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マネーフォワード、最大30億円規模となるシード向け「HIRAC FUND(ヒラクファンド)」を設立——スタートアップ3社への投資実行も発表

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マネーフォワード(東証:3994)は29日、スタートアップ支援に特化した子会社マネーフォワードベンチャーパートナーズ(MFVP)を設立し、シード向けファンド「HIRAC FUND(ヒラクファンド)」を組成したことを明らかにした。MFVP の代表パートナーには、マネーフォワードの子会社であるスマートキャンプ代表取締役社長の古橋智史氏と、マネーフォワード CFO でマネーフォワードシンカ代表取締役社長…

MFVP のチーム。前列左から:マネーフォワード代表取締役社長 CEO 辻庸介氏、スマートキャンプ代表取締役社長 古橋智史氏、マネーフォワード CFO でマネーフォワードシンカ代表取締役社長の金坂直哉氏。
Image credit: Money Forward

マネーフォワード(東証:3994)は29日、スタートアップ支援に特化した子会社マネーフォワードベンチャーパートナーズ(MFVP)を設立し、シード向けファンド「HIRAC FUND(ヒラクファンド)」を組成したことを明らかにした。MFVP の代表パートナーには、マネーフォワードの子会社であるスマートキャンプ代表取締役社長の古橋智史氏と、マネーフォワード CFO でマネーフォワードシンカ代表取締役社長の金坂直哉氏の2名が就任する。

HIRAC FUND の GP は MFVP で、これまでにファーストクローズで12.3億円を調達済。最終的には30.4億円を目指す。ファンド運用にあたってはジャフコ(東証:8595)が支援する。最終的に20社程度への投資を予定しており、ワンショットのチケットサイズは3,000万円〜1億円程度(ファンドの規定上は最大で3億円)。

マネーフォワードの CVC ではないため投資先はフィンテックに限らず、伝統的産業 × Tech(金融・不動産・物流・人材・旅行・医療など)、IT(ペイメント・コマース・メディアエンタメなど)、新領域(AI ・ロボティクス・SaaS・X-Tech・VR/AR・IoT、5G など)と投資領域は多岐にわたる。

公表されている LP は次の通り。イグジットを果たした起業家やエンジェル投資家が多数含まれることから、ファウンダーズファンドやスカウトファンド的な色合いを持つ可能性がある。

Image credit: Money Forward
  • 浅原大輔氏(HEROZ 取締役 CFO)
  • 有安伸宏氏(起業家・エンジェル投資家)
  • 河野貴輝氏(ティーケーピー 代表取締役社長)
  • 小泉文明氏(メルカリ 取締役 President 会長)
  • 高野秀敏氏(キープレイヤーズ 代表取締役)
  • 竹林史貴氏(LOB 代表取締役社長 CEO)
  • 千葉功太郎氏(DRONE FUND/千葉道場ファンド代表・慶應義塾大学特別招聘教授)
  • 鶴岡裕太氏(BASE 代表取締役 CEO)
  • 仲暁子氏(ウォンテッドリー 代表取締役 CEO)
  • 永見世央氏(ラクスル 取締役 CFO)
  • 林隆弘氏(HEROZ 代表取締役 CEO)
  • 間下直晃氏(ブイキューブ代表取締役社長)
  • 松本恭攝氏(ラクスル 代表取締役社長 CEO)
  • 元榮太一郎氏(弁護士ドットコム 代表取締役会長)
  • 山口功一郎氏 (暁翔キャピタル 代表取締役社長)
  • 山口勝幸氏(Chatwork 取締役副社長 COO)
  • 山本正喜氏(Chatwork 代表取締役 CEO)
  • 吉田浩一郎氏(クラウドワークス 代表取締役社長 CEO)
  • グッドパッチ
  • THE GUILD
  • SHIFT
  • ジャフコ
  • Chatwork
  • ラクスル

なお、HIRAC FUND はすでに投資を実行済。投資先スタートアップは、WRAY(女性向けヘルスケアに特化した D2C ブランド)、ワークサイド(従業員向けオンボーディング支援 SaaS)、TENTIAL(スポーツプラットフォーム × データ × プロダクト事業)の3社。各社への出資額は非開示だが、古橋氏はそれぞれ数千万円程度の規模とした。

MFVP では、マネーフォワードが創業から上場までに培った経験や知見、グループ各社を含む内部リソースを活用し、投資先スタートアップの人材・採用支援や広報戦略などもハンズオン支援する方針。起業家やスタートアップの育成を目的としてコミュニティ醸成にも注力し、その足掛かりとして設立記念イベントを8月7日にオンライン開催する予定だ。

マネーフォワードが人材紹介サービスの開始を発表、会計SaaSの会社が「働き方の最適化」に進出するワケ

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マネーフォワード(東証:3994)は先頃、キャリア支援サービス事業「マネーフォワードキャリア」を開始すると発表した。同社の主軸事業は言うまでもなく会計 SaaS だが、先日の資本政策解剖の記事にも書いたように、かねてからプロダクトの拡充や売上の多角化を狙い、スタートアップを買収したり、子会社を設立したりしてきた。 今回のマネーフォワードキャリアは子会社ではなく、マネーフォワード本体の社内プロジェク…

マネーフォワード(東証:3994)は先頃、キャリア支援サービス事業「マネーフォワードキャリア」を開始すると発表した。同社の主軸事業は言うまでもなく会計 SaaS だが、先日の資本政策解剖の記事にも書いたように、かねてからプロダクトの拡充や売上の多角化を狙い、スタートアップを買収したり、子会社を設立したりしてきた。

今回のマネーフォワードキャリアは子会社ではなく、マネーフォワード本体の社内プロジェクトとして半ばリーン的に立ち上げるという。同社がこれまで進出してきた事業は、企業間ファクタリング(MF KESSAI)にせよ、フィナンシャルアドバイザリー(マネーフォワードシンカ)にせよ、会計 SaaS 事業とのシナジーを想像しやすかったが、なぜ人材事業に進出するのか?

