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#GMICTokyo: WeChat Payment(微信支付)が日本に上陸、中国のモバイル決済が変える日本のO2O

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本稿は、7月10日に東京で開催された、GMIC Tokyo 2015 の一部だ。 昨年に引き続き、中国の大手テック企業が組織する GWC(長城会)のカンファレンス GMIC(Global Mobile Internet Conference)の東京イベントが、六本木の東京ミッドタウンで開催された。 10日、Tencent(騰訊)傘下の決済サービス会社 Tenpay(財付通)は、日本を訪問する中国…

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本稿は、7月10日に東京で開催された、GMIC Tokyo 2015 の一部だ。

昨年に引き続き、中国の大手テック企業が組織する GWC(長城会)のカンファレンス GMIC(Global Mobile Internet Conference)の東京イベントが、六本木の東京ミッドタウンで開催された。

10日、Tencent(騰訊)傘下の決済サービス会社 Tenpay(財付通)は、日本を訪問する中国人観光客向けに、メッセージアプリWeChat(微信)を使った決済サービス「WeChat Payment(微信支付)」を導入することを明らかにした。日本でのサービス展開にあたっては、ネットスターズが代理店となり、同社子会社で日本商品の中国向け越境ECを提供するウィ・ジャパンが導入店舗へのO2Oサービスを展開する。WeChat Payment の中国国外の展開としては、日本が韓国に次いで2つ目の市場だ。

今回の WeChat Payment の日本上陸をテーマとしたパネルディスカッションが、GMIC Tokyo の最後にもたれた。このセッションに登壇したのは、

  • ネットスターズ 代表取締役 社長 李剛氏
  • ウィ・ジャパン 執行役員 本間貴成氏
  • 三井住友信託銀行 主管 浅野寿夫氏
  • Zhu Liqiang 氏, Assistant General Manager, Tenpay(財付通 助理総経理 朱立強)

モデレータは、アイティメディアのエグゼクティブプロデューサーである浅井英二氏が務めた。

ネットスターズは2009年の設立以降、中国と日本を結ぶオンラインビジネスを展開しており、その子会社であるウィ・ジャパンは、WeChat 上のオンライン・ショッピングモール「微購物」で日本発の商品を専門的に扱う越境ECコーナー「日本館」を運営している。

三井住友信託銀行の浅野氏は、同行の上海支店長などを歴任した後、中国・南京市と共同で信託会社を設立。現在は、ネットスターズや Tenpay などとともに、クライアントに各種サービスの紹介を行っている。

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WeChat Payment の日本上陸が意味するもの

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Tenpay(財付通) 助理総経理 朱立強氏

パネルの冒頭、浅井氏は Tenpay の朱氏に中国における WeChat や WeChat Payment の現況について説明を求めた。

WeChat のユーザは中国国内に5億人、中国国外に1億人。うち、3分の1にあたる2億人が WeChat Payment を利用している。オンライン決済、アプリ内決済はもちろん、タクシー料金の支払、公共料金の支払、店舗におけるスキャン支払なども可能だ。最後の店舗におけるスキャン支払というのが最も主流で、ユーザが自らのスマートフォンを使って QR コードを表示し、これを店舗がタブレットやスマートフォンを使ってスキャンすることで決済が成立する。(朱氏)

ネットスターズの李氏は来日して19年目になるが、中国人である彼でさえ、月に一度中国へ出張する都度、技術やサービスが進化するスピードに驚かされるのだという。

日本のユーザに話を聞くと、馴染みがないからか QR コードを使った決済サービスに不安を覚える人が多い。(李氏)

QR コードは日本で発明されたものにもかかわらず、その応用範囲は、日本では URL の入力の代替手段などに留まっている事例が多い。中国では、決済のみならず、さまざまなマーケティングにも QR コードが使われることが日常的だ。

ウィ・ジャパンの本間氏は、現在展開する「微購物日本館」の延長線上で、日本の店舗に中国客を誘導する O2O を展開していきたいと語った。

WeChat では、企業や店舗が安価で公式アカウントを作成することができ、顧客はそのアカウントをフォローすることで、WeChat Wi-Fi が使えるようになったり、店舗の販促サービスなどが受け取れるようになったりする。日本を訪問する中国人にとっては、母国で使っているのと同じしくみで日本で買い物ができ、中国に帰国後もオンラインで同じ商品を追加で買うことができたり、店舗からのフォローアップが得られたりするのは大きなメリットだ。(本間氏)

