新世代スマホ・スタートアップNextbitが、クラウドに最適化したスマホ「Robin」をKickstarterでお披露目

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中国の OnePlus(一加)が世界的に評判を呼び、あの John Sculley の Obi Worldphone が先週、新型の Android スマートフォンを発表した。日本の家電メーカーが軒並みスマートフォン事業から撤退したのとは対照的に、世界ではスマートフォン・スタートアップが花盛りだ。

そして今日、現在のネットワーク環境にふさわしい新たなコンセプトを持ったスマートフォン・スタートアップが新しいプロダクトを世に送り出した。サンフランシスコに本拠を置く Nextbit は1日(米国東部標準時午前10時)、Kickstarter 上で同社の新しいスマートフォン「Robin」のクラウドファンディング・キャンペーンを開始した。

Robin では、OS は Android ベースながらもクラウド時代に最適化された設計となっており、ハンドセット上のあらゆるアプリやデータについて、一定期間利用されなかったものが自動的にクラウドに退避されるしくみとなっている。どれを退避するかは、厳密には将来の利用頻度を予測するハンドセット上の人工知能が判断することになる。

こうすることで、ユーザはスマートフォンの内部リソースを最大限に利用できるので、論理上は、搭載されているフラッシュメモリの容量以上のアプリやデータを保持することが可能だ。写真やアプリが増えてくると、データを退避して削除しなければならない、あの面倒さから解放されるのだ。Robin では、一度退避されたアプリやデータも、スマートフォンのホーム画面上から再びアクセスすれば、自動的にクラウドからダウンロードされて復活され、ほどなくアクセスが可能になる。

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アプリやデータの退避や復活だけのために、貴重なモバイルや wi-fi のトラフィックを使うのは勿体ないような気もするが、実はこのフラッシュメモリの有効活用のための機能は副次的なメリットであり、本来の目的は別のところにある。スマートフォンのアプリやデータのみならず、あらゆる設定情報をクラウドと常に同期させるスマートフォンの〝パーフェクト・バックアップ〟とリストアだ。

Nextbit の創業者兼CEO で、日本語がすこぶる堪能な Tom Moss 氏がインタビューに応えてくれた。彼は Google が Android の開発に着手したとき、Andy Rubin 氏の直下で Android のビジネスデベロップメントを率いた人物だ。日本ではドコモとの調整に関わり、日本初の Android フォンである HT-03A や Xperia 初号機の誕生を実現させている。

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Nextbit CEO Tom Moss 氏

iPhone や Android が開発され始めた2005年頃、クラウドはまだありませんでした。Android を搭載した初のスマートフォン「T-Mobile G1」が出た2008年には、モバイル通信はまだ 3G で wi-fi は現在ほど普及しておらず、 AWS (Amazon Web Services)も現在ほど一般的ではなかった。

一方で現在ではこれほどクラウドが一般的になっているのに、スマートフォンは OS レベルでクラウドを意識して設計されていません。現在ではまだ、アプリレイヤーで API や SDK などを使ってクラウドと接続しています。

クラウド時代に最適化された OS を作ることで、さまざまなことが可能になります。内部メモリが足りない、機種変更したときにセットアップが面倒、複数端末を持っている人が端末間でデータ同期できない、というような問題を解決できます。

Nextbit は当初、スマートフォンのハンドセットは製造せずソフトウェアだけを提供する予定だったが、2014年8月に HTC でNexus One の設計を担当していた Scott Croyle 氏がチームにジョイン、これまでにないユーザ・エクスペリエンスを届けるべくソフトウェアとハードウェアをトータルに提供することになった。Nextbit を「ハードウェアをやっているソフトウェア会社」と説明する Moss 氏が、敢えてハードウェアも手がける背景には、スマートフォンをめぐるSIMロック解除やユーザ嗜好など市場の環境変化があるようだ。

iPhone を700〜800ドルを出して購入する人たちは、ブランドを気にする消費者でしょう。しかし、Galaxy は例外として、Android メーカーがハイエンド端末を作るのは難しい。消費者が許容してくれる Android の新しいハイエンド端末の価格帯は400ドル程度。しかし、HTC などが400ドルの Android ハイエンド端末を作るのは難しいと思います。

ブランド、デザイン、ソフトウェア、UX の すべてを最高のものにして、我々は全世界で売りたい。これまでのスマートフォン・メーカーはキャリアの意見を聞いてプロダクトを作っていましたが、SIMフリーが一般的になった今、我々はエンドユーザの声を第一にプロダクトを作っていきたい。

Android 開発の先陣を切ってきた Moss 氏はハッカー・コミュニティに対しても寛容だ。例えば、スマートウォッチの Pebble では、ユーザが自らアプリやフェイスなどを製作し独自のマーケットプレイスやエコシステムを形成しているが、Robin の周辺でも同じような動きが期待できるかもしれない。ユーザが Robin を OS レベルでアンロックしたり、ポーティングしたりして万一動かなくなっても、Nextbit は保証対象と見なしてくれるのだそうだ。

Robin は349ドルで発売され 100GB のクラウド・ストレージがバンドルされるが、現在 Kickstarter で展開されているクラウドファンディング・キャンペーンでは 299ドルで予約注文が可能。出荷開始は、2016年の1月を予定している。

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