産だと長く使いたいから耐久性がある必要があって、長く使うとコストダウンに繋がる。

一方、使い捨てのものは中身と容器を販売するから、会社の資産じゃなくてコストになるから軽く安く作る。リユースになると、基準として最低10回以上使えるような耐久性を必要とします。

企業はパッケージに対して自社の規格があります。それを違う規格のものを作って、Loop のプラットフォームに参画するのはコストがかかって難しいのかと思っていましたが、容器を使い回せることでコストを結果的に下げることに繋がるのが、企業にとって参画するモチベーションになっていますか。

カワバタ:おっしゃる通りです。やっぱり耐久性があるけれども、高いんですね。でも例えば5倍高くなっても、10回使えますと、減価償却の販売コストが下がります。

Loopの事業は、BtoBでも展開されていると伺いました。

「Loop Professional for ASKUL」で提供される商品(リユース容器を使用した業務用商品販売プラットフォーム “Loop Professional for ASKUL” 実証実験を開始・アスクルプレスリリースより

カワバタ:そうですね。海外のニュースを読んでいますと、いろんな新しい規制とか法律ガイドラインなどが施行されて、ホテルとかファーストフードのレストランから、使い捨てのものを無くす必要が出てきています。それを見て、日本でも同じようなことになるかなと思いました。

例えばホテルだったら、200部屋あって、毎日何人かがそこに泊まって、ペットボトルの水とか、いろんな使い捨てのものを使っています。あるいはクリーン剤とかハンドサニタイザーとか、いろいろあるじゃないですか。それで思いついたのは、1ヶ所で相当いろんな使い捨てのものを大量に使っているところにまとめて提供すると、より効率良くできると思いました。

東京都庁にもこのB2Bモデルがどうかを提案したら良い反応をいただき、助成金をいただいて、実際にB2Bのフィージビリティスタディは東京都内で、数社と行いました。

昨年発表したのですが、Loop ProfessionalのB2Bシステムでは、アスクルさんが販売卸パートナーになっています。また、クリーニング剤のブランドパートナーが横浜のシーバイエスさんです。B2Bの商品は配達になるので、届けたときに同時に空き容器を回収して、まとめてその後洗浄に回すので、すごく効率がいいですね。1箇所でたくさん回収して、経済合理性も増えるし、経済合理性と環境は密接に繋がっているので。

アスクルとの連携では、Loopと一緒に作られた業務用石鹸や除菌剤を、アスクルがお客様にお届けして、空いた容器をLoopが持ち帰るというようなものですか。

カワバタ:アスクルの場合はアスクルの自分のロジスティクスのトラックがありますので、アスクルの方で届けて回収していただいて、まとめたものを弊社の倉庫に送っていただくことになっています。

イオンの場合は、イオンの店舗内である程度まとめて、ロジの会社がまとめたものを弊社の倉庫に送っていただくという流れですね。まだ(Loopが)自分のトラックを持つほどのスケールじゃないですよ。

(リユース容器を使用した業務用商品販売プラットフォーム “Loop Professional for ASKUL” 実証実験を開始・アスクルプレスリリースより

資源循環には法律が必要

テラサイクルが目指されている、資源循環が当たり前になる世界は、どういった世界観なのでしょうか。そこへ向けて、今後、中長期的にやっていきたいことはどんなことですか。

カワバタ:実現するためには、やっぱり新しい法律が必要だと思います。なぜかと言うと、会社は利益のために頑張らなきゃいけないので、製造コストを考えた上で製造してるんですね。製造コストの中には環境負担のコストがあり、海外では、Extended Producer Responsibility(EPR)というシステムがありますが、日本にはまだそこまでのものはありません。

環境コストも製造コストの中に含まれないとデザインは変えられません。廃棄物を減らすためには、商品のデザインがEnd of Lifeになった後にどうなるかを考える必要があり、リサイクルしやすいように設計する、あるいは再利用するために設計するとかが必要ですが、デザインや製造を変えていくのは簡単なことじゃないんですよね。かなりお金がかかるんですよ。

消費者が「これじゃないと買いません」と言い出したら、製造業者も応えることができます。ただ、日本はまだそこまで意識が高まってないんです。ただ前よりは結構変わりました。消費者調査では「少し商品価格は高くなっても、容器が環境フレンドリーなものにお金を出しますか」という問いに、肯定的な回答は2021年には30%以下でしたが、2022年には約7割でした。