新サービスの責任者を務める、マネフォワードの小川昌之氏に話を聞いた。


小川昌之氏

小川氏はグリーを経て、マネーフォワードには2015年2月に入社。以来、社長室人事部や組織改編後の人事本部人材採用部部長を務めるなど、マネーフォワードの人事や採用の陣頭指揮に当たってきた人物だ。

ミッションである「お金を前へ。人生をもっと前へ。」のうち、「企業経営を前に進める」ための仕組みづくりに注力してきたが、「個人の働き方の最適化」にも焦点を充てていきたいと小川氏は言う。

ここで敢えて「最適化」と言う言葉を使っているのは、転職にありがちな「目先の収入を上げる」ことだけが課題解決の手段ではないと強調したいから。収入を上げることも大事だが、自分らしく働き、活躍できる環境を手に入れられることが大事。

スキルや経験だけでなく、人間関係のマッチングも重要だと考えている。そこでマネーフォワードキャリアでは、一般的な人材紹介の仕組みに加えて、FFS という科学的なアプローチも採用することにした。

小川氏の言う FFS とはモントリオール大学国際ストレス研究所で「ストレスと性格」を研究していた小林恵智博士が提唱した理論で、個人の特性、人間関係で発生する問題やシナジーを客観的に把握し具体的な対策を提示できるというもの。マネーフォワードキャリアでは、FFS 理論の排他的使用権を持つヒューマンロジック研究所と業務提携、サービスで FFS 理論を活用する。

これもまた、先日の資本政策解剖の記事にも書いたように、マネーフォワード CFO の金坂直哉氏もまた、買収先や新たに迎える IPO 支援人材についても、表面的なスキルよりもカルチャーフィットや信頼関係の確立が重要であると説明していた。どんな仕事をするかよりも、誰と仕事するか、どんな環境で仕事できるかは、転職の成否を大きく左右する。

一方、あまたある人材紹介サービスの中で、新規参入のマネーフォワードキャリアを利用することは、優秀な人材を渇望する企業にとってどのようなメリットがあるのだろう? マネフォワードキャリアは「DX 人材に特化する」というキーワードを打ち出している。これにはマネーフォワード自体が企業の DX を促進するサービスであるため、これまでにも多くの顧客から相談を受けてきたことが背景にあるという。

マネーフォワードのクライアントからは以前から課題を聞いてきた。そこから得た答の一つが、企業が DX を成功させる上で人材が大きな課題であるということ。こういった課題を聞いてきたので(人材紹介は)新規参入の市場ではあるが、大きなハードルになるとは考えていない。

マネーフォワードでも人材採用は行っているが、そこから得られたノウハウを存分に使って企業が欲しがる人材を紹介していきたい。求職者にとって良い選択になることが一番いいと思っている。(小川氏)

一言で DX を進めると言っても、一定の予算を取って専門部署を立ち上げ CDO(Chief Digital Officer)のようなポジションを設ける大企業もあれば、SaaS の現場浸透がままならない中小企業もある。小川氏によれば、マネーフォワードキャリアでは今のところ、紹介する人材のレイヤーや対象とする事業者規模などは絞り込んでおらず、今後、PMF(プロダクトマーケットフィット)を図っていきたい考えだ。

人材関連に限らず、企業の DX をさまざまな形で支援しようとする動きが各社で活発化しつつある。イグニション・ポイントは先月、経営人材の供給を通じた企業のオープンイノベーションを加速する事業の開始を発表。また、人材大手のエン・ジャパン(東証:4849)は今週、スタートアップへの投資を通じて、顧客15万社への DX を加速する事業を開始すると発表した

【IPOスタートアップの資本政策解剖】マネーフォワード編〜第2回「Smartround Academia」から

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前回のビザスクに続き、今回、資本政策を解剖するのはマネーフォワード(東証:3994)だ。2012年5月に創業し、2017年9月に東証マザーズに上場。当時、今ほどメジャーではなかった SaaS スタートアップの IPO としては先駆け的存在である。今回、マネーフォワードの資本政策を披露してくれるのは、同社を IPO へと導いた当時の CFO 金坂直哉氏である。 金坂氏は東京大学経済学部を卒業後、ゴー…


前回のビザスクに続き、今回、資本政策を解剖するのはマネーフォワード(東証:3994)だ。2012年5月に創業し、2017年9月に東証マザーズに上場。当時、今ほどメジャーではなかった SaaS スタートアップの IPO としては先駆け的存在である。今回、マネーフォワードの資本政策を披露してくれるのは、同社を IPO へと導いた当時の CFO 金坂直哉氏である。

金坂氏は東京大学経済学部を卒業後、ゴールドマン・サックスの東京オフィスとサンフランシスコを経て、2014年にマネーフォワードに参画。同社が個人向けの家計簿アプリから、事業者向けの会計サービスへと進化を始めた直後のことだ。昨年までマネーフォワードの CFO を務めていた金坂氏だが、IPO 経験を生かし昨年設立された成長企業向けのフィナンシャルアドバイザリーを提供するマネーフォワードシンカの代表に就任。7月1日付けで、金坂氏が再びマネーフォワードの CFO に復帰就任したことが発表されている

なお、マネフォワードシンカは新型コロナウイルス感染拡大を受けて、今年3月に VC とスタートアップのオンライン面談マッチングを支援する活動を実施したほか(すでに終了)、5月には投資家向けに保有する未上場スタートアップ株式の売却先を紹介する株式売却アドバイザリーサービスを開始している。

今回の聞き手も、スマートラウンド COO 冨田阿里氏が務めた。

<これまでのマネーフォワード関連記事(一部)>

<上場前(2012年5月〜2017年9月)>

マネーフォワードは2017年9月に上場を果たしたが、上場前段階で44億円、上場後も市場以外で143億円を調達するなど、事業成長に成長資金を常に調達し続けている。最初の資金調達となったのは、創業から7ヶ月後の2012年12月。代表取締役の辻庸介氏の古巣マネックス証券のベンチャー投資部門からだった(当時のマネックス・ビジネス・インキュベーション、現在のマネックスベンチャーズ)。マネーフォワードにとって初めての外部資金調達(2,000万円)だったが、同社ではこれをシリーズ A ラウンドと位置付けている。

