AIによる睡眠分析で改善策を提案、企業の健康経営を後押しするS’UIMIN/KDDI ∞ Labo6月全体会レポ

樋江井哲郎さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

S’UIMIN(すいみん)は、筑波大学の国際統合睡眠医科学研究機構から始まったスタートアップで、睡眠に関する革新的なサービスを提供しています。同社の代表である柳沢正史さんは、睡眠学の著名な研究者であり、1998年に睡眠と覚醒をつかさどる物質の発見で有名になりました。この功績が認められ、ブレークスルー賞や文化功労者を受賞するなど、メディアでも注目を集めています。

現在、約4人に1人が睡眠の問題を抱えており、メタボやメンタルヘルス、認知症のリスクを増大させるとされています。S’UIMINは予防の観点からも睡眠の課題解決を図るべく、睡眠の質を測定し、改善するためのサービスを開発しました。

独自のデバイス「InSomnograf(インソムノグラフ)」は睡眠データを測定し、AIが睡眠の質を解析して最終的に改善案を提示します。デバイスはIoT化されており、充電するだけでクラウドにデータが送信され、フィードバックが得られる仕組みになっています。

S’UIMINの調査では自己申告の睡眠の質と実際の睡眠の質が異なる人が約4割もいるというデータもとれています。つまり、主観的な評価だけでは、睡眠の実態を正確に把握することはできないのです。S’UIMINは、この睡眠の質という〝ブラックボックス〟に光を当てることで、個人に最適な睡眠改善サービスを提供するプラットフォームの構築を目指しています。(樋江井さん)

S’UIMINは研究支援事業とヘルスケア事業の2つの事業を展開しています。研究支援事業では、サプリメントや寝具メーカーなどを対象に、製品の評価にデバイスを用いたサービスを提供しています。従来は主観的な質問票や病院での検査が主流でしたが、S’UIMINのデバイスを使えば、自宅で簡単に客観的な評価が可能になります。一方、ヘルスケア事業では、健康診断のオプションとして睡眠の質の測定サービスを提供しており、すでに300施設で導入されています。

企業からの問い合わせも増えており、生産性向上や健康管理の観点から活用が期待されています。睡眠の問題による年間の損失コストは、肥満や運動不足よりも大きいことがわかっており、S’UIMINの調査でも睡眠に課題があることでプレゼンティーイズム(健康の問題を抱えつつ仕事している状態)が発生していることが明らかになりました。同社は、企業の健康経営を支援するため、従業員向けのアプリや質問票、研修セミナーなどのサービスも用意しています。

S’UIMINは、睡眠の質にフォーカスしたユニークなアプローチで、個人と企業の双方に価値を提供していきます。人生100年時代と言われる昨今、睡眠の重要性はますます高まっており、S’UIMINは最高の睡眠から人々の健康をサポートします。S’UIMINは、より良い睡眠を通じて、人々の健康と幸せに寄与することにフォーカスして、挑戦し続けます。(樋江井さん)

今後、同社は4万件以上の脳波データを活用し、多種多様なソリューション開発を進めていく予定です。自社だけでなく、他社との協業も積極的に進めており、睡眠の質の改善に寄与するサービスの共同開発にも取り組んでいます。また、ソリューション開発やビッグデータ連携に興味のある企業との協業を募集しているとのことです。

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