2030年に使い捨て傘ゼロ社会実現を目指す、傘シェアリング「アイカサ」/KDDI ∞ Labo6月全体会レポ

丸川照司さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

Nature Innovation Groupは「使い捨て傘ゼロ」の社会の実現を掲げ、傘シェアリングサービス「アイカサ」を展開しています。日本では、ビニール傘の登場や電車と徒歩による移動の増加、コンビニの普及などにより、過去30年で傘の輸入量は2〜3倍に増加しました。年間で推定8000万本もの使い捨て傘が消費されており、これは資源の無駄や二酸化炭素排出量の増加につながっています。

アイカサは8000万本の使い捨て傘を、100万本の「シェア傘」に置き換えることで、環境負荷を大幅に削減することを目指しています。傘1本1本にICチップを埋め込むことで、人件費を抑えた効率的な管理を実現しており、ユーザーは1日140円または月額280円のサブスクリプションで利用可能です。また、電源不要の傘ポートが各所に設置され、ユーザーはアプリを使って1分程度でレンタル手続きが完了します。

使用する傘は非常に丈夫で、1本で5年間使用できるレベルの品質を誇ります。また、傘が壊れた際も修理して再利用するなど、サーキュラーエコノミーを意識した取り組みを行っています。消費者が求めているのは使い捨て傘ではなく〝濡れない体験〟であり、アイカサはまさにこの需要を満たすサービスとなっています。(丸山さん)

現在アイカサの傘ポートは関東の一都三県を中心に、関西、福岡、その他地域で1550箇所に設置され、累計会員登録者数は60万人に迫るペースで増え続けているそうです。また、シェア傘のラインナップ拡充にも注力しています。現在は気候変動による熱中症対策の一環として、日傘としても使用可能な晴雨兼用傘も開発しているそうです。傘のデザインにもこだわり、コラボレーション傘を通じてパートナー企業との共創を狙います。

今後の展望としては、2030年に向けた「使い捨て傘ゼロプロジェクト」があります。使い捨て傘をなくすため、パートナー企業と協業しながら、2024年には1000駅以上に傘ポートを設置し、2030年には全国2.5万箇所にポートを拡大。これにより使い捨て傘ゼロの社会を実現します。(丸山さん)

企業との具体的な連携の提案としては、オフィスにアイカサのポートを設置することで、コンビニ以上の設置数拡大に向けた提携などで協力を呼びかけました。企業向けの福利厚生サービスとして、月額2万円で従業員が使い放題になるプランも用意しているとのことで、これによりオフィスに放置される傘を減らすことにも貢献します。

2024年には新たな取り組みも動き出しています。まず、東急不動産ホールディングスとの連携により、渋谷区内のビルにアイカサを設置します。さらに6月後半には、都内の1つの区に限定し、コンビニ以上に傘ポートを設置する計画を実施予定です。まずは都心の区で実証を始め隣の区に波及させ、シェア傘が主流となる社会の実現を目指します。

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