僕が9時5時で働くことをやめたことで学んだこと

Jacob-Laukaitis本稿は、もともとMediumに投稿された記事です。この1年間で、30ヶ国以上を旅しながらデジタルノマドとして活動するJacob Laukaitisさん。ChameleonJohn.comの共同ファウンダーでもあり、同社では新規ユーザー獲得戦略を担当。Jacobについては、JacobLaukaitis.comとこちらのニュースレターをご覧ください。


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旧ソビエト連邦で生まれ育った僕の祖父母にとって、「成功」は極シンプルなものだった。一つの仕事を見つけて、それをずっと続けること。彼らにとって、その居心地の良さは理想的だった。複雑な人生を求めず、物事が予想の範囲内であることを求めた。朝9時に出社するオフィスで一日中忙しそうにして、目立たず、夕方5時にはオフィスを出る。

2世代と数十年が経った今、物事は変わった。僕はシンプルであることや、予想内なことが大嫌いだ。オフィスは嫌いだし、目立たないようにひっそりなんてご免だし、居心地の良さの外に飛び出ることを好む。50年前の企業は、その全従業員が一つ屋根の下で働くことを必要としていた。大規模な産業生産を実現するためだ。でも今日、従業員が結果さえ出していれば、その物理的な場所や就労時間は関係ないことを企業も少しずつ理解し始めている。

その結果、新たな従業員のクラスが誕生した。その仕事が、場所と時間から完全に独立した人たち。「デジタルノマド」は、旅をしながら仕事をして時間を過ごす。バリでフリーランスの仕事をしたり、バルセロナから自分の事業を運営したり、シンガポールにいながらサンフランシスコの企業から仕事を請けたり。

この世界には、こうした人たちが何千人もいる。そして僕は、これ以外の生き方を想像することもできない。

オフィスで過ごす時間の長さと、生産性の2つが必ずしも紐づかないことが次第に明らかになってきている。一人の従業員が4時間で済ませられることを、また別の従業員は8時間かかるかもしれない。朝の方が仕事がはかどる人もいれば、夜の方が集中できる人もいる。オフィスで仕事をすることを好む人もいれば、そうでない人もいる。

僕が共同創業したChameleonJohn.comでは、従業員にオフィスの外でなるべく時間を過ごすことを推奨している。従業員に、友だちの卒業パーティや母親の誕生日パーティに参加するために休んでいいかと聞かれると、むしろ混乱してしまう。きちんと結果さえ出していれば、何をしたっていいのだから。

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一見すると、デジタルノマドはまるで最悪の従業員かのように見えるかもしれない。彼らは常に飛び回っているし、オンデマンドで連絡を取りたくでもそれがなかなか難しい(ダイビングやサーフィンをしている最中にスマホを持って行く人はいないからね)。

ありえないと感じるかもしれないが、その反対も事実だと僕は思う。

人は、住みたいところに住んで、情熱を持ってやりたいことに取り組んでいる時の方が圧倒的に幸せだ。デジタルノマドとして、君は自分が求める人生を叶えることができる。サーフィンをすることが好きなら、サーフィンができる街に引っ越せばいい。長距離のモーターバイクが好きなら、ベトナムに6週間長期滞在すればいい。

何百人というリモートワーカーを上手く採用した企業に、MySQLがある。同社で長らくCEOを勤めて、2008年に10億ドルで売却したMarten Mickosとは何度もディスカッションを重ねたことがある。ピーク時、MySQLは36ヶ国にまたいで500人のフルタイム従業員を抱え、一つとしてオフィスを持っていなかった。

「オフィスで会議に出席したり、メールに返信したり、コーヒーを飲んだりして、あたかも忙しいように振る舞うことは簡単だ。でも、遠隔で仕事をしていると、繰り返し「結果はどこだ?」と聞かれる。また、もし僕らがベイエリアでしか雇用しなかったとしたら、世界中の優秀な人材に出会うことができない。今なら、僕らは世界中のどこにいる人でも採用することができる。また、オフィスの家賃が浮くという点でも莫大なコスト削減になる」(Mickos氏)

