世界の中心にある島、シンガポールが持つ可能性と未来

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【翻訳 by Conyac】 【原文】

SameerはベンチャーキャピタルファンドであるAugust Capital Partnersの共同経営者だ。コンシューマープロダクト、サービス業の初期段階に事業を注力している。ツイッターアカウント@sameernarulaでフォローしてほしい。


14世紀、パレメスワラ王によって建国されたシンガプラ—シンガポールが、1800年代にトーマス・ラッフルズ準知事に寄って世界的な商業と文化の交易地となってから数世紀が経つ。

私のこの街の最初の頃の思い出は1980年後半にさかのぼる。当時この国はベビーブーマーの時代を迎えており、若い世代はHBDの高層ビルに住居を構え、セントーサのような場所に輝かしい建造物が立てられていた。シンガポールの若者は、この国の輝く未来を見据えていた。

およそ25年の月日が過ぎて、シンガポールがこのアジアの地でうまく発展してきたことを考えるととても嬉しくなる。シンガポール人は世界に対して、天然資源も軍事力もない小さな多民族国家が、人間の努力と先見性というリーダーシップだけで成し遂げたことを見せつけている。

シンガポールはこの物語の中で今、重要な局面に立っていると思う。西側諸国のように人口の高齢化に伴いゆっくりと勢いが落ちていくか、あるいは築き上げてきた社会的、経済的なインフラを活用して、新しく自信にあふれ、経済的に活力のあるアジアの象徴になるか。

機運の集中

最近のエコノミストの書物によると、世界は3つの社会的影響[1]、英語圏、インド文化圏と漢字文化圏に分割されてきている。Pankaj Ghemawatによる研究「なぜ世界はフラットではないのか」[2]から引用すると、共通語を持つ国同士の貿易は、そういった繋がりのないまったく違う国同士の貿易よりも42%多く、過去に帝国的なつながりがあった国同士では188%も多いという。この記事では、種族間の不朽のつながりに言及しており、これが現在の新アジア世紀ともいうべきグローバル化された世界の文化、経済の未来をどのように形作っていくだろうか、と括っている。

行政上の強みからみると、シンガポールは独特の文化であり、言語上でも歴史的なものも3つの文化圏すべてに関連している。これまでに経済的に栄えてきた中心地であるロンドン、ニューヨーク、ボンベイなど3つの文化圏で別れた都市と同じような構成要素をつくる状況に今現在ある。

近年訪れているであろうさらなるグローバルビジネスにおいて、シンガポールは確実に避けられない環境にいると思っている。それはシンガポールが”故郷”だろうが移民だろうがすべてにとって未解決の問題である。

最近、シンガポールとASEAN地域のスタートアップのための集まりであるStartup Asiaに出席する機会があった。私はこれまで出会ってきた、インド人、マレー人、日本人、インドネシア人、アメリカ人などの起業家やキーとなるチームメンバーのさまざまな会社を見ると、起業家がどこで生まれているか、国際的な特徴がはっきりわかる。

シンガポール滞在中に出会った25以上の会社をベースに考えると、生粋のシンガポール人のチームがもつ強いWeb2.0傾向は際立っているように見えた。その一方、もっと国際的なメンバーのチームは、ヘルスケア、安全面、教育、環境テクノロジーなどの分野で、地域的、またグローバルな消費者を求めようと深く追求する姿勢が見えたように思う。これは驚くようなことではない。

アジアで一番空気がきれいで、犯罪率もきわめて低く、無線タクシーもすぐに来てくれるような国にいると、目に見えて解決しないといけないような問題はないのだ。周りの地域から、さまざまな場面で影響を与え合えるようなアイデアの交流がある場合に、よりたくましく、興味深いビジネスフォーカスが会社の中に生まれるように思う。

SPRING Seeds、IDA(国際開発協会)のInfocommファンド、多くのインキュベーターといった政府の投資プログラムに加え、シンガポールでは活発な動きを見せるエンジェル投資家、ベンチャーキャピタル、PEインベスターのエコシステムなどがある。こういった投資家は、その地域や海外市場をターゲットにしている現地のスタートアップにより多く投資している。LPインベスターでは、クリーンなコーポレートガバナンスに注目し、エグジットする可能性がありシンガポールから拠点を移すポートフォリオ企業になるといった流れをサポートする動きがある。

人材の才能の面においては、SMUやNUS,NTUのような尊敬される地元の機関からの卒業生に、インドやオーストラリアからトップの卒業生が参加することで競争力のある給与を確実にしている。欧米市場や中国の政治的課題、インドの不確実性などで長引くスローダウンはまた、シンガポールの知性を加速させている。この旅行によって、アジア市場を活用するために西側からシンガポールに移転した成熟した起業家を少なくとも4人出会った。

乗り越えるべき障害

よくあることだが、こういったことには犠牲を払ってきた。民族間格差の増大、何の対処もしないことが多い政府、最近ではスキルを持った移民の雇い止めといったことがあり、シンガポールには取り組まなければならない難しい問題もある。高齢化問題や上海、ドバイなどの都市との地域間競争の増大などが加わり、国の成功は今までのようには簡単につかめなくなっている。

近年みられる、特定の国からの移住や広報活動の制限は、ここ十年のあいだに勢いを増してきた経済の推進力を弱めるリスクをもたらした。シンガポールがこの時点で避けなければならないことは、この地でグローバルにビジネスを築かんとする投資家や実業家に対しての制限を設けることによって、西欧諸国同様に経済停滞に陥ることである。

宿命づけられたシンガポールの挑戦

多くの富と整った経済環境が、政治的な差異を縮小化する働きがあることから、シンガポールはアジアの企業活動の中心となりうるポテンシャルを持っている。この国の整った行政や、最新のインフラ、また国際的で多言語を理解する人材が豊富な点は、地域規模から世界規模の様々なビジネスを志す実業家たちにとって非常に好都合なのである。

IFCが毎年行う「ビジネスがしやすい環境」に関する調査では、シンガポールがトップとなっている。同国副首相のTeo Chee Hean氏によれば、2006年以降毎年5000を超える数のIT企業が新たに登録を行っているという。また彼の明らかにした所によればそれらのうち61%が3年以上継続して経営出来ているとのこと。これは驚くべき数字である。

混沌は創造性を育むとよく言われる。アジア全体が創造性の宝庫となることには疑いの余地がなく、実際そうである。しかしながら、しばしば見過ごされるのは創造性も適切なサポートがなければ失敗に陥るということだ。創造性が実際の形を成すまで、育まれ守られる必要があるのである。

3つの異なる社会経済的グループが共存するシンガポールは、偉大なアイデアがビジネスを生み出すのに最適な環境であるようだ。この小さな島が、史上記録的なチャンスをものにし、偉大なるアイデアとビジネスのるつぼとなれるか、注目したい。

[1]Schumpeter: The power of tribes | The Economist
[2]Why the World Isn’t Flat – By Pankaj Ghemawat | Foreign Policy
[3]Singapore, most favored by highly educated and young immigrants | Company Setup Portal
[4]Singapore Permanent Residency Becoming More Elusive, Renewals Getting Tighter
[5]Ranking of economies – Doing Business – World Bank Group
[6]TechVenture 2011: 5,000 new tech startups registered in Singapore every year | Evan Hugh

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

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