インフルエンサーマーケティングはもう古い? 購入者の実使用動画に特化したソーシャルコマース「Flip」がユニコーンに

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Image credit: Flip

ソーシャルコマース企業の Flip は最近、Streamlined Ventures がリードし、広告ソフト会社の AppLovin が参加したシリーズ C ラウンドで1億4,400万米ドルを調達した。

今回の資金調達完了後、Flip の評価額は10.5億米ドルに達し、新たなユニコーンとなった。Amazon や Tiktok の市場価値とはまだ大きな開きがあるが、Flip は消費者に愛され始めており、ソーシャルコミュニティと e コマースの世界を変革させつつある。

Flip のコアコンセプトは「正直」と「真実」である。e コマースは便利だが、地雷を踏みやすいし、ネット上の有名人のコメントは ステマばかりで、お墨付きはもはや品質の保証にはならない。Flip は、消費者が見るべきは、一般人が初めて商品を受け取った時に撮影した開封動画だと考えている。

Flip のコンセプトは、どのようにブレークスルーするのだろうか?

「正直」と「真実」

Jonathan Ellman 氏と Noor Agha 氏によって2019年に設立された Flip は、自らを「信憑性に焦点を当てた次世代ソーシャルコマースプラットフォーム」と位置づけている。

Agha 氏は、消費者がオンラインで買い物をする際に最も戸惑うのは、どこで買うかではなく、無数にある商品の中から自分に合った商品をどうやって見つけるかだと言う。彼は、消費者は正直な製品の推薦に飢えており、Flip はこのニーズを満たすために作られたと考えている。

Flip がユニークなのは、Amazon のような e コマースプラットフォームであるだけでなく、TikTok のような短編動画や音声を作成できるコミュニティでもあることだ。

Flip のユーザは、Flip 上で商品を購入することができるが、検索結果に有名メーカーの商品が表示される Amazon や、ユーザがソーシャルメディアのフィードにランダムにショッピング動画を挟む TikTok とは異なり、Flipには商品をどのように使っているかという消費者の最もリアルな感想のみが掲載されている。

Image credit: Flip

動画コンテンツの信憑性を確保するため、ユーザは注文後、商品を受け取るまで Flip のカメラ機能を起動できず、商品を受け取ってから初めてカメラ機能を起動し、動画をアップロードすることができる。

さらに Flip は、ユーザが動画を視聴した回数や商品を販売した金額に応じて報酬が支払われる仕組みも導入しており、ユーザを単なる消費者からコンテンツクリエイターへと変貌させ、中には、このプラットフォームで月に最高5,000米ドルを稼ぐクリエイターも存在する。

これは、Flip、クリエイター、ブランドの間で win-win-win となるビジネスモデルだ。ブランドは商品を販売できるだけでなく、クリエイターも副収入を得ることができ、Flip は取引毎に手数料を徴収する。

Flip が当初からターゲットとしていた化粧品市場に加え、キッチン用品、飲料、電子機器など幅広いカテゴリに徐々に進出している。現在では、アメリカの有名女優 Gwyneth Paltrow(グウィネス・パルトロウ)氏が設立したライフスタイルブランド「Goop」をはじめ、Flip には毎月約1,000のブランドが参加しており、ダウンロード数は約500万件、動画再生回数は月平均3,500万回に達している。

難民・移住の末に起業、UGC(ユーザ生成コンテンツ)に可能性を見出す

リアルなレビューに焦点を当てた Flip の革新的なアプローチは、実は創業者 Agha 氏のユニークな経歴と関係がある。

Noor Agha 氏

Agha 氏はイラクで生まれ、イエメン、パキスタン、ヨルダンの難民キャンプで育った。18歳のとき、家族でアラブ首長国連邦に移住し、シャルジャのアメリカン大学でソフトウェア工学を学んだ。卒業後、Baker Hughes でエンジニアとして働き、そこで初めて大金を手にし、その後いくつかの e コマース会社を設立した。

2019年8月、Agha 氏は単身渡米し、3カ月で Flip を創業した。中東でビジネスを始めたとき、UGC(ユーザ生成コンテンツ)がブランドの成長に役立つことに気づいたという。

最もオーセンティックなショッピングサイトで突破口を開くことに加え、Agha 氏は従来のオンラインショッピングの行動と e コマースのエコシステムをひっくり返したいと考えている。

今から10年後、人々は web サイトだけで注文するのではなく、買い物のプロセス全体がソーシャルな体験になっているでしょう。(Agha 氏)

Agha 氏は、Flip では、人々は買いたいものを検索することで他の動画クリエイターと簡単につながり、商品購入を通じて、お互いを知るための会話を簡単に始めることができると強調する。

Flip のユニークな点は、e コマースプラットフォームと UGC の作成、共有、オンライン上の影響力を組み合わせることで、ショッピングプロセス全体をより本格的で自然なものにしていることです。(Agha 氏)

Agha 氏は、AI が生成したコンテンツやディープフェイクの台頭により、Flip の人間中心で誠実なユーザ体験はさらに価値を増すだろうと考えている。

Flip はシリーズ C ラウンドで1億4,400万米ドルを調達した。同社の次のステップは、AI 技術を連携して、より正確なショッピングレコメンデーションをもたらすことだ。

投資家は将来を楽観視

4月2日、Flip はシリーズ C ラウンドで1億4,400万米ドルの資金調達を受けたと発表した。この資金調達は Streamlined Ventures がリードし、広告ソフトウェア会社の AppLovin も5,000万米ドルを投資した。今回の資金調達により、Flip の企業価値は10億5,000万米ドルとなった。

Streamlined Ventures のパートナー Ullas Naik 氏は、Flip が AppLovin の AI 広告技術「AXON」を応用できると考えている。AXON は AppLovin が2023年にローンチし、広告主がよりターゲットを絞った顧客にリーチし、広告キャンペーンの効果を最適化することを支援するものだ。

AXON によって、Flip は何万ものブランドが適切な顧客を見つける手助けができると確信しています。(Naik 氏)

一方、AppLovin の CEO Adam Foroughi 氏は、Flip への投資により、同社の e コマース分野でのリーチが拡大することが期待される一方、Flip は AppLovin の14億人のデイリーアクティブユーザにリーチし、AXON を利用して購入希望者にターゲットを絞った広告を掲載し、商品販売数を増やすことができるようになると述べた。

Flip と AppLovin の提携は、ソーシャルコマース分野における新たな発展段階を示すものだ。成熟した AI 技術と大規模なユーザベースを持つ Flip は、ブランドと消費者の相互作用を再定義し、ユーザによりパーソナライズされたインタラクティブなショッピング体験をもたらし、e コマースにさらなる革新的な可能性をもたらすと期待されている。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】@meet_startup

【原文】

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