WeChat Payment でできること

三井住友信託銀行 浅井氏
三井住友信託銀行 浅野寿夫氏

三井住友信託銀行の浅野氏によれば、WeChat Payment は決済手段としてのみならず、マーケティングや顧客分析などの点からも大きな意味を持つのだという。

当行のクライアントの中にも、例えば、インバウンド事業部のようなものができて、中国からの訪日客にどのようにサービスを図るか検討しているが、具体的な施策が見つかっていない。どのような人たちが、どのような商品を買っていて、なぜ、そういう状況が生じているのか。お客の属性を把握し、マーケティングの可能性を拡げるという点では、現在ある中では、唯一のソリューションではないだろうか。(浅野氏)

Tenpay  李氏
ネットスターズ 李剛氏

ネットスターズの李氏は、日本の店舗でのサービス事例をビデオを使って説明した。使い方は基本的に中国と変わりないが、WeChat Payment を店頭で使ってくれる店舗には、ネットスターズが決済端末として iPad を配布するのだそうだ。

複数店舗を持つチェーン店では特に、WeChat Payment からの決済情報を一括管理したいというニーズがあるため、本部がリアルタイムで WeChat Payment 経由の売上を把握できるようなクラウドサービスも提供している。将来的には、CRM や POS と連動すれば、より細かい分析も可能になるだろう。(李氏)

〝爆買〟の対象になるには、訪日客のウィッシュリストに載せてもらうこと

ウィ・ジャパン 本間氏
ウィ・ジャパン 本間貴成氏

ウィ・ジャパンの本間氏の説明によれば、中国からの旅行客は、訪日前に「買い物リスト」を作成してからやってくるのだそうだ。そのリストに名前が上がれば、当該の商品は〝爆買〟の対象になるというしくみ。ただ、彼らが求める商品の量は多く、バリエーションも多岐にわたるため、一店舗での買い物で吸収できるものではなく、「微購物日本館」の存在も役に立っているとのこと。

2014年の中国からの訪日客は240万人だったが、今年は6月時点で200万人を超えており、最終的には年間で500万人を超えるようになるだろう。そうすれば、都市のみならず、地方にも中国からの観光客がやってくるようになるだろう。これまでは人気商品ではなかったけど、新たに「買い物リスト」に加えられ、WeChat で拡散され爆買の対象になる商品も増えていくだろう。(本間氏)

WeChat Payment が変える中国人の購買行動

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Tenpay の朱氏は、WeChat Payment のユーザ数の急速な増加、取引金額の急激な上昇について言及。単なる決済手段というよりは、中国人の生活の一部になりつつあることを指摘した。

WeChat Payment が普及して、中国人がどこへ行っても支払ができるようになればいいと思っている。販売者は顧客の情報を把握できるので、商品をどのようにカスタマイズすればいいか、新商品が出たときに、どのような人々が興味を持ったかということができるようになるだろう。

消費者の考えをビジネスに反映させる流れ、いわゆる「C2B(consumer-to-business)」だが、この点においては、Xiaomi(小米)が非常に成功している。O2O についても、online-to-offline だけでなく、offline-to-online に変わりつつある。形あるモノをインターネットに接続する IoT の役割を、WeChat Payment に持たせることができるだろう。(朱氏)

中国では、WeChat がベースとなり、街の中でどのようなレストランがあるか、近くにトイレがあるか、駐車場の情報なども提供しているそうだ。ワンダーグループ(万達集団)では、ショッピングモールでユーザに Wi-Fi 接続を促し、モール内でどのエリアに客が集まっているかを分析しているような事例も存在する。

オンラインもオフラインも、すべてが WeChat を中心に回っていく

たまたま本稿を執筆している現在、筆者は別件で上海に来ているのだが、街の至るところでの買い物は、WeChat Payment で決済できるようになっている。おそらく数年後には、日本からやってきた観光客も、空港で円を人民元に替えたり、銀聯カードを契約したりする必要もなく、WeChat ですべて事が足りるようになるだろう。