シリーズ B〜C ラウンド位までは VC 調達が多いが、シリーズ C〜D ラウンドあたりからは地方銀行や事業会社からの調達が増えている。マネーフォワードは、B 向けの販売チャネルとして地方銀行や会計事務所などとの協業を行っており、事業ステージの進捗とともにベンチャー資金よりは事業パートナーからの資金注入が増えていることがわかる。ちなみに金坂氏がマネーフォワードに参画したのも、同社が シリーズ C を始める2014年のことである。

スタートアップ経営者にとって資金調達のリードを掴むことは重要ミッションの一つであり、この日の視聴者からは金坂氏に対し、自社に合った VC や投資家にたどり着く方法、投資家とのリレーションに対して質問が多くなされた。質問の順序は前後するが、金坂氏の説明を要約すると概ね次の通りだ。

  • アーリーステージにおいて特に重要なのは資本政策。後戻りできず、投資家とのやりとりで飲んだ条件や契約が、結果的に上場で足を引っ張ることが起こりうるのがエクイティファイナンスの怖さだ。バリューエションも、ダイリューションも、上げ過ぎても下げ過ぎても良くない。多面的な角度から考えることでリスクを下げるべきだと思う。
  • 投資家との契約にあたっては自社にあったアドバイザーと相談し、二社以上の投資家と話すことで、投資家との契約における交渉力を維持すべきだと思う。
  • エクイティファイナンスにかけた時間は、2014年の時で半年(シリーズ C)、2015年の時で4ヶ月(シリーズ D1)、その次は数ヶ月くらい(シリーズ D2)。回数を経るにつれ、普段からリレーションが取れているため、短くできるようになっていった。
  • 投資家とは常にコミュニケーションし、「次にファイナンスするときは声をかけてください」と言ってもらえる関係性を確立しておく。あるラウンドのファイナンスが終わった瞬間から、投資家には次のラウンドに参加してもらう可能性があるという位置づけ。
  • 地方銀行から資金を調達できた背景には、ビジネス面でのアライアンスが進んでいることが大きく影響している。アプリを作るとか、クラウドサービスを進めるとか、そういった協業関係が無いと、地方銀行からの資金調達は難しいのではないか。
  • バリュエーションが100億円を超えてくると VC からの調達は難しくなってくることも事実。投資家に対しては、バリュエーションや投資リターン以外のメリットを見せる必要が出てくる。レイターステージで事業パートナーからの調達が増えるのには、そういう理由もあるだろう。
  • ストックオプションは、基本的に年に1回の形で運用していた。全株式の中で、上場時の何%を割り当てるかは投資家らとの契約の中で決めていた。例えば、ストックオプションで付与できる割合を全株式の15〜20%程度に設定しておき、創業から上場までを4年と見るなら、1年あたり4〜5%程度は付与できる、というようなイメージ。誰にどのように付与するかについては、社員が100人程度の規模までは評価制度が確立されていなかったので、CEO や CFO が相談して決めていた。
  • どの投資家から、バリュエーションをいくらにして、どれだけ調達するかについては、まずは自分たちのビジョンを明確にし、それに必要な資金を算出する。そして、どの程度のバーンレートをカバーして、その金額で何年持たせられるかを計算する。マネーフォワードの場合は、比較的厚めにファイナンスしてきた。ストレッチしたバリュエーションでファイナンスができたのは幸運だった。そして、投資家には、事業上の関係やフィーリングも含め、一緒の船に乗ってやっていける人や企業を相手に選ぶべきだ。
  • 投資家に伝えていくストーリー(業績見通しの計画)については、事業のステージによって違ってくる。2014年くらいまでは(シリーズ C あたり)売上はまだ1億円に届かない位の業績だったので、今後どういうプロダクトをローンチしていくのかを話していた。2015年(売上4億4,000万円)、2016年(売上15億4,000万円)くらいになると、トラックレコードで将来成長を見せられた。売上がまだ無いときは SAM(実際に提供可能な市場規模)や TAM(獲得可能な最大市場規模)で、売上が出てきたら実績の延長線で話せるようになる。
  • 資金調達は CEO 中心でも CFO 中心でもできるが、どんな体制で臨むかはその会社次第。資金調達に表面的なスキルよりも、むしろ、投資家との信頼関係を築いたり、最後までやり切れる人だと見てもらえたりすることが大事。投資家も経営者を2〜3年見ていればそのあたりが分かってくるので、安心して投資ができるようになる。投資家に対しては、真摯かつ愚直に事業に取り組んでいる姿を見せ続けるというのが王道。ファイナンスが必要になってから、ある日投資家に出会い、「いきなり投資を決めてください」と申し出る選択肢は勧めない。

<上場(2017年9月)>

スタートアップ経営者にとって、自社の業績が上場基準を満たしたとして、いつ上場するかというのは熟慮すべき課題。最近では、ファンドの大型化によって、資金需要だけで考えれば VC からの調達でも充足することができるだろう。しかし、「金は天下の回りもの」であるゆえ、経済のある部分がスタックすると資金調達を含め経済全体がスタックする危険を指摘する CFO は多い。

マネーフォワードでは、シリーズ E ラウンドを迎えた2016年前後から経営陣の間で上場に向けた話が出始め、「上場を最速で目指そう」という意見の一致から2017年夏にターゲットを定めた。マネーフォワードの初期投資家の代表者でもあり、辻氏の心の師でもある松本大氏が言う「上場はタイミングが難しいがゆえ、できるときにするのがいい」という以前からの進言も参考にしたそう。

タイミングは重要であるが、タイミングは簡単にずらせるものでもない。したがって、シンプルに考えた結果、最速を目指した。すべての会社に当てはまらないかもしれないが、マネーフォワードの場合、IPO できるときに IPO して次の成長に備えるということで、そういうタイミングになった。(中略)

