リクルート「TECH LAB PAAK」のデモデイが開催、第5期参加チームが半年の成果を披露

Masaru IKEDA by Masaru IKEDA on 2016.9.28

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デモデイを記念して作られたケーキ。ネットワーキングパーティで参加者に供された。

リクルートホールディングス(東証:6098。以下、リクルートと略す)が東京・渋谷で展開するスタートアップアクセラレータ「TECH LAB PAAK(テック・ラボ・パーク)」は27日、第5期のデモデイを開催した。

プログラムへの参加チームは、開発するサービスの成熟度などに応じて「コミュニティ会員」と「プロジェクト会員」に大別されている。コミュニティ会員5チーム、プロジェクト会員3チーム(うち、1チームは欠席)、さらに、今回のバッチから新設されたハードウェア会員6チームが、プログラム参加からの半年間の成果を披露した。

入賞したチームの顔ぶれを中心に、TECH LAB PAAK からどのようなサービスが生まれたか、生まれようとしているかをみてみたい。なお、デモデイのピッチにおいて、入賞者の審査を行ったのは次の方々だ。

  • TechCrunch Japan 編集長 西村賢氏
  • 日本マイクロソフト エバンジェリスト 砂金信一郎氏
  • アンカースター Founder & CEO 児玉太郎氏
  • 500 Startups Japan マネージングパートナー 澤山陽平氏
  • リクルートホールディングスR&D本部 Media Technology Lab. 室長 麻生要一氏

【TECH LAB PAAK 賞】空中盆栽 by 星人(ほしんちゅう)空中盆栽園

副賞:Amazon ギフトカード3万円分

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星人(ほしんちゅう)の空中盆栽は商用電源で土台に磁力を発生させ、その上に磁石を内蔵した苔の球体を浮かべる電子オブジェ。盆栽を星に見立て、この盆栽に願いを唱えてもらう、というコンセプトのもので作られている。今年の1月21日から3月1日まで Kickstarter 上でクラウドファンディングを実施し、66カ国の3,784名から総額843,743ドルを調達した。先週23日から、初回ロット3,500個の出荷を開始している。

この空中盆栽のプロジェクトをリードするのは、星人(ほしんちゅう)代表の星ヒカル氏だ。彼は、本名の廣橋博仁氏としても、足型と靴の3Dスキャンによるバーチャルフィッティング・サービス「FlickFit」で、TECH LAB PAAK 第4期デモデイのマイクロソフト賞を受賞している。この半年間のプログラム参加中の経験として、星氏は、アメリカの会社から技術特許の侵害の可能性を追及され特許事務所に多額の費用支払を余儀なくされたこと、アメリカ内国歳入庁からアメリカ国内の税金に支払うように言われたこと、為替相場の変動により営業利益を損失した苦労を吐露しながらも、商品出荷に漕ぎ着けた喜びを隠しきれなかった。

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空中盆栽は、日本国内6箇所と中国国内3箇所の拠点で製造されており、これら複数の拠点のマネージメントにも労を要したようだが、リクルートのハードウェアスタートアップ向け製造支援サービス「BRAIN PORTAL」を利用して、可能な限りマネージメントコストを圧縮している。また、Kickstarter とのやりとりを通じて運用ノウハウが溜まったらしく、今後、Kickstarter でクラウドファンディングを行いたいスタートアップの力になれる、と星氏は語っていた。

【500 Startups Japan 賞】10Hz by MAISIN&CO.