オフラインのマーケティングにおいて、日本では POS という大掛かりなしくみと、Ponta カードやTカードに代表される会員プログラムによって顧客の動きを捕捉しているが、中国では、WeChat のオフライン市場への侵食が著しいので、決済からマーケティングまで、日常の消費者行動のすべてを WeChat だけで把握できるようになるだろう。この点においては、Alibaba(阿里巴巴)傘下の AliPay(支付宝)さえも引けを取っているような感さえ覚える。

パネルに参加した李氏のネットスターズは、中国からの訪日客向けに、困ったことがあれば何でも WeChat を使ったメッセージで応対するサービスを提供している。こうして訪日客がストレスなく日本を楽しめる環境を提供し、彼らがより多くの友人達を連れて、日本へのリピーターとなることを願っているのだそうだ。

中国人のみならず、WeChat は日本人の生活や世界観さえ変えてしまうかもしれない。中国訪問時には、筆者も WeChat Payment を使って積極的に滞在を楽しんでみたい。

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#GMICTokyo: 日本・米国・中国・インドに見る、モバイルマーケティングの違いとローカライズの必要性

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本稿は、7月10日に東京で開催された、GMIC Tokyo 2015 の一部だ。 昨年に引き続き、中国の大手テック企業が組織する GWC(長城会)のカンファレンス GMIC(Global Mobile Internet Conference)の東京イベントが、六本木の東京ミッドタウンで開催された。 午後のセッションでは、日本・アメリカ・中国・インドのモバイルマーケティングを専門とする企業のエグゼク…

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本稿は、7月10日に東京で開催された、GMIC Tokyo 2015 の一部だ。

昨年に引き続き、中国の大手テック企業が組織する GWC(長城会)のカンファレンス GMIC(Global Mobile Internet Conference)の東京イベントが、六本木の東京ミッドタウンで開催された。

午後のセッションでは、日本・アメリカ・中国・インドのモバイルマーケティングを専門とする企業のエグゼクティブを招いて、各国のモバイル市場におけるマーケティング手法の特性や違いについて議論するパネル・ディスカッションが持たれた。

このパネルの登壇者は、次の方々だ。

  • CyberZ 取締役 青村陽介氏(日本)
  • btrax CEO Brandon Hill 氏(アメリカ)
  • AdMaster COO Calvin Chan 氏(中国)
  • Vserv 共同創業者兼CEO Dippak Khurana 氏(インド)

なお、このセッションは、ヘイローの代表取締役である梅澤亮氏がモデレータを務めた。

各国各様、モバイル市場の違い

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Brandon Hill 氏

4人のパネリストはまず、それぞれの市場の特徴を説明することから話を始めた。Hill 氏は、アメリカのモバイル人口は1億8,750万人で普及率は80%と非常に高いことを指摘。青村氏は、日本のユーザは熱しやすく冷めやすいので、あるモバイルアプリを投入してから3ヶ月以内に6割のユーザが飽きてしまうが、そのうち6割は後日戻ってくるなどユーザ行動が非常に繊細であるため、日本ではローカライズされたマーケティング活動が必要だと説明した。Khurana 氏によれば、インドでは2億1,300万人のモバイルユーザがいるが、そのうちの8割が男性。Android がスマートフォンの9割以上を占めていることもこの市場を特徴づけている。

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AdMaster の Chan 氏は、POES(Paid Media、Owned Media、Earned Media、Sales / EC Platform)という、メディアやプラットフォームを串刺しに横断してパフォーマンスを計測する必要性を指摘した。中国の三大ネット企業である BAT(Baidu=百度、Alibaba=阿里巴巴、Tencent=騰訊)などは、さまざまなメディアやプラットフォームを持つようになっており、企業がモバイルやネットマーケティングをする上では、それらを横断して評価する必要が生じるからだ。また、例えば、北京単体でも2,500万人が住んでいるため、北京向け、上海向け、深圳向けなど、地域特化版のメディアやプラットフォームが作られるのもトレンドであると話した。

アプリのマーケティングをどのようにやるか

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Calvin Chan 氏

Hill 氏によれば、シリコンバレーでは多くのマーケティング手法が生まれており、それらをアプリの種類によって使い分けたり、組み合わせたりする方法が主流などだと言う。代表的な方法としては、アプリのディスカバリーツール(目的に応じてアプリが探せるアプリ)への掲出や、Google や Facebook などでのキャンペーンを活用するものだ。

