コールセンター開設という過去最大の投資は、ユーザーファーストへの近道:新オフィスで「Cyta.jp」の有安さんにインタビュー

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Cyta-Ariyasu-leftCyta.jpを提供するコーチ・ユナイテッドの代表、有安伸宏さん

プライベートコーチの「Cyta.jp」がオフィスを移転したと聞いて、さっそく遊びに行ってきました。

2011年6月15日にオープンしたCyta.jp。現在、Cyta.jpに登録しているプライベートコーチの数は3,000名。当時は60種類だったレッスンのジャンルは、現在では200種類を超えていると言います。最近では、「手品」といったマイナーなレッスンまで見つかるのだとか。

そんなCyta.jpがクックパッドのグループ会社になったのは、2013年9月のこと。「で、何が変わったの?」としょっちゅう聞かれる、とコーチ・ユナイテッド代表の有安伸宏さんは話します。たしかに気になる。

「最近になって、売上げが倍増した」

え?それもまた超気になる。ということで、クックパッドに参画した後のお話から、今回の渋谷へのオフィス移転まで、有安さんにいろいろ聞いてきました。

すごく変わったし、何も変わっていない

結論から言うと、「何も変わっていない」と「すごく変わった」のどちらも本当のようです。何も変わっていないというのは、実質的には別会社として運用しているから。何通りもあるM&Aのなかでも、クックパッドのそれは「起業家の実勢を重視する、モチベーション重視型」なのだと説明します。

「ものすごく自由にやらせてもらっています。クックパッドの穐田さんと石渡さんには取締役に入ってもらっていますが、人事権も給与体系も完全に別ですし、社員も僕も、前と何も変わらないですね」

M&Aを、「後戻りできない結婚のようなもの」と表現する有安さん。

「僕自身、最初の頃はどうなるんだろうと思っていました。だって、初めてのことですから。でも、今のところいいことばかりです。中でも、僕が一番いい影響を受けているのは、クックパッドが徹底する“ユーザーファースト”の思想ですね」

ユーザーファーストという言葉は一種のバズワードのようになっているものの、実際にそれを徹底して行うことはかなり難しいこと。時には利益を除外視して、ユーザーのために投資するという決断はなかなかできるものではありません。

「事業が伸びていて、利益が出ていて、戦略があった上で、初めてできることだと思うんです。たやすいことじゃないですよ。そういう点で、クックパッドの人たちは本当にすごい。僕は穐田さんと毎週、毎月、これから事業をどう伸ばしていくかのディスカッションをしていますけど、ユーザーのことを考えていることがひしひし伝わってきます」

C2CとかB2Bとか、ユーザーにとってはどうでもいい

Cyta.jpのユーザーのために、これからサービスをどう良くしていくのか?ユーザーが本当に求めていることってなんだろう?自分たちが提供しているサービスについて改めて突き詰めてみると、本当に大切なことが見えてきたと言います。

「僕らのターゲットは、“習い事に通う人”、以上なんです。ギターを習う先生は、ヤマハの先生でも、ギターが上手い同級生でもいい。ユーザーにとっては、C2CとかB2Bなんてどうでもいいこと。要は、ギターが上達すればいいわけです」

Cyta.jpは、下は3歳から、上は72歳まで本当に幅広い年代のユーザーに使われています。社会人ユーザーがメインではありますが、マスユーザーに使われているという点は、他の多くのネットサービスとは大きく異なる点かもしれません。

そうしてサービスを良くしていく方法を考えていくなかで、有安さんは大きな決断をし、今回のオフィス移転という過去最大の投資を決めました。2つ前はマンションの一室だったCyta.jpのオフィスは、いっきに3倍の広さになりました。その新オフィスがこちら。

Cyta-Shibuya-office

コンタクトセンター開設で、2分のコールバック達成率95%

なぜ、いきなり3倍か?それは、「コンタクトセンター」を設置するためです。電話による、お客様からの問い合わせ対応を始めたのです。ウェブサイトに電話番号すら載せないネットサービスが多いなか、土日や年末年始を含む午前9時から午後10時までの365日体制は、ITスタートアップとして異例の試みだと言えます。