海外ではかなり大きくなるまでは IPO しないという傾向がある。これは IPO しないというよりも、大きくならないと IPO できないからという感じ。日本の場合はマザーズという新興市場があるので、IPO できるタイミングで IPO というのもありだし、大きくしてから IPO するというどちらも選択肢としてありだと思う。(金坂氏)

<上場後(2017年9月〜)>

マネーフォワードが2020年4月に公開した第1四半期の決算説明会資料によると、同社の株主のうち機関投資家比率は過半数を超え、海外機関投資家が36%、国内機関投資家が16%を占める。昨年、日経が発表した売上高100億円以下の上場企業「NEXT1000」を対象にした調査では、2018年度に海外投資家を増やした会社1位はマネーフォワードだった(89社)。別の日経記事によれば、これら海外からの公募増資は、主に M&A 資金などに充てるためのものだ。

実際のところ、クラビス(2017年11月)、ナレッジラボ(2018年7月)、ワクフリ(2018年8月)、スマートキャンプ(2019年11月)と、マネーフォワードはスタートアップ買収にも積極的だ。マネーフォワードの海外投資家からの資金調達は、日本の SaaS や会計系サービスなどへの強い期待の現れと見ることもできる。また、買収はしていないが、Chatwork(東証:4448)や BASE(東証:4477)といった上場を果たしたスタートアップに対する投資家でもあった。

そういったこともあり、マネーフォワードはこれまで海外投資家への IR 活動を積極的に行ってきた経緯がある。IPO 以降、通算で三度にわたる海外からの資金調達を行っており、1度目は IPO と同じタイミングで、旧臨報方式(アメリカを除くアジアやヨーロッパなどの世界にオファリングをする)により30億円、2度目と3度目は海外公募増資(Global Offering)により、それぞれ66億円(2018年12月)と47億円(2020年1月)を調達している。1度目の調達時に旧臨報方式を選んだのは投資家からの需要が大きかったこためで、英文でのドキュメンテーション作成も必要とされなかった。

金坂氏によれば、M&A する場合と、マイナー出資する場合では、投資先スタートアップの選定基準が全く異なってくる。マネーフォワードの M&A 戦略はプロダクトを増やす M&A とユーザを増やす M&A に大別されるが、これまではプロダクトを増やす方に終始してきたそうで、今後はユーザを増やす M&A 案件も手掛けていきたいという。また、M&A では買収先のスタートアップの経営者をマネーフォワードグループの経営陣に迎えることを前提とするため、会社間や人の間のカルチャーフィットが重要となる。資本提携や出資の場合はこの限りではなく、投資先のスタートアップの経営者が IPO までやり切れるかどうかを見極めるそうだ。

また、上場後は、いかに株主に長く会社を愛してもらうか、もっと言えば、株を持ち続けてもらうかというのはテーマだ。安定株主をどうやって確保するかという視聴者からの問いには、金坂氏は次のように応えた。

安定株主という概念は信じていない。どんな株主にも、売りたい時に売る権利があるからだ。ただし、投資家とはコミュニケーションを密にとって、長期にわたって株式を保有してもらえるよう努力はしている。投資家とは立場が違うので、株式を売り出すタイミングについては交渉はできても無理は言えない。普段からしっかりした IR を心がけ、マネーフォワードの場合は大口の株式売却があっても、株価に影響を与えずに、それをいい投資家にまた買ってもらえている。

<その他>

  • 株主が多いと株主とのコミュニケーションが大変になる、と懸念する経営者もいる。マネーフォワードの場合、ミドルステージ以降は、事業パートナーに株主になってもらったものが多い。そのため、彼らに対しては投資家への説明以前に事業における説明があり、月1回ペースでの KPI 報告会、その後、社長や担当者も交え飲み会という形で運営していた。株主=事業パートナーに毎月会っているので、次のファイナンスの情報も伝えやすい。複数の株主が同時に同じ場所に集まれ、効率的に意見を交換できる点でもよかった。
  • 新型コロナウイルスの影響で資金調達が難しくなるのも事実だろうが、工夫をする方法はある。まず、資金が足りないからと言って新規投資家に連絡を取る前に既存投資家と密にコミュニケーションをとるべきだ。新規投資家と既存投資家では、そのスタートアップに対して持っている情報量が違うし、既存投資家がサポートできないのに新規投資家がサポートするのは難しい。既存投資家の支援を獲得し、それから新規投資家を呼んでくるべき。営業上ムダなコストはとことん削ること。

マネーフォワードシンカのクライアント企業

金坂氏が代表を務めるマネーフォワードシンカでは、スタートアップが IPO などイグジットを目指す上でのフィナンシャルアドバイザリー事業を行っている。昨年9月の創立から、スタッフメンバーは総勢10名体制にまで成長。マネーフォワードの上場を通じて得られた知見や経験をもとに、2021年までにスタートアップ100社の支援を目指しているそうだ。

また本セッション終盤には、先月のエルピクセルの元取締役横領事件にも触れられた。CEO は CFO に全幅の信頼を置くものだが、悲しいことにこういう事案が時々世の中を賑わせてしまう。今回の事件では、銀行口座の通帳コピーが細工されるという単純なトリックで経営陣が騙されてしまったわけだが、マネーフォワードを使えば、口座情報はリアルタイムで金融機関からアグリゲートされるため、その情報をオンラインで経営陣が共有すれば、同じような問題は生じない、とのことだった。

スマートラウンドは、起業家の資本政策づくりを支援する SaaS「smartround(スマートラウンド)」のユーザが去る6月16日で1,000社を超えたと発表した。smartround のローンチは昨年6月22日なので、1日平均約2.8社のペースでユーザが増えたことになる。また先頃、これまでの「資本政策 smartround」「経営管理 smartround」「会社紹介 smartround」「ライブラリ smartround」に加え、新たに「株主総会 smartround」をリリースした。株主総会 smartround の機能の一部は、先月ケップルがローンチした「株主総会クラウド」と競合する可能性がある。

