決済サービスからオンライン金融のパイオニアへ:Alipay(支付宝)のたどった10年を振り返る

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10年前の今日、Alibaba(阿里巴巴)はAlipay(支付宝)というオンライン決済・エスクローサービスを設立した。オンラインショッピングに対する中国の消費者の懸念に対処するためのもので、同社のTaobao(淘宝)オンラインマーケットプレイスを設立して18ヶ月後のことだった。今ではAlipayの決済サービスは、Ant Financial Services Group(螞蟻金融服務集団)傘下にある多くのインターネットをベースとする金融サービスの1つにすぎない。

Alipayのエスクローサービスでは、Taobaoで注文した商品が届いたことを消費者が確認するか、消費者が確認作業を煩わしいという場合には商品発送後10日までは決済を保留する(通常、中国で発送される荷物は10日以内に配送される)。

AlipayはAlibabaのオンラインマーケットプレイスでの取引だけでなく、サードパーティーのサービスも支援している。Alibabaのリテールマーケットプレイス(Taobao、Tmall=天猫、Juhuasuan=衆画算)で処理される決済はAlibaba全売上の80%ほどをもたらしているが、2013年におけるAlipayの決済ボリュームの38%しか占めていない。もちろん、Alibabaのリテールマーケットプレイスで行われる全ての決済がAlipay経由でなされるわけではない。2014年、約22%の取引はAlipay以外のものだった。

Taobaoで実際の商品の取引用に設立されたAlipayは、それでも様々な機能を持つようになった。料金支払い、送金、公共料金支払い、クレジットカード支払いなどだ。QRコード、音声、指紋認証などの決済手段もサポートしている。

Alipay.comが2004年12月30日にローンチされて以降、同サービスは中国のインターネットユーザ(中国には6億3200万人のインターネットユーザがいた。2014年6月時点、CNNICによる)の半分である3億人のユーザを獲得した。200以上の提携金融機関とともにAlipayは毎日8000万件の取引を扱っている。今年10月には、モバイルでの取引が全体の50%を超えた。

Alipay Wallet(支付宝銭包)

Alipay Walletという本格的なモバイルアプリはAlipayのモバイル版から進化したもので、2013年11月に独立したブランドとなった。パソコン上のAlipayサービスとは異なり、Alipay Walletには現地ライフスタイルサービスのチャンネルと「サービスウィンドウ」がある。このライフスタイルチャンネルを使って、ユーザはデジタル会員カード、旅行商品、映画チケットを購入できるほか、提携企業のタクシー予約もできる。一方、サービスウィンドウは企業がお得な情報を送ったり加入者にコンテンツを販促したりするためのものである。

同アプリには今年10月時点で1億9000万の年間アクティブユーザがいた(最近12ヶ月間で2回以上の決済もしくは送金をした人が対象)。

Alipay Walletは昨年からオフライン事業も積極的に拡張した。現在、タクシー公共交通機関への支払いが可能で、自動販売機やコンビニエンスストア、デパート、薬局、病院、駐車場などでも利用できる。

3ヶ月前、Alipay Walletは60以上のAPIを発表し、サードパーティーのソフトウェアデベロッパーに対して、Alipay Wallet対応アプリやサービスの開発を促し、自社のモバイルアプリへの技術の一本化を推進した。

グローバル展開

Alipayは今年、世界的な展開を加速させている。香港、台湾やその他の地域では従来型ショップで利用できる。中国の消費者は韓国日本アメリカでの買い物にAlipayを使用でき、ヨーロッパで買い物をした後には、税金の還付金の受け取りにも利用できる。

先週Alipayは、マカオ、タイ、シンガポール、韓国での現地交通機関の決済をサポートすると発表した。Alipayオーストラリアについては先月発表された。

もはやAlibabaではない

Alipayが属するビジネス部門は2011年にAlibabaから独立して別会社となり、現在はAlibabaの会長Jack Ma(馬雲)氏と共同出資者が大半の株式を所有している。これは、「国内の中国資本の」法人に対してのみ営業許可証の申請を承認するといった中国の中央銀行による規制へ対応策だとAlibabaは主張した。Alibabaに対し40%の株式を所有するYahoo!は、彼らから資本移転についての通告がなかったとして、その動向に不満をあらわにした。

Alibabaは現在、Alipayに決済処理の年間手数料を払うと同時に、AlipayはAlibabaにロイヤルティ料とソフトウェア技術料を毎年支払っている。2014年度、AlibabaはAlipayに3億7800万米ドルを支払い、その後で2億8400万米ドルの払い戻しを受けた。

Jack Ma氏は先月、Alipayを中国本土で上場させる意向を表明している。

Ant Financial Services Group(螞蟻金融服務集団)

スピンオフされた企業は当初、Small and Micro Financial Services Company(小微金融服務有限公司)と呼ばれ、この10月にAnt Financial Services Groupに名前が変わった。

Alipayのほかに、このグループは少額ローン事業を展開しており(2010年開始)、現在は「マイクロオンラインローン」と呼ばれ、Taobaoの小売店に信用供与を行っている。ローンは小売店の販売実績や顧客からの評価などの履歴に基づいて実施され、Alibabaはこれを追跡することができる。

Alipayユーザ向けに2013年6月にローンチされた投資信託のYu’ebao(余額宝)は、昨年の中国金融市場の最も重要な出来事の1つと考えられている。従来の金融機関と違い書類などの提出が必要なく、Alipayのページを開きお金を入金するだけでよく、投資信託の購入をずっと簡単にした。Alibabaが過半数の所有権を持つ投資信託会社がこの投資信託を運営している。Alipayによるとローンチから1年間で1億人のユーザが5741億元(920億米ドル)分のYu’ebao投資信託を購入した。

今年4月には第三金融機関が保険から少額ローンまで、個人向けから中小企業向けまでのYu’ebaoのようなオンライン商品をローンチするためのプラットフォームであるZhao Cai Bao(招財宝)をローンチした。

Ant FinancialはAlibabaのマーケットプレイスが集めた購入やユーザデータを活用して信用判定システムを構築中である。これはAnt Financial自身を含む金融機関が信用判断を行うのに役立つと期待されている。

Ant Financial Services Groupは9月にMYbank(浙江網商銀行)というプライベートバンクを設立するための行政許可を受けた。

【via Technode】 @technodechina
【原文】

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