副賞:神戸牛リブロースすき焼きセット

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福岡発のスタートアップ MAISIN&CO. が開発した 10Hz は、ビジネスパーソンが多くの時間を費やしている、会議の効率化を目的としたプラットフォームだ。事前の参加者への参加要請、リマインダー発信のほか、用意されたフォームに必要項目を入力するだけで、アジェンダや議事録の作成が半自動化でき、それらの共有も容易に行える。現在、クローズドβ版への参加ユーザを募集している。

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MAISON&CO. は 500 Startups が今年、神戸市と共同で運営した Pre-Accelerator Kobe に採択され、500 Startups による6週間のアクセラレータプログラムに参加。日本の Viling Venture Partners、シンガポールの Slogan Coent、韓国の BonAngels Venture Partners(본엔젤스벤처파트너스)から資金調達を実施している(調達額等非開示)。10hz に先立ち、MAISON&CO. がオープンソースとしてリリースしている、プログラマ向けメモツール「Boostnote」は、172カ国で使われているのだそうだ。

【マイクロソフト賞】Smooz by Astool

副賞:ズワイガニ姿ボイルセット

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Astool は、以前は楽天で Viber のプロダクトマネジメントに従事し、これまでにテニスプレーヤー向けの AppleWatch アプリ「TennisCore」の作者として紹介したことのある加藤雄一氏が設立したスタートアップだ。

Astool が新たに開発したのは、iOS で利用可能な〝芋づる式ウェブブラウザ〟の「Smooz(スムーズ)」。今見ているウェブ画面の内容からから、本文抽出・形態素解析・ランクづけ・関連語抽出を行い、次にユーザが欲しているだろう検索キーワードをリコメンドする機能や、ソーシャルメディアの反応を見て、ブラウザがユーザにブックマークを提案するスマートブックマークの機能を持つ。

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2016年2月に創業した AsTool は、8月に Skyland Ventures、エンジェル投資家でペロリ代表の中川綾太郎氏、ユーザローカル代表の伊藤将雄氏から、1億円のバリュエーションで総額1,500万円を資金調達している。26日のローンチから1日間でダウンロード件数6,000件を達成しており、 OS ネイティブでないデスクトップブラウザであるにもかかわらず、FireFox が日本国内でシェア12%を獲得していることを念頭に、Smooz はモバイルブラウザにおけるシェア12%の獲得を目指したいとしている。

【TechCrunch Japan 賞】HR Brain by Mosquitone

副賞:AppleStore ギフトカード 3万円分

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Mosquitone は、11月中旬のβ版公開に向けて、人事評価や考課にあたっての意思決定を支援するプラットフォーム「HR Brain」を開発中だ。企業においては、人事評価や考課を目的として、管理職や上役になればなるほど、期の頭や末に多数の部下から大量の目標シートが届けられる。Mosquitone の共同創業者で代表取締役の堀浩輝氏は、以前、サイバーエージェントで Ameba の事業部長を務めていた経験から、この目標シートを使った運用の煩雑さを身を持って経験していた。

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紙やファイルベースの目標シートは、過去の目標シートと時系列で連なって管理されているわけではないため、過去の情報と照らし合わせながら、時系列で文脈を追いながら部下と面談することが難しい、情報が十分に可視化されていない、などの課題がある。SaaS 化によりこれらの問題を解決し、OKR(Objective and Key Result=目標と主な結果)など、さまざま手法に応じた評価目標シートが使えるようにしたのが「HR Brain」だ。

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同社が標榜する位置づけは「AI人事」。目標シートへのアクセスを便利にする一方、社内での役職や所属に応じた閲覧権限も細かく設定でき、部下メンバーの異動や組織図の変更にも柔軟に対応する。堀氏の説明では、日本の内外ともに、現場ニーズをツールに反映させた競合サービスは皆無とのことだったが、TechCrunch Japan 賞を授与した西村編集長は、TechCrunch を運営する AOL の投資部門が投資している Betterworks をベンチマークするよう進言していた。

<参考記事>

【アンカースター賞】Lifi by aba

副賞:焼肉トラジ お食事券 3万円分

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TECH LAB PAAK の第3期デモデイで TechCrunch Japan 賞を受賞した Lifilm が「Lifi」と名を変えて登場。Lifi は、介護を必要とする高齢者や障害者向けに設計された、排泄を検知するセンサーデバイス。寝たきりで介護を受けている人はオムツをしていることが多いが、介護者は被介護者の排泄タイミングがわからないため、必要随時のオムツ交換ができず、排泄の有無にかかわらず定時交換で対応している。定時交換においては概ね2割の確率で排泄されておらず(空振り)、この時間ロスは介護者にとって負担の大きいものになっている。