Chan 氏は、中国でのコンドーム商品「Durex Baby」のマーケティング事例を披露した。コンドームというのは、なかなかパブリックな場所で議論するのは憚られる話題であるため、WeChat(微信)などのソーシャルメディアを使ったマーケティングが非常に都合よいのだという。ソーシャルメディア上で KOL(Key Opinion Leader、ソーシャルメディアで影響力のある人)のアカウント8つを使って、1千万インプレッションのマーケティングを作り出したとのことだ。

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Khurana 氏は、インド独特のマーケティング手法である不在着信によるマーケティング事例を説明した。Vserv が手がけたコーヒー用クリーム「Nestle Everyday」のマーケティングでは、無料お試し品がもらえるキャンペーンを展開。約81万人に広告がリーチし、2.6万人がその広告をクリック。そのうち、2,636人が電話をかけてきた。広告の CTR(クリックスルーレート)は3.17%で、そのうち、電話をかけてきたのは約1割のユーザということになる。不在着信によるマーケティングの詳細は、以下の ZipDial に関する記事が詳しい。

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Khurana 氏は、他にもインドのクラシファイド広告サービス Quikr やプリペイドモバイル向けのトップアップサービス FreeCharge の事例も披露。さまざまな業態において、不在着信マーケティングが使われるようにあるのだという。モデレータの梅澤氏は、アメリカでもこのようなマーケティング手法が機能するかどうかを Hill 氏に尋ねたが、アメリカではおそらく受け入れられないだろう、という答えだった。

ユーザ行動の変化

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Dippak Khurana 氏

時の変化に伴い、モバイルを使ったユーザ行動にも変化が現れている。アメリカでは、モバイル上でクレジットカード番号を入力するのは面倒であり、他のさまざまな新しい決済方法が生まれていることを Hill 氏が指摘。ApplePay、Snapchat Pay、Square、ビットコインなど多くの決済手段が、Eコマースの売上アップに貢献していることを指摘した。

中国では、毎年11月11日の独身の日(光棍節)に、Eコマースサイトが年間最大の売上を上げることで有名だ。Chan 氏によれば、中国最大のEコマース・プラットフォーム Alibaba(阿里巴巴)」では、2013年では15.3%に対し、2014年では42.6%がモバイルで取引。その成長率は実に3.5倍だ。モバイルを使うかどうかは世代によっても異なり、80后(パーリンホウ)の世代の32%に対し、90后(ジョウリンホウ)の世代では54%が(PCなどではなく)モバイルを使って Eコマースを楽しんでいると語った。

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インドでは、信用に対する問題から、クレジットカードあまり広く使われていない。Khurana 氏によれば、Eコマースの70%がキャッシュ・オン・デリバリで決済されているとのこと。彼は、モバイルを使ったコマースの浸透は商品分野によって著しく異なり、例えば、電子製品などであれば、全取引の35〜40%がモバイルで行われていると述べた。

青野氏は、日本のEコマースのトレンドとして、C2C(個人間取引)が台頭してきていることを指摘。売り手が企業ではなく、非常に数の多い個人になるため、マーケティングに必要なデータをリアルタイムで取得する必要が生じ、キャンペーンを展開するのは難しくなっていると語った。

モバイルマーケティングにおける次のトレンド

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青村陽介氏

2015年の日本のスタートアップ・シーンは、アメリカと並んで動画メディアが席巻している。このことからも、日本では、モバイルにおいても動画を使ったマーケティングがトレンドになるだろう、というのが青野氏の見立てだ。

インドの Khurana 氏は、これまではマーケティングにおいてもモバイルファーストがよく見られる戦略だったが、これからはデータファーストになるだろうと予想。どのようなユーザが、どのようにして商品を購入しているかのデータが集められるようになり、より正確な情報を元にしたマーケティングができるようになるだろう、と指摘した。中国の Chan 氏も Khurana 氏の意見に賛同し、データをもとに誰が何を買うか、より正確に予想できる技術が確立され、それに基づいたマーケティングが可能にあるだろうと語った。

Hill 氏は、毎週のように新しいデバイスが発表されるシリコンバレーの特性を背景に、新しいビジネスに合った新しい広告ビジネスが生まれてくるだろうと予想。数年後には、自動運転の乗用車が実用化されることで、人は移動中に運転以外のことができるようになるので、車内空間がEコマースをはじめとする新たなビジネス機会に変化するだろうと述べた。

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