コペンハーゲンの「Startupbootcamp Mobile」がデモデイを開催、参加チームが成果を披露

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Startupbootcamp Mobileチーム
Startupbootcamp Mobileチーム(筆者撮影)

コペンハーゲンで誕生し、グローバルにアクセラレータプログラムを展開するStartupbootcampが、モバイルに特化したコペンハーゲンでのプログラム「Startupbootcamp Mobile」のデモデイを9月4日に開催した。その模様をお伝えしたい。

Startupbootcampについて

まず、簡単にStartupbootcamp(以下SBC)について。SBCは、2010年にコペンハーゲンで誕生したシードステージのスタートアップを対象にしたアクセラレータプログラムだ。世界トップレベルの選び抜かれた起業家を、各分野の強みを持ち合わせたメンターの強力なアドバイスを元に、3カ月という短期間で集中して成長を加速させようというミッションを掲げて立ち上げられた。

ローンチ後、SBCはスタートアップコミュニティの支持を集め、世界中の各都市に広がっていた。現在は、ロンドンでフィンテックのプログラムを、バルセロナでIoTのプログラムを、というように領域ごとに各都市でプログラムを走らせている。

プログラムの期間は3ヶ月。各チームには1万5000ユーロをキャッシュで与え、代わりに8%のエクイティをとる仕組みになっている。前述の通りメンターによるサポート、無料のオフィススペースが参加チームには与えられる。

これまでの参加スタートアップ数は220、プログラム終了後に資金調達をしたのは、そのうち73パーセントであり、平均の調達額は約60万ユーロとのことだ。

コペンハーゲンの「Startupbootcamp Mobile」、韓国からも3チームが参加

今回デモデイが開催された「Startupbootcamp Mobile」には、9チームが参加。300の応募チームから選び抜かれた6チームに、韓国政府が運営するスタートアップ支援組織 Korea Institute of Startup & Entrepreneurship との提携によって参加が決まった韓国の3チームも加わり、計9チームがデモデイに登壇した。

コペンハーゲンのSBCを統括するLars Buch氏の話によれば、領域ごとにプログラムを分けたことによって 世界中から優秀なチームを集めやすくなったととのことだが、今回参加したチームのメンバーの国籍は全部で17カ国と非常にインターナショナルだった。

では、今回デモデイでピッチをした9チームの中で、特に筆者の印象に残ったチームを紹介したいと思う。以下、()内はファウンダーの出身国。

Macellum(デンマーク):漁を最適化できるよう、漁師にデータを提供

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デンマークは漁業が盛んで、国民の魚の消費量も多い国だが、そんなデンマークらしいプロダクトが印象的だったのがMacellum。漁師が簡単に各港における魚の値段を分かるようにし、どこに漁に出るべきかを判断しやすくするプロダクトだ。各港で獲れる魚の種類や漁獲量に応じて、取引される魚の値段は日々変動する。その統計データを現場の漁師が見やすいインターフェイスで表示し、日々の漁の判断に活用できるというわけだ。

ファウンダーのRasmus L. Christensen氏自身、漁師の息子であり、漁師の生活が身近であった分、ユーザー視点が反映されたプロダクトに成長していくのではないかと期待をもてる。明るい画面の「日中モード」と背景色が黒になった「夜間モード」と、漁師のライフスタイルに合わせたインターフェイスになっているのもユーザーの視点が反映されたもの。現在はベータ版をデンマークのみで運用中とのことだが、将来的には世界展開を目指していく。

Red Tulip Systems(米国/オランダ):公的・私的な2つのアイデンティティを一つのデバイス上で切り替え可能に

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フリーランスのライターである筆者には全くない視点であったが、世の中には公的なアイデンティティと私的なアイデンティティの2つを日々使い分けなければならない人も数多く存在する。たとえば、弁護士や探偵、警察、医師、国家情報部員、軍人などだ。彼らは、公的な場と私的な場で異なるデバイスを使う必要があり、情報の取り扱いには細心の注意が求められる。情報が漏れれば、自分や家族の身が危険にさらされるリスクすらある。Red Tulip Systemsは、そんな公的な情報と私的な情報を一台のデバイス上でうまく切り替えることができるソリューションを提供する。

ファウンダーのRob Sutter氏とJosh Petras氏はカーネギーメロン大学時代からの友人同士とのことで、Sutter氏は米国陸軍のインフラ部門や政府関係部署での経験をもつ。こうした経験からプロダクトのアイデアが生まれ、現在は今月下旬のベータ版ローンチに向けて開発を進めているところだ。対政府の「B2G市場(Business-to-Government)」を狙っていきたいとのことで、B2Gでの経験が多いパートナーを募集中とのことだ。

ChatMiUp(韓国):「声」でマッチングするデーティングアプリ

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またデーティングアプリか……という第一印象を抱いてしまったのは否めないが、そのアプローチの斬新さがとても印象的だったのが韓国発の「声」でマッチングするデーティングアプリ「ChatMiUp」だ。ファウンダーのDorian Kim氏の話によれば、元々はユーザーが自分の声を録音し、他人とシェアできる別のアプリを開発していたとのことだが、予想以上に「異性を意識した歌や一言」が多くアップロードされたとのことで、マッチング機能にフォーカスしてアプリを作り直すことにしたのだという。「声でマッチングする」という新しさもあってか、現在までにユーザー数は2万を超えているとのこと。今後しばらくは、コペンハーゲンの大学生層を狙ってアプリの開発、事業拡大を目指していく。

Avo(モルドバ):旅行中にローミング料金なしに電話を受信可能に

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海外で携帯を使っていたら、驚くほど高い額の請求書が後で送られてきた経験がある人は少なくないだろう。アメリカに出張後、2000ドルの携帯電話代の請求書が送られてきたAlexandru Cebotariが、この苦い経験をきかっけに開発を始めたのがAvoである。

Avoは旅行者向けのVoIPサービスで、旅行先で手に入れたSIMカードを使えば、元々使用していた電話番号を使って、国外からの電話を受け取れるというものだ。すべての電話はAvoのアプリ上で受け取ることができ、またアプリから国外に電話をかけることもできる。Avoでの電話の受信、またAvoユーザー同士の電話は無料で利用可能。

現在までに口コミで8000のユーザーを獲得し、今後はローカルなSiMカード提供事業者などとの提携を模索しているとのこと。

Skidos(インド):「ゲーム×学習」ゲームをしながら学べるアプリを開発

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インド出身の2名のファウンダーが立ち上げたSkidosは、子供が算数を楽しく遊びながら学べるアプリだ。周囲の子供の算数のスキルが低いことを懸念していたというファウンダーは、ゲームをベースに教育的な価値を加えたアプリを開発する。こうして開発したアプリ「Milk Hunt」は、口コミで評判が広がり2万3000のダウンロード数を記録。今後さらに販売チャネルを広げることと、また別の科目の学習ゲームアプリを開発することを計画中であるそうだ。


 

今回のデモデイでピッチをした全チームについてはこちらからご覧いただける。

なお、コペンハーゲンのSBCは現在、海運業や漁業が盛んな場所の特性を生かして、新領域「海」にフォーカスしたプログラム「Blue World」のプログラムをローンチすべく、ファンドを立ち上げ中とのこと。こちらは、続報があり次第またレポートしたい。

ピッチ後の投資家とのネットワーキングタイム
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