COMPUTEX/InnoVEXが台北で開幕——1周回って、台湾はシリコンバレーになるのかもしれない

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Image credit: Masaru Ikeda

近年の IT のトレンドを見ていると、ハードウェアよりはソフトウェア、ソフトウェアよりはそれらをインテグレーションする力が重視される傾向が強い。実際、テックスタートアップの作るプロダクトの大部分はオープンソースを巧みに融合したもので、これがスタートアップの成長を加速させる要因の一つにもなっている。

しかし、生成 AI が世界中で旋風を引き起こした結果、ハードウェア、より具体的に言えば GPU など AI に必要なチップの需要が高まり、NVIDIA はその株価が上昇を続け、IT に明るくない人でも知る存在となった。NVIDIA の創業者兼 CEO Jensen Huang(黄仁勲)氏は台湾出身のアメリカ人で、今や台湾では Yahoo 創業者 Jerry Yang(楊致遠)氏以来のヒーロー的存在だ。

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台北では今年もアジア最大級の IT 関連見本市と紹介される「COMPUTEX(台北国際電腦展)」が開かれているが、Huang 氏はこの機会に台湾へ凱旋し、台湾の人はもとより、世界中から訪れている観客を魅了した。今週の台湾は Jensen Huang 氏フィーバーに沸いていて、彼もまた祖国である台湾に5年以内に研究開発センターの開設を約束するなどリップサービスを忘れていない。

Jensen Huang 氏は同様に、台湾出身のアメリカ人である半導体大手 AMD の CEO 兼会長 Lisa Su(蘇姿丰)氏も講演した。これらの講演の記録は VentureBeat の Dean Takahashi 氏が詳細にレポートしているので、この後で BRIDGE にも日本語訳を掲載しておくが、筆者は COMPUTEX と併催されているスタートアップ特化イベント「InnoVEX」1日目の模様を中心にお伝えする。

コロナが明けて、参加国・参加者数は記録を更新

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InnoVEX は7日まで続くため公式記録は未発表だが、今年は30以上の国々から、AI、グリーンテクノロジー、スマートモビリティ、半導体アプリケーションという4つのカテゴリを中心に、スタートアップ400社超が出展しており、この数は現時点ですでに2016年に InnoVEX が始まって以来、最大のものとなっている(COMPUTEX は1981年から開催されている)。

台湾以外では、日本からの出展が最大規模で、特に台湾に隣接する沖縄県のブースが目立った。沖縄県は一般企業誘致、BRIDGE でも取り上げたことのある「リゾート×テック」カンファレンスのリゾテックの案内、それに、来年度にインキュベーション施設を増設する沖縄科学技術大学院大学(OIST)が実施するインキュベーションプログラムへの募集が行われていた。

IC Taiwan Grand Challenge の募集

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台湾の国家科学技術委員会(NSTC)は先ごろ、「IC Taiwan Grand Challenge」なるイノベーションプログラムを発表した。このプログラムに応募できるのはスタートアップに限定されず、台湾内外はもちろん、大企業でも中小企業でも零細企業でも構わないが、興味深いのは、「IC 設計イノベーション」と「チップベースの革新的なアプリケーション」に焦点を当てているところである。

繰り返しになるが、冒頭で触れたように、台湾が最も得意とするチップ回帰の現象が起きているのだ。AI 専用データセンターをはじめ、AI の運用に最適化されたインフラが急増すると見られ、これらのパフォーマンスを最大化することができれば、台湾のチップメーカーをはじめとするエコシステム全体が恩恵を得られると台湾政府は見込んでいるわけだ。第1期募集は6月30日まで。

2日目以降もお楽しみに

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開幕1日目は、InnoVEX も政府が多分に関与しているカンファレンスということもあって、公式発表やプレゼンテーションなどが多かったが、2日目からはピッチコンペティション、パネルディスカッションなどインタラクティブなコンテンツが増えてくるので、より台湾やアジアのスタートアップシーンのより詳しい動向をお伝えしたいと思う。。

AI とチップはレイヤーの異なる要素だが、生成 AI が追い風となり、台湾のチップ産業、それはまさしく、シリコンそのもので、台湾政府は「シリコンアイランドを目指せ」と仕切りにアピールしはじめた。一部の LLM メーカーを除き、AI スタートアップの多くは応用レイヤーに強いが、台湾からは世界を牽引する基礎技術を持った AI スタートアップが多く生まれてくるかもしれない。

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