Googleとはまったく違う、検索体験ができるブラウザに注目/GB Tech Trend

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Image credit: Arc

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

Google検索に挑むブラウザー開発「Arc Browser(以下、Arc)」は、5.5億ドルの企業評価額で、5,000万ドルの資金調達を実施したと発表しました。累計調達額は1.28億ドルに及びます。

Arcの特徴は3つほどあります。まず、Arcは検索結果画面を表示しません。従来のGoogle検索では無数の検索結果が広告も含めて表示されますが、Arcではキーワード入力後に直接サイト内のコンテンツに移動できます。もしはじめに表示されたサイトが適切でない場合は、5~6個の候補サイトから選んでいく形です。キュレーション機能を軸に置いているUXと言えるでしょう。

最も注目すべき特徴は「Browse for Me」機能です。ユーザーが検索キーワードを入力すると、Arcが関連するコンテンツ(ウェブサイト、写真、動画など)を自動的に収集し、1つのページにまとめて提示してくれます。いわば、リサーチ結果がNotionの1ページにまとめられるようなイメージです。さらにレストラン予約などもArc上で完結できるため、検索体験のラストワンマイルまでカバーするUXになるのではと期待が寄せられています。

詳しい使い方は以下の動画をご覧下さい。

UIは最近のトレンドに倣ってNotionやSlack、Discordライクなものとなっており、検索結果のタブ管理をしやすくなっています。ChatGPTがそうであるように、Arcも自社AIエージェントによる検索という価値を最大限活かすために、タブ管理UIにたどり着いたのかもしれません。

さて、長年Google検索に対抗し得るサービスに調達が集まっていましたが、いまだかつて市場シェアをGoogleから奪うことはできていません。たとえば、ユーザーデータが追跡されることはなく、パーソナライズ検索結果が返ってくる仕組みを採用していた「Neeva」は、月額10ドル前後の有料サブスクから収益化を図ろうとしていた検索スタートアップでした。7,700万ドルもの調達に成功していましたが、消費者向けの検索市場でのユーザー獲得に限界を感じ、エンタープライズ向けの検索AIサービスへとピボット、最終的にはSnowflakeに買収されています。

Arcに関しても、検索結果一覧を表示させない体験を提供することから、Neeva同様にサブスク型の収益モデルになると予想されます。いずれAIによるキュレーション機能のリクエスト数に応じた利用料金体系になることも想像に難くありません。

しかしながら、Neevaが辿ったように、一般消費者の検索市場は体力勝負であり、ユーザー数がすべてとなります。課金タイミングを初期段階から行ってしまうと、獲得競争に負けてしまい、グロースは難しくなってしまうかもしれません。さらに、AIによるウェブサイトコンテンツのダイレクト表示機能は、SEOなどで長年の慣例に倣ってきた業界構造を変えることもあり、反発する人も一定数いることでしょう。こうしたしがらみのなか、AIを用いた新たな検索サービスが難しい戦いを勝ち切れるのか注目が集まります。

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