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Lifi は、空気清浄機などで使われている、臭いや気体中の成分変化によって電気抵抗が変化する安価なセンサーを活用、独自のアルゴリズムで排泄の有無を検知し、介護者にタブレットなどで通知するしくみを開発した。センサーを要介護者の寝床に敷くことで、介護者は被介護者のオムツの中を確認することなく、排尿や排便後の必要なタイミングでオムツの交換が可能になる。

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介護施設における実証テストの結果、夜間のオムツからの便漏れの防止や、タイミングをはかって排便誘導ができたなど、テストに参加した介護者からはポジティブなフィードバックが得られているとのこと。現在は、開発にあたって提携関係にあるメーカーと量産に向けての情報共有を進めており、来春にも本格リリースができる見込みだ。

【オーディエンス賞】まごチャンネル by チカク

副賞:TECH LAB PAAK プロジェクト会員権(半年入居権)

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核家族化が進んだ社会においても、世代を超えて円滑なコミュニケーションができる〝デジタル時代の二世帯住宅〟を標榜し開発された「まごチャンネル」は、THE BRIDGE でも何度か取り上げているので、すでにプリオーダーを入れている読者も少なくないだろう。デジタル機器の操作に不慣れな祖父母が、離れて住む孫の成長の姿を容易に動画で楽しめる環境を提供する。

祖父母宅に設置する、家の形をした「まごチャンネル」のデバイスには、データ通信用に SIM カード(Soracom のピッチなどでも、利用事例として頻繁に引用されている)が内蔵されており、HDMI ケーブルでテレビと接続することができる。離れて住む息子や娘が、「まごチャンネル」のモバイルアプリを使って孫の動画を撮影、それをアップロードすると、祖父母宅のデバイスに動画の着信を知らせるサインが光り、祖父母はテレビを見るのと同じ感覚で、孫の動画が見られるという体験を届ける。

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「まごチャンネル」開発元のチカクは、昨年クラウドファンディングで資金調達に成功し、この1年あまりを商品開発に費やしてきたが、この半年間の大きな出来事として、同社代表取締役の梶原健司氏は、とにもかくにも無事に出荷に漕ぎ着けたことが最も大きな出来事だったと述べ、喜びもひとしおのようだった。今年の6月には伊勢丹での申込受付を実施しているが、これと同様に、梶原氏はブランド各社との提携を強化し、販路拡大に注力したいと今後の抱負を語った。


なお、TECH LAB PAAK では第6期の入居が開始されており、第7期の会員募集はまもなく開始されるようだ。また、TECH LAB PAAK では、イノベーション特化型の戦略コンサルティングファームであるアルティテュードと提携、同社がシリコンバレーのパロアルトで展開するイノベーション施設「Innovation Factory」との会員相互乗り入れ運用を開始した。これにより、今後は TECH LAB PAAK の会員スタートアップがシリコンバレー訪問時には Innovation Factory の、反対に Innovation Factory 会員スタートアップが東京訪問時には TECH LAB PAAK の施設利用が可能になる。

この提携の背景には、TECH LAB PAAK が育成対象のスタートアップを積極的にシリコンバレーに送出したい意図があるようだ。今回のデモデイの際にも、ピッチセッションに先立って、シリコンバレーに造詣の深い3人——ニフティの河原あず氏、500 Startups Japan の澤山陽平氏、トーマツベンチャーサポートの木村将之氏——を交えたパネルディスカッションが持たれ、現地のスタートアップシーンに関する興味深いインサイトが聴衆に共有された。

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Masaru IKEDA

Masaru IKEDA

1973年大阪生まれ。インターネット黎明期から、シンクタンクの依頼を受けて、シリコンバレーやアジアでIT企業の調査を開始。各種システム構築、ニッポン放送のラジオ・ネット連動番組の技術アドバイザー、VCのデューデリジェンスに従事。SI、コンサルティング会社などを設立。Startup Digest(東京版)キュレータ。

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