開始から約10ヶ月で月間訪問者数が1100万人を越えたメディア「Spotlight」の運営の裏側

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サイバーエージェントが提供しているバイラルメディア「Spotlight(スポットライト)」が、月間訪問者数が1100万人を越えたことを明らかにしている。「Spotlight」は、2014年4月にPC・スマートフォン向けサービスとしてスタート。開始から約半年後に月間訪問者数が760万人を突破。昨年11月には、iOSとAndroidアプリの提供を開始している。

キュレーションメディアやバイラルメディアと呼ばれるメディアも色々だ。これらの呼び方でひとくくりにされてしまうこともあるが、筆者は新しいメディアの作り方をしている例としてバイラルメディアやキュレーションメディアに注目している。

「Spotlight」編集長の渡辺将基氏に運営について取材してみたところ、面白い話が聞けたので紹介していきたい。

編集部機能とCGMのバランス

先日、本誌で女子向けキュレーションメディア「4meee!」を取り上げた。この記事では「4meee!」が編集部と130人の情報提供コミュニティの組み合わせで情報を発信していることも紹介している。

「Spotlight」も同様に、編集部機能とCGM機能の組み合わせで情報を発信している。現在、編集部全体は8人体制、CGMを担当しているメンバーが2名という体制、ライターは400人弱となっているという。このライターたちはサイバーエージェントが提供するメディアで執筆する「Amebaみんなの編集局」に所属して記事を書いているそうだが、渡辺氏によれば「Spotlight」での執筆する割合が高いそうだ。

Spotlight

日々、50〜60本ほど記事を掲載しており、編集部は記事を全件チェックし、クオリティの良い記事はタイトルの変更などを実施することで、ソーシャルメディアで話題になるよう手を加えている。編集部からライターが執筆した記事に対してレビューも実施し、徐々にライターのスキルを高めている。

編集部機能の有無や書き手の規模感で「4meee!」は「Mery」と比較できると考えており、同様に「Spotlight」は「Naverまとめ」と比較して考えられる。渡辺氏もNaverまとめは参考にしているとコメントしており、閲覧数に応じたライターへの報酬の計算の仕方などもNaverまとめを参考にしているそうだ。

書き手のモチベーションアップ

「Spotlight」は、オンラインのコミュニケーションだけではなく、オフラインでの相談会なども開催し、ライターとのコミュニケーションをとっている。

渡辺氏は「ライターの人数が多いので負担も大きいが、メディア運営のためにはこうした部分に労力を割くような何かしらの非合理的な部分は必要だと考えている」と語る。筆者も物書きの1人として、書くためのモチベーションを仕組みだけで維持するのは難しい面がある感じる。

「Spotlight」の編集部が行っているように、書き手とのコミュニケーションやモチベーションを上げるためのアプローチは、労力がかかるとしてもメディア運営のためには重要な部分になる。

渡辺氏は今後、人事の盛り上げで有名なサイバーエージェントのノウハウを「Spotlight」のライターのモチベーションを盛り上げていくためにも活かしたいと考えているという。人によって合う合わないはあるかもしれないが、モチベーションが上がる書き手は増えそうだ。

コンテンツをより広く伝えるために

「Spotlight」の特徴を挙げていくと、サイバーエージェントが運営していることによる書き手を確保しやすさ、ライターのモチベーションアップに活用可能なノウハウの蓄積、そしてソーシャルメディアで話題にするためのノウハウなどがある。

「Spotlight」に掲載される記事は、編集部のメンバーによる執筆、外部ライターによる執筆、そして外部メディアからの転載の3パターンで構成される。

外部メディアの記事コンテンツについても、「Spotlight」がタイトルやサムネの編集権をもらっており、話題になりやすいよう加工して掲載される。これによりより多くの人に伝わりやすくなる。

spotright article

たとえば、こちらの記事では元の「実際のところ猫は飼い主のことをどのように思っているのだろうか?「大きな猫、でも敵じゃない」。と思っているらしい。(英研究)」という記事タイトルを、「猫は人を「無駄に大きい猫」と思っていた!30年の研究成果でわかった事実」というタイトルに変更している。

渡辺氏は、

「面白い記事を自分のブログに書いている人も数多くいるのですが、なかなか人の目に触れることがない。「Spotlight」で少し手を加えて紹介することで、より多くの人に知ってもらうことができればと考えています」

と語る。話題にするために人の関心を煽ることに偏り過ぎてしまうことは避けたいが、記事を書いている人間にとっては価値ある情報であればより多くの人に読んでもらいたいと考えるのもまた事実。「Spotlight」はそのための機会を提供する存在となる。

熱意ある人々が発見するネタ

「「Spotlight」はプロのライターとは異なる、とにかく自分が好きなものについて発信したいという熱意のあるアマチュアの力を活かしたいと考えています」

と渡辺氏は語る。時間やお金の制約などに縛られることなく、自分が面白いと思ったネタを探し、記事を書いてくれるアマチュアのライターが数百人体制でいる状態が実現できれば、既存のメディアとは異なった取材体制も構築できそうだ。

「Spotlight」はエンタメ系のネタを中心としつつも、社会派のネタも掲載している。「発見」というコンセプトの下、「そんな考えもあるのか」と読者が意外に思うような意見も拾っていく方針だ、と渡辺氏は語る。

「Spotlight」は今後、ライターの発掘と育成、媒体のコンセプトを維持したままでの規模の拡大と仕組みづくりに取り組んでいく。収益化については、広告を中心にテストを重ねていく予定だ。2015年9月に月間3000万MAUを目指している。

試行錯誤を重ねながら運営してきた「Spotlight」は、かなりの速度で成長してきている。試行錯誤は引き続き行っていくそうだが、彼らが新たなメディアづくりに取り組む様子に注目したい。

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