教師と教員志望者のためのSNS「SENSEI NOTE」が、1年以上のベータテストを経て正式ローンチ

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2014.3.24

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SENSEI NOTE についての記事を初めて書いたのは、もう1年以上前のことだ。創業者の浅谷治希氏の話を聞いたときには、彼の勢いに圧倒されたのを今でも克明に覚えている。

その後、教育関連系のスタートアップ・イベントなどで何度か浅谷氏のピッチを目にしていたが、大きなニュースを聞くことがなかったので、ブートストラップ的に地道な活動をしているのだろう、と勝手に憶測していた。

その SENSEI NOTE が今日、正式ローンチを迎えた。当初は教材を共有するマーケット・プレイスとしての位置づけだったサービスはピボットし、今後は教師と教員のためのバーティカルなソーシャル・ネットワーク [1]として成長を目指す。

教師が本当に求めるものは何か?

ウェブサービスは永遠のベータ版とはいえ、スタートアップにとって、正式版のローンチまでに一年以上を費やすのは長い方だろう。SENSEI NOTE はこの間、何をしていたのだろう。創業者の浅谷氏に話を聞いてみた。

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浅谷治希氏

全国の先生方の家を訪問し、泊めてもらって話をしたりしていました。彼らのニーズを引き出すために、彼らとのフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを通じて、仕事以外の部分のことも知りたいと考えたからです。

そこでわかったことは、全国の先生が抱えている問題は、必ずしもファイルベースのコンテンツの共有だけでは解決できないということ。コンテンツよりも、むしろ、先生方が集って知恵を持ち寄れる場、コミュニティに価値を感じてもらえると確信したのです。

なんとなく教職の現場というのは、ベテランが駆け出しの教師に教え方を口承で伝授してゆくイメージがあるのだが、SENSEI NOTE では、経験年数の浅い教師がベテラン教師にノウハウを共有することも行われるなど、ユーザ同士の関係は極めてフラットだ。職員室で SENSEI NOTE の存在を教えてもらった同僚教師が新しいユーザとして加わるといった具合に、サービスの普及にはバイラル効果も一役買っている。

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SENSEI NOTE の質問板。
(SENSEI NOTE から提供を受けた画像ですが、編集部判断で一部を加工しています。)

コミュニティはマネタイズできるか?

浅谷氏は自身の経験や前職(ベネッセコーポレーション)の影響もあり、教育環境の充実に理想を持っている。そのためには教師同士のコミュニティを形成することが重要で、コミュニティが活発なものになれば、マネタイズは後からついてくる、という自信があるようだ。

全国の地域NPOなどとの連携を図っています。地域NPOは先生方とつながっていることが多いので、SENSEI NOTE の意義をNPOに説明すると、彼らは喜んで先生方に紹介してくれます。

学生にも入ってもらうために、全国の教員志望の学生がいる大学にアプローチして、約130校が自校の学生に SENSEI NOTE のことを広めてくれています。サービスは無料なので、大学としても便利なサービスを学生に勧めない理由は無いからです。

サービスが無料ということは、どうやってマネタイズするのだろう。この点については、浅谷氏に考えがあるようだ。

教師や、教師を介して生徒やその保護者にアプローチを試みる企業は、浅谷氏が以前在籍したベネッセも含め、情報提供会社や教材会社など数多い。しかし彼らの多くは代理店経由で営業活動を行っており、教師に直接アプローチする術がない。SENSEI NOTE を介せば、企業はコンテンツという形で商材を開発・提供することで、教師へのリーチが可能になる。

SENSEI NOTE 上で、生徒向けのキャリア教育に関する映像コンテンツを提供した企業のケースでは、そのコンテンツを教師が一週間で400人の生徒に見せた。このコンテンツは無料だが、企業にしてみれば教師や生徒に社名を認知してもらえるだけでも、大きなメリットがあるというわけだ。

SENSEI NOTE では今後、CSR(企業の社会的責任)やマーケティングの予算、文科省のプログラムなどから提供される資金を積極的に活用して、学校や教師の抱える諸問題を解決していきたいとしている。

高い理想は友人の一言から

浅谷氏が SENSEI NOTE を発表した一年半前の Startup Weekend Tokyo。筆者は海外に居て現場を見ることはできなかったのだが、彼が優勝を決めた直後に在籍していたベネッセを電撃退職したことは Facebook や Twitter で話題となり、その猪突猛進さには一目を置いていた。

あれから一年余り、外部からの資金調達も無い中、仲間数名と東京・洗足に借りた一軒家で、サービスの研鑽に没頭できた背景には、彼が教育に対して持つ高い理想があった。

ベネッセを辞めた直後、学生時代からの友人と飲む機会がありました。彼は教師になっていました。そして,彼は教師になったことへの思いを熱く語ってくれました。

新しい教師には不安が多く、しかも、彼らは一人で教壇に立っています。なんとか彼らをサポートしてあげたいという思いから、SENSEI NOTE は現在の形になりました。

全国各地の教師の自宅にまで足を運び、寝食を共にしてまで獲得した生の声は、SENSEI NOTE が多くのユーザに受け入れられるサービスに成長する上で、大きな力となるだろう。正式ローンチを迎え、今後、浅谷氏のチームが、資金調達を含む多くの可能性に恵まれることに期待したい。


  1. SENSEI NOTE の利用は教師か教員志望者に限られ、ユーザ登録の申請後、SENSEI NOTE の事務局によりその確認が行われます。  

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