ただ、電話で折り返すだけではありません。お客さんが問い合わせを送信した「2分以内」に、電話で折り返すことを目指しています。既に新しい発見がたくさんありました。

「お客さんには、目的がそこまで決まっていない方も実は多いんです。週末の空いた時間で習い事でもしたいけれど…ってフワフワしていて。だから、僕たちはコンシェルジュ的な位置づけで、レッスンや先生をアドバイスする役割を果たしています」

10分以内ではなく、2分。この“2 minutes call”には、お客さんもビックリ。ネットで寄せた問い合わせに対して電話で反応することで、Cyta.jpは利用者にとって「顔が見える」サービスになりつつあります。

「今年の1月から、コンタクトセンターの試験運用を始めました。時間帯によって問い合わせが重なるため、常に100%とはいかないんですが、2 minutes callのレスポンス率は100%を目指しています。数値化することでチームのモチベーションにもなるし、お客さんにも早いほうが喜んでもらえる。“スピードは信頼”だと思っています」

Cyta.jpが実施する2 minutes callの時間別達成率管理表はこんな感じ。試験運用の開始から半年足らずで、既にレスポンス率が平均95%以上というところまで来ていることにはビックリです。

Cyta-2-minutes-call“2 minutes call”の時間別達成率管理表

ユーザーファーストへの近道

Cyta-sales-double

コンタクトセンターを設けることで、「ざっくり言うと、売上げがいっきに2倍になった」と話す有安さん。サイトで迷ったら、一本電話して聞いちゃいたい。そんな当然のニーズに応えることで利用者の満足度が向上し、その効果が確実に売上げにも表れています。

また、チームは売上げ以外の効果も実感しています。Cyta.jpに実装した新機能などについての問い合わせは、直接プロデューサー本人につなぎます。メールでくる問い合わせ以上に、電話はリアル。直接意見を聞くことで、ユーザーの声がしっかり届く。今では、新たに入った新人さんは、デザイナーもエンジニアも、コンタクトセンターでの電話応対にチャレンジしています。

では、インターネット企業はどこもコンタクトセンターを設けるべきなのでしょうか。

「厳密に言うと、ライフタイムバリューですね。顧客一人当たりから発生する利益が大きいサービスであれば、そこに投資するべきだと思います。もちろん使い分けが大事なので、ウェブも電話も使えばいいと思いますよ」

インターネット企業だし、コールセンターなんて…と決めつける必要はない。お客さんの体験をより良くするためにどうすべきか。サービス提供者は、その一つの手段として電話サポートを検討すべきなのかもしれません。

擬音で言うと、“グイグイ” って感じの人

「オフィス移転は、スタートアップにとって大切なイベント」だと話す有安さん。社員も喜ぶし、会社の成長も実感できる。今回の「身の丈に合わない大きな投資」に踏み込んだのは、ユーザーファーストを考えた時に電話が圧倒的に大事だという結論に至ったから。

なんと、電話サポートを思いついた日の午後には、いきなりフリーダイアルの電話回線を6本引いてしまったんだそう。

「経営はスピードが大事なので、思い立ったらすぐ行動で回線を引いちゃいました。電話に出る人が6人いないのに(笑)回線を引いたら、当然ですけど電話が鳴るんですよ。エンジニアがカタカタとコードを書いている横で電話が鳴って、最初はCTOもエンジニアも全員で応対していました。始めは照れてましたけど、だんだん上達していきましたよ(笑)」

チームは、現在約30名。事業開発やエンジニアは10名前後の少数精鋭を保ち、大半がコンタクトセンターのメンバーです。有安さんが求めるチームメンバーって、どんな人なのでしょう?

「擬音で言うと、「グイグイ」ですね。コミュニケーション能力だとかリーダーシップだとか言っても伝わらないので、グイグイって感じがいいです。ゼロからイチを生み出す行為なので、その現実を変えて行く力がある人かな」

普通の行動力や普通の発想では足りない。今回も、ITスタートアップが普通なら考えつきもしない、コールセンターの設置を思いつき、さっさと実行した有安さん。現在20名のコンタクトセンターは、今年の夏までに50名規模へと拡大する予定だと言います。

スタートアップは学ぶことの繰り返し。お客さんのことを学び、マーケットのことを学び、学んだことを行動に移す。グイグイ行くCyta.jpに、ますます注目です。

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