マネーフォワード、SaaS比較「BOXIL」やインサイドセールス支援「BALES」運営のスマートキャンプを約20億円で買収し連結子会社化

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マネーフォワード(東証:3994)は11日、SaaS 比較サイトの「BOXIL(ボクシル)」やインサイドセールス支援の「BALES(ベイルズ)」などを運営するスマートキャンプを子会社化すると発表した。マネーフォワードが、既存株主からスマートキャンプの株式72.3%を約20億円で取得する。設立から5年半を経て、スマートキャンプはマネーフォワードグループ入りする形でイグジットを迎えた。 スマートキャン…

マネーフォワード代表取締役社長 CEO 辻庸介氏(右)、スマートキャンプ CEO 古橋智史氏(左)
Image credit: Money Forward

マネーフォワード(東証:3994)は11日、SaaS 比較サイトの「BOXIL(ボクシル)」やインサイドセールス支援の「BALES(ベイルズ)」などを運営するスマートキャンプを子会社化すると発表した。マネーフォワードが、既存株主からスマートキャンプの株式72.3%を約20億円で取得する。設立から5年半を経て、スマートキャンプはマネーフォワードグループ入りする形でイグジットを迎えた。

スマートキャンプは2014年6月の設立。Incubate Camp 7th8th に参加する中で、以前のサービス「SKET」からピボットを図り、2015年5月に BOXIL が生まれた。2019年10月末現在、アクセス数は月間1,000万ページビュー以上、会員を12万人以上集め、月間3万件以上の潜在顧客誘導を行う SaaS ユーザと SaaS プロバイダのマッチングプラットフォームに成長している。

2017年9月には、SaaS プロバイダ向けにインサイドセールスをアウトソーシングできる BALES をローンチ。今年8月には、インサイドセールス特化型顧客管理 SaaS 「Biscuet(ビスケット)」をローンチしている。これらのサービスを通じて、100サービス超の SaaS プロバイダに商談創出を支援している。

一方、マネーフォワードは2017年11月にクラウド型自動記帳サービス「STREAMED」を提供するクラビスを買収、昨年7月に経営分析クラウド「Manageboard(マネージボード)」を提供するナレッジラボを買収するなど、概ね1年に1社程度のペースでスタートアップを買収し事業領域を拡大してきた。

今回の連結子会社化により、マネーフォワードでは、スマートキャンプが持つマーケティングノウハウを活用したマネーフォワードシリーズの新規顧客獲得の加速、スマートキャンプではマネーフォワードのネットワーク及び顧客基盤を活用した BOXIL・BALES・Biscuet の利用者拡大を目指すとしている。

マネーフォワード、成長企業向けフィナンシャルアドバイザリー事業に参入——マネーフォワードのIPO立役者、金坂直哉氏が新会社の代表に就任

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マネーフォワード(東証:3994)は19日、フィナンシャルアドバイザリー事業を提供する100%子会社として、マネーフォワードシンカを設立したと発表した。新会社の代表には、マネーフォワード前 CFO の金坂直哉氏が就任する。 マネーフォワードシンカでは、フィナンシャル・アドバイザリーサービス(資金調達、M&A、戦略策定、プロジェクト推進)、成長企業経営支援サービス(経営・財務・バックオフィス…

マネーフォワードシンカ 代表取締役 金坂直哉氏
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マネーフォワード(東証:3994)は19日、フィナンシャルアドバイザリー事業を提供する100%子会社として、マネーフォワードシンカを設立したと発表した。新会社の代表には、マネーフォワード前 CFO の金坂直哉氏が就任する。

マネーフォワードシンカでは、フィナンシャル・アドバイザリーサービス(資金調達、M&A、戦略策定、プロジェクト推進)、成長企業経営支援サービス(経営・財務・バックオフィス領域のハンズオン支援およびアドバイス)を提供。同社は対象ユーザとなる企業を限定していないが、ミドルステージやレイターステージのスタートアップを視野に入れていると推測される。

THE BRIDGE の取材に対し、金坂氏はマネーフォワードシンカを立ち上げた理由を次のように挙げた。

  • スタートアップにとって、ファイナンスをどう生かすかは大きなテーマ。スタートアップの成長に大きく影響を及ぼす。
  • ファイナンスを先導する CFO 人材が業界全般的に不足している。
  • CFO 人材を即席で多人数育成するのは難しいが、マネーフォワードの IPO を先導してきた自らの経験や、それを通じた知見やネットワークが、他スタートアップのファイナンスにも役に立つ。

端的に言えば、資金が必要な時に、どこからどのような方法で調達するかというのは、スタートアップ経営者にとっては永遠の命題のように思える。起業家の話を聞く限り、彼らはファイナンスに関するハウツーを、自分と立場を同じくする起業家仲間と情報交換することで得ているケースが多いが、互いに使える時間や知識に限界もあるため、必要十分な情報を得られているかどうかは難しい。マネーフォワードシンカでは、そのような起業家を支援したいと考えているようだ。

Image credit: Money Forward Synca

マネーフォワードでは、自社や自社傘下のグループ会社が提供する各種 SaaS にマネーフォワードシンカが加わることで、企業経営に必要なサービスを網羅的に提供することを目指している。マネーフォワードシンカは SaaS ではないが、クライアントの増加に合わせチームを拡大する計画だ。料金形態は未定だが、例えば、資金調達を手伝う場合、コンサルフィー(ベース料金)+成功報酬(資金調達が成功した場合)などが考えられる、と金坂氏は語ってくれた。

資金調達のプロセスやメソッドは多様化しつつあり、昨年 SmartHR が実施したシリーズ B ラウンドでは戦略的スキーム SPV(Special Purpose Vehicle)が採用された事例もある。将来的には、マネーフォワードのグループ各社や外部の金融機関の協力を得て、例えば、エクイティとデットの中間のような、新しい資金調達手段の開発にも注力したいと、金坂氏は語った。

