インディーズモバイルゲームの夢を追い求めるトルコ人夫妻——2人の作品「Hocus」は、まるでエッシャーの〝だまし絵〟

by Dean Takahashi Dean Takahashi on 2017.2.28

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(上)GameBra.in の Yunus Ayyildiz 氏と妻の Kubra Sezer Ayyildiz 氏
Image Credit: Dean Takahashi

私は昔からおとぎ話が好きだった。誰でもどこでもゲームを作ることができることを教えてくれた。Casual Connect Europe 開催後のベルリンの通りを歩いていると、ある夫婦に出会った。その夫妻のおかげで、そのゲームに対する考え方はさらに強固なものになった。

それは偶然の巡り合わせだった。私はベルリン市内をまわるツアーに参加するために、二階建てバスのチケットを買った。ちょうど私の前には、同じく観光をしていた夫妻が並んでいた。しかし、私たちがツアーバスに乗り込もうとすると、運転手は私たちに向かって「もう受付は終わったよ」と言い、それでその日のツアー受付は終了してしまった。

夫の方が、私のつけていた Casual Connect のバッジに気付き、そのバッジについて質問してきた。そして、彼は自分の名前が Yunus Ayyildiz であること、妻であり同僚でもある Kubra Sezer Ayyildiz 氏と共にベルリンを訪れていることを教えてくれた。彼らは GameBra.in という名前のインディーズモバイルゲームスタジオを立ち上げ、彼らのゲーム「Hocus」がベストモバイルゲームの一つとして Casual Connect にノミネートされたらしく、そのためにベルリンに来たのだという。このタイトルは Android 版iOS 版両方でダウンロード可能だ。彼らのタイトルには他にも、「Rop」と「Voi」というものがある。いずれもシンプルなパズルゲームだ。

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(上)ベルリンのチェックポイント・チャーリー
Image Credit: Dean Takahashi

冷戦時に東西ベルリンが交わる場所にあった交差点、チェックポイント・チャーリーまで一緒に歩いた。かつて、アメリカの警備員とロシアの警備員が対峙していた場所で、そこから戦争の火種がいつ生まれてもおかしくない状況だった。冷戦を象徴するような場所だ。私は、ベルリンの壁の残骸と思われる落書きだらけの石を指差した。 1961年のベルリン危機の際には、ここでアメリカの戦車が反対側にいるロシアの戦車に照準を合わせていた。

寒かったので、スターバックスに入り、コーヒーを飲んだ。夫妻はトルコのアンカラ出身で、Hocus はアプリストアにある彼らのゲームのうちの1つだと話してくれた。Hocus は550万ダウンロードを超える大ヒットとなった。

このゲームは Adobe Flash で構築されており、白黒の画面上の幾何学的な図形の上で赤いキューブを転がしていくというシンプルなものだ。Yunus Ayyildiz 氏は、芸術家 M.C.エッシャー氏からインスピレーションを受けてそのパズルゲームを制作したのだ、とブロークンイングリッシュで話してくれた。私にはそれが素敵に思えた。英語をほとんど話すことのできない夫妻でも、ゲームという普遍的な言語を通してコミュニケーションをとることができるのだ。

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(上)M.C.エッシャー「相対性」
Image Credit: The M.C. Escher Company

カリフォルニア大学バークレー校の寮で過ごした何十年も前のことを思い返した。当時、エッシャーの「相対性」のポスターを壁に飾っていた。Yunis 氏はスマートフォンで Hocus を私に見せ、そのゲームが人々の間で広まっているのがどれほど嬉しいか語ってくれた。

Ayyildiz 夫妻は長年一緒にゲームを作ってきた。Yunus Ayyildiz 氏は、アンカラにある Orta Dogu Teknik Universitesi(中東工科大学)でゲームデザインを学んだ。2人はアンカラで出会って結婚し、現在はコワーキングスペースで多くのゲーム開発者と共に新しいゲームの制作を行っている。彼らの会社「Gamebra.in」の活動は昨年の7月に始まった。

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(上)Gamebra.in Yunus Ayyildiz氏(Casual Connect Europeにて)
Image Credit: Casual Connect

Hocus は iOS 版で330万回、Android 版で220万回ダウンロードされており、米国とインドで特に人気だ。

Sezer Ayyildiz 氏は、ゲーム制作を仕事にすることについて「これが私たちの夢だったんです」と語った。

会社を大企業にしたいと考えているのか Yunus 氏に尋ねてみたが、彼はそんなことは考えていないらしい。彼はアーティストでいることを望んでおり、自分の独創性を阻害しない環境でゲーム制作をしたいと考えているという。

Hocus の考案にかかった期間は4〜5ヶ月ほどだが、開発にやり直しはつきもので、正しく機能するまでにさらに8ヶ月ほどかかった。

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(上)Gamebra.in Kubra Sezer Ayyildiz 氏(Casual Connect Europe にて)
Image Credit: Gamebra.in

夫妻は、Game Developers Conference に参加するため、2月後半にはサンフランシスコに行くつもりだったと話していた。しかし、彼らはその予定をキャンセルしなければならなかった。

Sezer Ayyildiz 氏はビザの申請が2回却下されたと話す。ベルリンを訪れるときには何の問題もなく、自分たちのゲームを携えて独立系ゲームコンテストに参加することができたのにだ。 私たちがチェックポイント・チャーリーのすぐ近くでベルリンの壁について話していると、「トランプは壁を作ろうとしている」と言って Sezer Ayyildiz 氏は頭を横に振った。

私は彼らの幸運を願った。そして、すべてのアメリカ人がトランプと同じ考え方ではないことを彼らに伝えた。それから彼らと別れ、自分のホテルに戻った。きっと彼らはベルリンでの旅行を楽しんだはずだ。 Yunus Ayyildiz 氏は「Pocus」という新しいゲームがあると言っていた。おそらくそのうちアメリカでもお目にかかれるだろう。

開示情報:ベルリンまでの旅費は Casual Connect が負担してくれたが、当社の取材内容は客観性が保たれている。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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