韓国でスタートアップカンファレンス「COMEUP」が開幕、中東やアフリカの起業家・投資家の参加が目立つ

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Image credit: ComeUp 2023

韓国・ソウルで、年次スタートアップカンファレンス「COMEUP 2023」が開幕した。COMEUP は韓国政府の中小ベンチャー企業部(日本の経済産業省や中小企業庁に相当)が毎年開催しており、今年は8日から10日までの3日間、ソウル中心部の DDP(東大門デザインプラザ)でさまざまなイベントが展開されている。

COMEUP は2019年から毎年開催されていて今回で5回目(途中、新型コロナウイルス感染拡大により、完全オンライン形式になったものを含む)。毎年5万人近くの起業家や投資家が参加しており、回を経るにつれ、イベントのグローバル化が図られ、現在では参加者の6割が海外からだという。

このイベントは、韓国のスタートアップの国外進出、世界のスタートアップの韓国進出を支援することを主眼に置いているが、今回は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、セネガルなど、中東やアフリカ各国の政府やスタートアップの参加が目立った。ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が先月サウジ訪問するなど、政府はこの地域との経済的結びつきを重視しており、それが反映されている可能性がある。

COMEUP 2023 の冒頭で基調講演した中小ベンチャー企業部長官 (日本の大臣に相当)の Lee Young(이영)氏によれば、韓国政府は、前述した国々や、ドイツ、スイスなどヨーロッパ勢を加えた11カ国の国際協力アライアンスの組成を計画しており、参加国政府は互いに、自国スタートアップの相手国への進出、相手国スタートアップの自国への進出を支援することになると見られる。

Image credit: Masaru Ikeda

韓国経済は国内市場の規模が限られることから、スタートアップは創業当初から比較的、海外展開に積極的だ。地理的な近さと市場の大きさから、かつては中国市場への進出を目指すスタートアップが多かったが、環境の違いや米中デカップリングの影響ですっかり鳴りをひそめてしまったようだ。一方で日本進出を支援する取り組みは各所で顕著で、アメリカ市場では現地進出済の VC や起業家が活動を牽引している。

そんな中で、前述の11カ国には、アメリカ、日本、中国などの世界経済三大国の名前はなく、反対に、スタートアップ界で言う Next Billion Market(未開拓の10億人市場)、例外国も含まれるがグローバルサウスの国々、オイルマネーを原資にスタートアップ投資しデジタル経済への転換を目指すサウジアラビアなどが含まれているのは、韓国政府の興味深い戦略を示唆している。

会場では、韓国内外のスタートアップ、ベンチャーキャピタル、CVC、スタートアップ支援組織などがブースを構え、参加者とのネットワーキングに注力していた。各国から選出されたスタートアップのピッチ、投資家や韓国企業とのマッチングなども並行して実施されている。

韓国スタートアップシーンの発展は目覚ましく、現在、ユニコーンの数では世界10位の国にランクされている。2019年には6社だったユニコーンは、2022年には14社へと倍増以上を記録した。国内におけるスタートアップ投資も、2019年の54億米ドルから2022年の97億米ドルへと、4年間でおよそ倍増している(出典:Crunchbase)。

COMEUP 2023 の一部のステージについては、以下の YouTube Live で閲覧することができる。この画面の中で、話された言葉の韓国語⇄英語のリアルタイム翻訳字幕の制作には、シリコンバレーに本拠を置く韓国スタートアップ XL8 が協力している。

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