従業員がハッピーであればあるほど、彼らは自分の仕事を愛し、よりイノベーティブな思考を持ち、またユーザーや顧客にも親切になることができる。これは、否定することができない原因と結果の因果関係なのだーーそれは次第に、売上げや利益という形でも表れる。

固定住所知らず

ノマドのライフスタイルで暮らすようになって、2年弱が経つ。その間、僕は25ヶ国を旅して来た。タイやフィリピンの島々をバイクで駆け抜けたり、インドネシアの活火山へハイキングに出かけたり、サーフィンを修得したり、Gili Islandsでダイビングの免許を取得したり、新しい文化を探り、素晴らしい人たちに出会った。

この間ずっと、僕の所持品は小さなバックパック一つだった。(偶然にも、これはまだ学生だった頃に学校に行く時に使っていたものと同じものだ)

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僕らの社会は、「所持すること」への執念がすさまじい。Dave Ramsayの格言が、この事象を完璧なまでに表現している。

人は、赤の他人に自慢するために、持ってもいないお金で必要でもないものを買う。

僕は、モノを所持することは単純に非効率的だと思う。一度持ってしまったら、それを持ち歩いて守らなきゃいけない。モノを持つことで、特定の場所に縛られてしまう。また大概、そのモノは借りるよりも高くつく。

また僕は、過去2年間、固定の住所を持っていない。一つの国に1ヶ月以上滞在することがないからだ。これはつまり、行きたい時に行きたい場所に行ける自由を意味する。タイから日本へ、そしてインドネシアへ旅立つことができる。モノを売ったり、アパートを貸しに出す必要もない。

チケットを買って、ただ出かけるだけ。

ノマディズムが普及するにつれて、長らく事実だったモノを所持することへの姿勢にも変化が見られるようになってきた。AirBnb(家や部屋の短期レンタル)、Vinted(古着の販売や交換)、RelayRides(ユーザー間のカーレンタル)などが、人気を博している。ユーザーに提供する利便性から、地球のCO2の排出量削減に至るまで、そのメリットは、数えきれない。

何千にも及ぶ視点

アドベンチャーが終わる度に、僕はそこで見たこと、学んだことについてしっかり考える時間を設けている。日本では、自分より他人を思うこと、そして周囲の人間の幸福について深く気遣うことの価値を学んだ。ミャンマーでは、幸せの尺度は、どれだけのお金を持っているかでは決して測れることができないことを学んだ。ベトナムでは、家族の大切さを理解した。

こうした体験は、自分の人生に対してどうアプローチするかを形づくることに大きく影響する。また同時に、それらは僕のプロフェッショナルとしての考え方の基盤にもなりつつある。西洋の外にあるチャンスに目を向けて、まだ満たされぬ社会に対するプロダクトを作りたいと思うようになった。

例えば、地球上で4番目に大きな国であるインドネシアには2.5億人の人工がいる。ところが、彼らは17,000にも及ぶ島々に分散されており、新製品が国に入って来た際の物流に大きな課題がある。ミャンマーでは、6,500万人という大きな市場に巨大なポテンシャルを感じる。インターネットのスピードは非常に遅く、公共の移動手段はほぼ皆無だ。軍事政権の配下にあった複数世紀を経た今、インドネシアは大きなイノベーションを迎え入れる準備ができている。

デジタルノマディズムには、世界を少しだけ小さくするポテンシャルがある。またデジタルイノベーションが起こるプロセスに、より多くの人が参加できるようにもしてくれる。

今以上のタイミングはない

スティーブ・ジョブスはこう言った。

「何か失うものがあると恐れてしまうことを防ぐ最良の方法は、いつか死ぬということを忘れないようにすることだ。自分の心の赴くままに進まない理由はどこにもない」

人生における重要な決断に差し掛かると、僕は繰り返し、このプリンシプルに返って来る。それは、僕がノマドになった理由でもある。

もし、世界を旅してみたいと思ったなら、今こそがその時だ。キャリアを犠牲にする必要はない。世の中には、君のことを支援してくれる何千もの人たちがいるし、生活をしていく方法はいくらでもある。そして、無数のまだ見ぬ場所やまだ見ぬ体験がそこには待っている。

(翻訳:三橋ゆか里)