新興のECは安全か?ーStores.jpとBASEにトラブル対策を聞く

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Photo by eye of einstein

インスタントにオンラインショップを開店できる新興のECが好調だ。注目株のStores.jpBASEはいずれも毎月数千店舗のページを開設し、新たなECの可能性を生み出そうとしている。一方で取材中、いくつかの場所で私は彼らに起こりうるであろうトラブルの話題を耳にした。いわゆる個人間取引にまつわる詐欺や商品不着といった問題の可能性だ。

まず、前提としてそもそもネットショップというのは開店するのに審査が必要だった。もう少し具体的に説明すると、クレジットカードなどの決済を導入する場合、この審査に数週間から1カ月単位での審査が必要だったのだ。

例えばショッピングカートASPを展開するMakeShopのFAQには「決済代行サービスでクレジットカードを利用するまで、審査に約1カ月かかる場合がある」と記載している。これは当然、決済代行を利用する各店舗それぞれに対して実施される。以前、こちらの記事でも書いたが、クレジットカード決済は審査のハードルが高く、結果としてそれが信用情報に繋がっていた側面もあった。

Stores.jpやBASEで店舗を開店するとまず気が付くのは、この審査を経ないですぐにクレジットカード決済(BASEの場合はPaypal決済)が利用可能になる。つまり、各店舗が審査を受けるのではなく、プラットフォーマー側が決済代行の審査をまとめて受けているのだ。例えばクレジットカードの明細書には販売店舗の名前ではなく、それぞれのプラットフォーマーの名称が記載されることになる。これが今までにない開店スピードを生み出し、同時に従来の決済審査をクリアしていない不安視にも繋がっている。

そこでこの懸念点について成長を続ける二社にいくつかの質問を投げてみた。

商品が届かない場合などのトラブルが実際に発生しているか

特に銀行振込の場合は間にプラットフォーマーが入り込めない場合があるので、トラブルになりやすい。

この件に関しては両社とも「トラブルの報告は今のところない」としている。ただ、両社ともに可能性がゼロではないとも回答していた。

ブラケット代表取締役CEOの光本勇介氏は個人間カーシェアリングなどのC2Cプラットフォームを3年以上運営している経験から、トラブルになりそうなポイントや回避の方法は蓄積しているとし、「重要なのはトラブルが起きる可能性をいかに少なくするか、発生した場合に出来る範囲でサポートできるか」にかかっていると回答している。

問題が発生した場合、現時点でどういう対応をするのか

ここも両社ともに前提とするのは「個人間取引については当事者間での解決」だ。光本氏も先行するヤフオク!BUYMA(※リンク先は3月27日時点の両社の規約該当箇所)といったC2Cマーケットプレースを引き合いに同様のスタンスを取っていると回答している。

BASEについては代表取締役の鶴岡裕太氏が「クレジットカード決済の場合、一度プラットフォーマー側が間に入っているので返金などの対応が可能」としつつも、やはり必要最低限のサポート以外は個人間取引に介入しないとした。

つまり、あくまで何かが起こった際は当事者間解決が優先される。

近い将来に考えている対策について

しかし、これでは全くプラットフォーム側には責任がないことになってしまう。完全な個人間取引であればやり取りする側も注意するだろうが、このサービスは若干違う。極めて楽天やカートASPなどの「EC」に近い「C2C」サービスなのだ。そして両社ともその点はよく理解していて、問題発生時の対応方法にどういうアイデアがあるのか、検討中のものを答えてくれた。

まず、Stores.jpの光本氏は前述のスタンスの上で、「安全で安心できるサービスを提供しなければ中長期の成長はない」と、三つの対応策を検討しているとした。まず、本人確認書類の提出による、実際の店舗確認だ。ここにはカーシェアリングサービスで培った経験があり、実証できるとしている。

次に万が一トラブルになった場合、補償額の一部を補填する保証制度も視野にいれている。これはやはりヤフオク!やBUYMAなどでも実施されている制度で、こちらもカーシェアリングサービスで導入した実績がある。これに加えてサイト内パトロールを強化するという未然の事故防止にも務めるとした。

一方BASEはというと、やはり同じくプラットフォーマーへの責任が全くないと言い続けることはできないと話す。検討中の対応策については、売主に対してレビューができる「ヤフオク評価」のような機能の導入検討と「クレジット決済(Paypal)以外の代引きや銀行振込時に、直接取引させるのではなく間に入ることでトラブルを未然に防ぎたい」(鶴岡氏)とした。ちなみに後者については決済代行会社と既に協議に入っているとも話してくれた。

新興のECは安全なのか

さて、いかがだっただろうか。正直この手のトラブルは起こらない方がおかしい。たとえ悪意がなかったとしても、掲載している商品と届いた商品が違えば何かの火種は生まれるだろう。Stores.jpはその点、サービス運営の経験が豊富で具体的な対策を考えていた印象だ。

BASEも事業経験豊富な家入一真氏が取締役としても参加しており、彼に話を聞いてもやはりこのトラブルへの対応は検討事項に入っていた。両社とも悪意のあるトラブルに対しては誠意を持って対応してくれると考えてよいだろう。運営者の顔が見えているのは一つ安心できる材料でもある。

数年前、北米にBlippyというサービスがあった。クレジットカードで購入したものを共有して新しい商品を発見しよう、というソーシャルサービスだ。瞬く間にユーザー数を伸ばし、1300万ドル近くの調達をして一気にスケールーー、というタイミングで彼らはユーザーのクレジットカード番号をオンライン上にバラまいてしまった。その後の顛末は検索すればすぐに見つかる。

スタートアップだから、という理由はそこに存在しない。ちょっとしたことでサービスは終焉を迎える。特にECはマーケットがデカい。300兆とも130兆ともいわれる小売り、卸売り市場に対してECはまだたったの8.5兆円規模だ。だからこそ、急激な成長をみせる新興のECは足下をすくわれるような出来事が起こる前に、先回りした対応を期待したいと思う。

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