動画制作のViibar、加藤寛之氏が技術顧問にーー2000人のクリエイターが使う動画生産の「秘密兵器」とは

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左から加藤寛之氏、Viibar代表取締役の上坂優太氏

クラウドソーシングの考え方を取り込み、国内動画制作の世界を効率的に変化させている成長株に新しい力が加わるようだ。

動画制作プラットフォームのViibar(ビーバー)は2月16日、元アトランティス、BEENOSなどで活躍したエンジニア、加藤寛之氏の技術顧問就任を発表する。本誌の取材に対してViibar代表取締役の上坂優太氏が教えてくれた。今後加藤氏はViibarの開発する動画マーケティングプラットフォームへの助言を通じて開発体制の強化をサポートする。

加藤氏は東京大学卒業後の2008年に広告テクノロジーのアトランティスに最高技術責任者として参加、無料の広告配信サーバー「AdLantis」を構築し、同社の初期成長を牽引した一人。その後、BEENOSではR&D業務や関連企業の業務改善などのアドバイザー的役割を経て、2014年3月にイロドリを設立。同じくネットプライスドットコム(現BEENOS)出身の起業家、小川卓也氏と共に複数社の技術支援に携わっている。

また、この話題と同時に、上坂氏に以前の取材時に持っていた疑念などをお聞きしてきた。動画制作という複雑な工程をクラウドソーシングという方法でシステム化、効率化できるのか。結論から言うと、その目的は十分に達成しつつあるようだった。彼の話を交えて現状をお伝えしたい。

Viibarの動画制作実績。大手企業も事例に並ぶ
Viibarの動画制作実績。大手企業も事例に並ぶ

まず、前回記事でも触れていたが、動画制作はロゴ制作のような単純な工程ではなく、進行やカメラ、細かいタレントブッキングから映像制作の監督・演出など、何人もの「プロ」が関わる。そもそもこれらのプレーヤーたちをまとめてひとつのチームにするのが制作会社だったり広告代理店の役割だったりする。

Viibarはざっくり言うとこの「ディレクション」部分を直接クライアントからクリエイターに直接繋いでしまおう、というものだ。上坂氏の話では、現在登録クリエイターは2000人規模に拡大しており、それぞれ制作できる映像のスタイルを確認できるポートフォリオが公開されている。映像制作をしたいクライアントは主にこのクリエイターのスタイルを確認して、制作したい動画のイメージに近い人をアサインする。

現在はタグなどによる分類からこのマッチング精度が高まり、大手のナショナルブランドのクライアントがViibarを繰り返し使うようになっているということだった。また、オンライン動画向けの素材だけでなく、質に関してもTVCMに放送できるレベルを確保することに成功した。

参考記事:動画特化のクラウドソーシング「Viibar」がダノンビオのテレビCMを制作、本日から全国でテレビ放映開始 – THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)

しかも、いくつかある特化型(翻訳や制作など)のクラウドソーシング事業社と違い、彼らはスケールすることを考えて、できる限り制作の仲介には入らず、プラットフォームに徹しているのが特徴だった。一方で私の疑念は、本当にこれだけの複雑な工程を、オンラインでマッチングしただけのディレクターが指令塔となって動けるのかというものだった。

用意された答えはこの画面を見れば1ミリぐらいは伝わるかもしれない。これは前回取材では開発中で見せてもらえなかったクラウド上のコラボレーション画面で、クライアントと制作チームはここを通じてチャットや映像プレビュー、リテイク指示など一気通貫でできるようになっている。実際に動いている箇所を見せてもらったが完成度は高かった。

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「オンラインの制作ルームを提供してそこのチャットやストレージで制作のコミュニケーションを実施します。全員が確認できる場所や、チームだけでコミュニケーションできる場所など、クリエイターのみなさんのフィードバックを反映させて使いやすいものを用意しました」(上坂氏)。

結果的にViibarはプラットフォーム利用者に対するサポートセンターは用意しているものの、制作ディレクションには一切入らないというスタイルを保っているということだった。

「オープン当初からプロダクトで制作をサポートするという考えは変わっていません。現在もチームの約半数はエンジニアです」(上坂氏)。

Viibarの代わりにディレクションを担当してくれるクリエイターは2000人の約半数。それぞれがカメラマンであったり監督であったりと役割を持ちながら、制作の指示を出せる技術も持っている。ただ、やはり優劣はあるので、そこはクライアントサイドからのレーティングでその評価が可視化されている。

上坂氏はこのスタイルをさらに発展させれば、月間数千本単位の動画制作も夢ではないと語っていた。

「これまで企業の動画CM制作というのは一か八かという賭けでした。けど、Viibarを使えばクリエイター側からのボトムアップ的な映像制作の世界が広がります。(大量に制作が可能になったことで)企業側は動画キャンペーンに対してPDCAを高速で回すことができるようになるのです」(上坂氏)。

人間の持つ「クリエイティビティの拡張」がViibarの使命のひとつと語る上坂氏。動画元年と言われて久しいが、配信側ではなく、制作側が大きく変化する時代がやってきたのかもしれない。

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