台湾から世界展開、ファッションEC事業者向けAIアシスタント「Rosetta.ai」——創業者が語る日米豪市場の違い

Image credit: Rosetta.ai

海外市場への参入は、ほとんどのスタートアップにとって目標の一つだが、「国際市場では市場特性の違いなど、多くの懸念事項がある」と Rosetta.ai(太米股彬)の共同創業者兼 COO Alice Li(李宜庭)氏は言う。

現地の市場と消費者の心に本当に浸透するためには、現地状況に合わせたマーケティング戦略に加え、各国の文化的背景に合わせることも重要です。(Li 氏)

Rosetta.ai は台湾生まれの AI テック企業だ。創業者の2人は両名とも海外に住んだことのない台湾人だが、同社が連絡を取る顧客や投資家のほとんどは海外の人たちだ。

ファッション e コマース企業向け MarTech ソリューションを提供するこの新しいチームが、Rosetta.ai の船を海外に漕ぎ出した根拠は一体何なのだろうか?

最も消費者に優しいレコメンデーションシステム

Rosetta.ai は2017年、Li 氏と Daniel Huang(黄子豪)氏が共同創業した。91APP、shopify、SHOPLINE などの e コマースサイトで自社ブランドサイトを立ち上げたい事業者に、AI によるパーソナライズド・レコメンデーション・システムを提供し、サイトを閲覧する消費者が、より自分のスタイルに合った商品を選べるように支援する。

これまで、同じようなパーソナライズド・レコメンデーション・システムを持っていた e コマースサイトは、たいてい Amazon のような大企業でした。(Huang 氏)

Li 氏によれば、Rosetta.ai は当初、収益を得る主な方法として顧客への提案に焦点を当て、e コマースとの連携をターゲットにしていなかった。しかし、レコメンデーション・システムでは、AI が学習に十分な情報を手に入れるために一定以上の商品が提供されている必要がある。そこで、AI に十分なトレーニングを行うためにピボットし、その結果、多数の商品を扱う e コマースサイト、中でもファッション分野の e コマース顧客がターゲットになったのだ。

他分野の e コマースだとダメなのだろうか。

たとえば、Apple のモバイルユーザは、間違いなく最初に Apple 製品を e コマースサイトを確認するでしょう。Samsung の場合でも同じですが、どの消費者にもレコメンドされる商品は似ていて、個人を区別する必要はありません。しかし、服や靴などファッション商品は、AI はそれぞれの消費者に対して、好みやスタイルに基づいて、より正確でパーソナライズされたレコメンデーションができ、e コマースにおけるブランド成長に貢献できます。

Rosetta.ai の最大の利点は、ファッション分野の業界専門家や販売各社のデザイナーと商品のスタイルについて話し合い、AI がそれぞれのスタイルを正確に判断できるよう、スタイルの単語や要素を定義していることにある。AI が製品のスタイルのラベルを自動生成し、業界の専門家やマーケティング担当者と協力して、フェアリースタイル、人気の韓国ドラマなど、各国の慣習に沿って、最新の人気スタイルを随時更新する。

用語やカスタムスタイルのラベル設定をファインチューニングしているため、消費者が閲覧した際には、ラベルに基づいて気に入ったスタイルの商品を素早く見つけることができる。販売者はラベルのカテゴリに基づいて各商品のスタイルを定義することもでき、AI は各製品のスタイルと要素を決定できる。

Rosetta.ai の AI パーソナライズド・レコメンデーション・システム
Image credit: Rosetta.ai

Rosetta.ai は、これまで大企業だけが持っていたレコメンドシステムを、中小の e コマース企業が自社でプログラムを書くことなく、自社サイトに導入できるようにした。Rosetta.ai は3年前に海外市場に進出し、海外の e コマース顧客も獲得した。では、Rosetta.ai の海外進出戦略はどのようなものだったのだろうか。

オーストラリア、アメリカ、日本での e コマース市場の経験

Li 氏によると、Rosetta.ai は2020年に海外進出を決定した後、台湾市場の運営と同時に、半年以上かけて海外市場進出の準備を進めた。現在、海外からの顧客は20%だ。2021年のプレシリーズ A ラウンド調達に参加した投資家の支援を通じて、アメリカ、オーストラリア、日本市場に進出したが、各市場には非常に大きな違いがあるという。

Rosetta.ai が作成した表を BRIDGE が翻訳

コンバージョン率を気にしない人がいることを初めて知りました!(Li 氏)

オーストラリアの e コマースの顧客は主に代理店モデルに基づいており、消費者が web サイトを閲覧する際にどのように感じるかをより重視しているため、ブランドの web サイトデザインの見映えや、消費者に与えるスタイルの印象に多くの注意を払っている。これは台湾での経験とはかなり異なり、Rosetta.ai の UI/ UX の再設計につながったと Li 氏は語った。

アメリカでは、e コマース会社が Shopify 上でブランドオーナーと直接コンタクトを取り、ブランドオーナーが Rosetta.ai と協業するかどうかを決めることができる。ブランドから直接ニーズを聞くことはできるが、オーストラリアのように一度に複数のブランドとコンタクトを取れる代理店があるわけではないので、段階的に競合分析やキーワード調査を行い、現地の人々の嗜好の時流を知り、短編動画マーケティングや広告を展開する必要がある。そうして初めて、ブランドとの協業機会が増える。

私たちは日本との協力において、信頼感を非常に重視しています。(Li 氏)

Li 氏は、日本市場に参入する前に、メンタル面で「長い期間」の準備が必要だと述べた。e コマースのエコシステムも代理店ベースではあるが、オーストラリアやアメリカとは大きく異なり、マンパワーやコミュニケーションの面で多くの時間がかかるからだ。

Rosetta.ai は、2020年に海外進出を決めた。それから4年が経過し、海外顧客は全体の約20%に達した。Li 氏は、Rosetta.ai の将来の目標は、海外の e コマース市場をメインにすることで、現在もそれは同じだと述べた。同社は現在、ヨーロッパの e コマース市場の調査を行っており、次のステップとして、2024年には海外ユーザの割合を20%から40%に伸ばし、年末にはシリーズ A ラウンドでの資金調達を目指している。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】@meet_startup

【原文】

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