なお、マネーフォワードは19日、同社が提供する会計 SaaS「マネーフォワード クラウド」の機能として、IPO 準備・上場企業向け支援機能「マネーフォワード クラウド会計 for IPO(仮称)」を来年2月にローンチすることを明らかにしている。

<関連記事>

マネーフォワード、クラウド乗換でAmazonギフト券や現金がもらえる総額10億円キャンペーンを展開——軽減税率導入を前にユーザ取込を狙う

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マネーフォワード(東証:3994)は31日、都内で記者会見を開き、8月1日から会計クラウドサービス「マネーフォワード クラウド」への加入を促進するキャンペーンを開始すると発表した。今年10月からの軽減税率導入を念頭に置いたキャンペーンで、既存の会計ソフトなどからの乗り換えを狙う。 年間イメージキャラクターに女優の山本美月氏を起用し、メディアなどでキャンペーンを展開する。 軽減税率の導入にあたっては…

マネーフォワードのイメージキャラクターに就任した山本美月氏(左)と、マネーフォワード代表取締役社長 CEO の辻庸介氏(右)
Image credit: Masaru Ikeda

マネーフォワード(東証:3994)は31日、都内で記者会見を開き、8月1日から会計クラウドサービス「マネーフォワード クラウド」への加入を促進するキャンペーンを開始すると発表した。今年10月からの軽減税率導入を念頭に置いたキャンペーンで、既存の会計ソフトなどからの乗り換えを狙う。

年間イメージキャラクターに女優の山本美月氏を起用し、メディアなどでキャンペーンを展開する。

軽減税率の導入にあたっては、商品により消費税の適用税率が事実上二分されるため、事業者においては会計ソフトのアップグレードや変更が必要になる。マネーフォワードはクラウドサービスであるためアップグレードや変更が必要ないため、軽減税率の導入を新規ユーザを取り込む好機と捉えた格好だ。

一般企業にはマネーフォワード クラウドを初めて利用する場合5万円分の Amazon ギフト券、「マネーフォワードクラウド公認メンバー」の会計事務所には顧問先がマネーフォワードの「法人ビジネス年額プラン」に新規契約する場合に現金10万円が進呈される。支給総額は10億円で、キャンペーンの実施期間は今年8月1日から12月31日まで。

同社によれば、現在のマネーフォワード クラウドのユーザ構成は、企業が自前でクラウドを選択している場合と、会計事務所の支援により企業がクラウドを導入するしている場合が概ね半々。今回のキャンペーンでは、会計事務所の支援により企業が新規にクラウド導入されるケースが多いと見込んでおり、7,000〜1万社の新規加入を狙うとしている。

マネーフォワード、京都・三条河原町に開発拠点を設立——地元コミュニティの期待が膨らむ中、新風を吹き起こせるか?

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マネーフォワード(東証:3994)は7日、京都・三条河原町に新支社・開発拠点(以下、京都オフィス)を設立した。この日、京都オフィスで開かれた設立記念イベントには、マネーフォワード CEO の辻庸介氏、京都オフィスの代表に就任する村上勝俊氏(京都開発部部長)、エンジニアの谷口徹氏が出席。来賓として、京都市長の門川大作氏や京都大学教授の木谷哲夫氏らが招かれた。同社はこれまで京都・四条烏丸のコワーキング…

左から:京都大学教授 木谷哲夫氏、マネフォワード CEO 辻庸介氏、京都市長 門川大作氏
Image credit: Money Forward

マネーフォワード(東証:3994)は7日、京都・三条河原町に新支社・開発拠点(以下、京都オフィス)を設立した。この日、京都オフィスで開かれた設立記念イベントには、マネーフォワード CEO の辻庸介氏、京都オフィスの代表に就任する村上勝俊氏(京都開発部部長)、エンジニアの谷口徹氏が出席。来賓として、京都市長の門川大作氏や京都大学教授の木谷哲夫氏らが招かれた。同社はこれまで京都・四条烏丸のコワーキングスペースに営業拠点を設置していたが、今回、独立オフィスとして新拠点を構えたことで、さまざまな試みを始める見通しだ。

なぜ、京都なのかという疑問には、いくつかの可能性が考えられる。ベンチャーにとって東京でのエンジニア採用が難しくなる中、LINE が京都に開発拠点を設立したのは記憶に新しい。同じような文脈は少なからず存在するだろう。CEO の辻氏が京都大学農学部出身であることも理由の一つに考えられる。京都拠点の設立は今から約1年前、前出の村上氏(兵庫・三田出身)を中心として、社内 Slack に「そうだ、京都へ行こう」という一文で立ち上がったスレッドに端を発するそうだ。

京都に対する思いを語る辻氏
Image credit: Money Forward

SaaS の会社が開発拠点を設立することで、地元の大学生にとって有望ベンチャーのインターン先が近隣に生まれることも意義深い。京都オフィスの社員数は設立当初2名と小規模ながら、今日のイベントに市長が訪問したことに象徴されるように、地元コミュニティの期待は大きい。同社では、会社が大きく成長していく中で「東京本社ではできていないことを、京都オフィスで積極的に挑戦していってもらいたい(辻氏談)」としている(同社では、京都オフィスのコンセプトを「give it a try」と設定している)。

京都オフィスでは、グループ会社化したナレッジラボの開発支援に加え、ものづくり人材の創出拠点と位置づけ、京都発の新たな事業やサービス開発も推進する。決定事項ではないものの、積極的な外国人エンジニアの採用、オフィス公用語の英語化、休業日の平日への移動(平日に休み休日に働くことで、学生がインターンやアルバイトに来やすくなる)など、興味深いアイデアをいくつか抱えているようだ。マネーフォワードの本格進出によって、京都のスタートアップコミュニティがさらに活気続くことが期待される。

左から京都開発部部長の村上勝俊氏、エンジニアの谷口徹氏。京都オフィス自慢の畳部屋で。
Image credit: Money Forward
京都オフィスの玄関からのアプローチ
Image credit: Money Forward