コロナウイルスのせいでリモートワークが増えました。そこで廃棄物が全部お家の中に溜まるようになって、梱包材や宅配食事のトレイとか、いっぱいごみが家の中で増えたので、皆さん気づいたんですよ、それでみんなが少しごみ問題に関して意識するようになったんですね。

ただ、意識してるんだけども、価格柔軟性があるかというとまだです。エコな商品はもっと高いから。価格柔軟性も必要だけど、そこまで高まってきてないので、会社は今応える必要はない。ヨーロッパでは消費者がすごく大きな声を出しています。それに対して(企業は)応えている。行政は、結構厳しい法律を新しく作っています。

ヨーロッパの消費者の声はすごく大きく、危機感を抱いているように思えるんですが、日本との意識の差は、どこから生まれてくるのでしょうか。

カワバタ:文化的なこともあるというふうに言われていますが、そうでもないと私は思っています。さっき言った通り、私も自分で家の中で分別するから、全部リサイクルされてると思い込んでいました。皆、ごみ問題は意識してないと思うんですよ。日本はすごくキレイじゃないですか。

日本のプラごみ発生量は世界2位

自分ごとの問題としてなかなか気づきづらいんですね。分別は日常的にやっているし、目に触れる範囲の町並みはすごく綺麗で、そんなにごみもたくさん落ちてないから、(日本は)「環境に優しい国」という意識を消費者が持ちやすいんですね。

カワバタ:その通りです。問題意識が低い。一人あたりで一番多く廃プラスチックを出しているのは、アメリカです。びっくりなのは日本が2番。毎年900万tぐらい。皆、それに気づいたら多分(考えが)変わります。皆変わるのは大変だと思っていますが、でもできますね。

コロナウイルスのことでみんなリモートワークできましたね。10年前に考えられないことでした。買い物するときのビニール袋もほとんどなくなってますね。マイバッグやエコバッグを使っている人がすごく多いですね。この数年間で結構幅広く変わったので、行動は変えられると思うんです。価格柔軟性が必要になるのとは、話はちょっと変わるんですが。

参考:UNEP「Single-Use Plastics: A Roadmap for Sustainability」より

今後、テラサイクルの日本での活動としては、政府に積極的にコミュニケーションをとっていくとかそういったところも考えられているのでしょうか?

カワバタ:継続的にやっています。日本政府は本当に真剣に悩んでいて、一生懸命やっています。法律を変えることも大変なことになるので。私は昔、法律と経済の学者でしたけれども、(法律が)厳し過ぎると会社が潰れてしまうので、バランスは必要ですね。だからすごく難しい。ある程度、民間企業が自発的にやってほしいところもありますね。

できる限り三方良し——消費者・小売店・製造業者みんなwin-win-win——を実現する仕組みづくりを、民間企業でもボランティアでもやっています。日本政府もいろんな新しい指針や法律に関して、すでにいろいろ動いていますので、同時並行で動けば、この動きを加速できるといいなと思っています。

我々アクセンチュアのようなコンサルティングファームに期待されることがあれば、教えてください。

mymizuウェブサイトより

カワバタ:会社というよりも、社員の1人1人ができることが大きいですね。皆さん、消費者の力を持っていますね。なので、必要ないものを買わないこととか、あるいは物を買うときには長く使う前提で買うとか。

今回話してないけど、ファストファッションも結構ごみ問題が大きいです。だから物を買うときに良く考えて買うことと、あと使い捨てのものを減らすこと。私でも難しいんですよね。難しいけど、例えばペットボトルの飲み物じゃなくて水筒を持つとか。

mymizu」っていうアプリがありまして、無料でいろんなところで自分で水を充填できるオンラインの地図が確認できます。これを使うと、購入するReady to Drinkのものを減らすこともできる。

あと自分の生活の中で、1人ずつ少しずつ頑張っていくというのは皆で大きな意味を与える。買い物をするときは、環境フレンドリーのものに集中すると、環境フレンドリーなものが増えます。もしアクセンチュアがいろんな会社の商品デザインする時には、End of Lifeを考えて頂けると良いですね。

1人1人の消費者がどう行動するといいかというのは、リスナーの皆さんにとっても、Day1から何を始められるかわかりやすく、いいお話を教えていただきました。ありがとうございました。

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