〈東京スタートアップ・オフィスツアー〉上場後初のお引越し、田町駅の新名所に生まれたマネーフォワードの〝空中オフィス〟に潜入

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本稿は、「東京スタートアップ・オフィスツアー」シリーズの一部だ。 数十年ほど前まで、田町という駅は学生街や大企業の膝元として賑わいを見せる西口と対照的に、東口は極めて簡素な作りだった記憶がある。筆者が初めて田町駅の東口を使ったのは、確か、レイヴ系の音楽が日本を席巻して芝浦にジュリアナ東京ができたときだったが(そして、ジュリアナ東京の跡地には現在、 TBWA \ HAKUHODO のアクセラレーショ…

JR 田町駅東口

本稿は、「東京スタートアップ・オフィスツアー」シリーズの一部だ。

数十年ほど前まで、田町という駅は学生街や大企業の膝元として賑わいを見せる西口と対照的に、東口は極めて簡素な作りだった記憶がある。筆者が初めて田町駅の東口を使ったのは、確か、レイヴ系の音楽が日本を席巻して芝浦にジュリアナ東京ができたときだったが(そして、ジュリアナ東京の跡地には現在、 TBWA \ HAKUHODO のアクセラレーション拠点がある)、このあたりも再開発が進んで、現在では港区の一大副都心へと変貌を遂げつつある。

今春オープンしたばかりの msb Tamachi 田町ステーションタワー S

そんな田町駅西口にの新名所となりつつある複合施設「msb Tamachi(ムスブ田町)」にマネーフォワード(東証:3994)がオフィスを移転、先ごろプレス向けの公開イベントが開催された。msb Tamachi は田町駅からだと雨も心配いらない程度の至近距離にあるが、飲食店などテナントの本格オープンは秋になるようで、街は夕方のラッシュアワーの喧騒の中にありながら、ビルの内部は静かでガランとしていた。

リビングルームのような新オフィスの玄関
新オフィスの意義を強調する代表の辻庸介氏。創業当初はオフィス環境の重要性をあまり感じていなかったというが、移転を重ねるにつれ、その考えにも変化が現れたとのこと。
執行役員の神田潤一氏は、恒例となったオペラを披露。この日は「椿姫 乾杯の歌」で文字通り乾杯の音頭をとった。
新オフィスには、前のオフィスで使われていた木材の一部が再使用されるなど、同社の社員たちがこれまでの軌跡に想いを馳せつつも、さらなる高みを目指す意識が持てるような視覚的な工夫が施されている。
一部の造作が工事中のようなデザインとなっているのは、同社の事業が完成したのではなく、常に発展段階にあることを演出したものだ。
本社オフィスに12個ある会議室には、野口英世、伊藤博文、樋口一葉など日本の紙幣に描かれた人物名の名前がついている。このアイデアは、社内公募を通じて決められたのだそうだ。
社名とタグラインが大きくあしらわれた会議室。
コンプライアンスの関係で執務室の撮影箇所は限定されたが、眺めのいい窓際には社員がリラックスして仕事ができるコージーな空間が多数設けられていた。
参加者には、マネーフォワードのロゴのはいったドラ焼きが配られた。

マネーフォワード、ナレッジラボに約2億円を出資しグループ会社化——会計クラウド+経営分析クラウドで、中小企業の収益向上を支援

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会計 SaaS 提供のマネーフォワード(東証:3994)は5日、都内で記者会見を開き、経営分析クラウド「Manageboard(マネージボード)」を提供するナレッジラボに約2億円を出資し、グループ会社化すると発表した。マネーフォワードによるナレッジラボの株式持分は51%。今回のグループ会社化を通じて、マネーフォワードは、中小企業の収益向上実現を目的とした事業領域の拡大、会計事務所へのツールやノウハ…

左から:ナレッジラボ代表取締役の国見英嗣氏、マネーフォワード代表取締役社長 CEO の辻庸介氏
Image credit: Masaru Ikeda

会計 SaaS 提供のマネーフォワード(東証:3994)は5日、都内で記者会見を開き、経営分析クラウド「Manageboard(マネージボード)」を提供するナレッジラボに約2億円を出資し、グループ会社化すると発表した。マネーフォワードによるナレッジラボの株式持分は51%。今回のグループ会社化を通じて、マネーフォワードは、中小企業の収益向上実現を目的とした事業領域の拡大、会計事務所へのツールやノウハウ提供、両社でビジョンの実現をさらに推進したいとしている。

今年1月にローンチした Manageboard は、主な機能として、予算実績分析(予実分析)、キャッシュフロー予測、AI 監査(仕訳・試算表チェック機能)を提供するクラウドサービス(ただし、AI 監査機能は今夏リリース予定)。中小企業にありがちな非効率な会計業務、会計知識の不足、不十分な予実管理といった問題について、マネーフォワードではMF クラウドユーザをはじめとする中小企業に対し Manageboard を提供、中小企業の収益向上にコミットするとしている。

会計クラウドサービスによる中小企業向けの経営管理・経営支援サービスとしては、今週 freee が予算・実績管理機能(予実管理)サービスの提供を発表している。一方、マネーフォワードは昨年8月の上場以降、マネーフォワードは新事業の構築に積極的だ。9月にはモバイル貯金アプリの「しらたま」をリリース、11月にはクラウド型自動記帳サービス「STREAMED」を提供するクラビス買収している。またそれ以前にも、昨年6月に企業間後払い決済サービス提供に向けた子会社「MF KESSAI」を設立している。

すでに日本が世界のフィンテックリーダーになりつつある理由【ゲスト寄稿】

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。 Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。 彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を…

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。

Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


日本のフィンテックは多くの人が想像するより進化していて、さらに速いスピードで前進しつつある。

今日は、マネーフォワードの共同創業者であり、金融庁のアドバイザーである瀧俊雄氏を迎えた。マネーフォワードがどうやって設立され成長してきたかだけでなく、日本政府が全体として金融業界の整合性と安定性を維持しながら、金融イノベーションをどのように促進する計画かについても話を聞いた。

興味深い対話なので、お楽しみいただけると思う。

(本稿に含まれるユーザ数や金融機関数などは、原文が公開された2017年7月現在のものです。)

Tim:

マネーフォワードについて、少し教えてください。

瀧氏:

2つのビジネスラインがあります。消費者向けには、使いやすい個人会計プラットフォームを提供しています。大半の主要金融機関と連携したことで、我々の500万人いるユーザは自分がお金を貯めたり使ったりする習慣を把握し、ある種の個人の損益計算書を見ることができます。事業者向けには、中小企業を対象とした会計クラウドを運営しています。

Tim:

売上モデルはどうなっていますか?

瀧氏:

フリーミアムモデルです。無料ユーザは、最大10の金融機関まで接続できます。有料ユーザは、無制限に接続できます。

Tim:

マネーフォワードのようなサービスは、アメリカでだいぶ以前から存在していました。最大のものは、mint.com(Mint)ですね。日本でこの種のサービスが人気を得るのに時間がかかったのはなぜでしょうか?

瀧氏:

アメリカには、消費者クレジットスコアシステムがあるので、消費者に無理サービスを提供し、その金融情報をマーケッターに販売できます。そういうわけで、Mint は以前からサービスを無料で提供できたわけです。日本には統一されたクレジットスコアがなく、企業による個人情報の利用を規制する厳しいプライバシー法があります。したがって、アメリカのモデルは日本では機能しません。

Tim:

マネーフォワードのプロダクトについてはどうですか? 日本では、たいてい主婦が家計をつけています。このことは、プロダクト設計にも影響を及ぼしましたか?

瀧氏:

それは古くからのイメージで、我々が事業を始めたときにもそういう仮説を持ちましたが、間違っていたことがわかりました。自分の会計や家計に興味がある男性は多くいるのです。

Tim:

それは、プロダクト設計にどう影響しましたか?

瀧氏:

コアバリューにフォーカスするのに役立ちました。我々の競合には、現在の主婦の家計のつけ方をもとにデザインしたところもあります。彼らは、日記、手動データ入力、写真ストレージのような機能までつけています。我々は、現在行われているやり方を無視して、最も効果的にお金を管理する方法に特化しました。事実、女性ユーザよりも男性ユーザが多いです。

Tim:

それは興味深いです。きっと、昔からのやり方は手間がかかり複雑で、シンプルなインターフェイスによって、家の主人が参加できるようになったのでしょうか?

瀧氏:

それは可能性としてあります。しかし、実際はわれわれ共同創業者が全員男性で、我々が喜んで使いたいものを作りたかったのです。我々のプロダクトは特に男性的とか女性的とかいうわけでもありません。仕事をできるかぎり効率よくやる、というだけです。最終的には、すべての人に最も魅力的なものになるでしょう。

Tim:

今日、世界中でフィンテック企業に多くの投資が集まっていますが、金融業界は以前から変化が遅く、ディスラプトするのも困難です。それは日本も同じですか?

瀧氏:

実際のところ、この2年ほどで規制環境はいい方向に変化してきています。ベンチャー企業向けに金融機関が API を作って公開するのを促すため、銀行法は2回改正されました。

Tim:

どのくらい、物事は速く変化しているのでしょう? マネーフォワードは、2,600 以上の金融機関と接続していますね。そのうちのどのくらいが API を持っているのですか?

瀧氏:

現在のところは銀行10行だけが API を持っており、これらの API はこの2年ほどで作成されました。残りの金融機関については、マネーフォワードでは画面をスクレイピングしてデータを取得しています。API を持つ10行という数字は小さく聞こえるかもしれませんが、世界では最大の数です。

Tim:

そうなんですか? アメリカの証券口座や銀行口座は、すべて相互に接続して情報共有できているように思います。

瀧氏:

そうですね。しかし、そのほとんどは大規模な金融機関だけが参加できたり、二者間で直接連携できたりする専用ネットワークを使っています。日本では、スタートアップと大企業の両方が使えるオープン API を開発しています。

Tim:

このような動きを進める金融庁のモチベーションは何でしょう? 銀行間のやりとりの効率を上げようとしているのでしょうか? それとも、スタートアップを支援しようとしているのでしょうか?

瀧氏:

金融庁は、金融サービスの品質全般を改善したいのです。PayPal のような金融イノベータを見てみると、最初は狭い市場セグメントに特化し、一つのことを大変うまくやっていく傾向があります。銀行はそうはできない。銀行はすべての人にサービスを提供する必要があります。彼らは良いサービスの提供に注力していますが、スマートフォン世代にとっては、ただ良いものというだけでは十分ではない。消費者は最良の体験を求めるのです。

Tim:

なるほど。おそらく銀行にイノベイティブであることを求めるのは不公平かもしれませんが、他方で、銀行 API をスタートアップに公開するのはセキュリティリスクを教えてしまうことになりませんか?

瀧氏:

それは、我々が明らかに注意しなければならない点ですね。この構造を考える上で最良の方法は、金融サービスのインフラレイヤーから、プレゼンテーションレイヤーとサービスレイヤーをアンバンドルしつつあるということです。スタートアップはイノベイティブで新しいプレゼンテーションやサービスを作ることができますが、今後も実際の銀行インフラは今日の大規模金融機関によって運営され続けるでしょう。


日本は、一度変わろうとする決断がなされると、実に素早く変化していくことに常々驚かされる。今から10年後、日本はフィンテックイノベーションで世界のリーダーの一つになっているだろう。

金融庁の立場も興味深いが、成功はリスクとイノベーションの間の微妙なバランスにかかっている。新しい銀行 API は、スタートアップなどの企業が意味のあるイノベーションを作り出せるよう、十分な金融の力と機能性を公開する必要がある。しかし、銀行インフラが安定かつ信頼を担保し続けられるよう、必要な規制と制御を API に講じておく必要もある。

最終的に銀行はおそらく API の後ろにいる存在となり、そして、その多くは、特定の消費者ニーズや市場セグメントに特化した、さまざまな新しい小規模企業と対話することになるだろう。