
2015年12月10日 本日から、航空法の改正が施行されます。今回の改正が多くの注目を集めているのは、それが無人航空機、いわゆるドローンの飛行に大きく影響するものだから。改正航空法の内容については、古橋大地さんによるウェビナー解説記事をお届けしました。
本記事では、残りのインタビュー内容をお送りします。古橋さんが手がけるドローンを使った災害救援隊「DRONE BIRD(ドローンバード)」の活動や、より広く活用されるためにドローンがクリアすべき課題、そして、ドローンが空を飛び交う未来について伺いました。
起点は、学生が主役の「クライシスマッパーズ・ジャパン」

ドローンバードは、ドローンを使って空撮することで、一刻も早く発災後の状況地図を作成し、現地の救援活動に役立てることを目指すもの。ドローンバードの起点になっているのが、今年4月に開始され、古橋さんが代表を務める「クライシスマッパーズ・ジャパン」です。
自然災害、政治的混乱などの危機的状況下で、地図情報を迅速に提供し、世界中に発信・活用することを目的に活動するNPO団体。被災地で撮影された写真を元に、世界中のボランティアやマッパーと共に「現地の被災状況マップ」を提供しています。2011年3月に起きた東日本大震災で活用された「sinsai.info」など、国内外で広く活動しています。
活動開始当初、そのチームは仕事を他に持つ社会人のメンバーを中心に構成されていました。ところが、本業が忙しかったり、同様のプロジェクトを掛け持ちする人が多く、災害などが起きて急遽出番という時に迅速に動けないことが重なりました。いつ災害が起きても、すぐに動けるメンバーを育てる必要があると考えて着目したのが、学生という人材リソースでした。
「出番が来たらすぐに動けるメンバー。これって、もう僕ら世代の出番ではなくて、若い世代なんじゃないかと気がつきました。僕は青山学院大学で教えているため、これから何をするかを真剣に考える学生との接点があります。学生が実働部隊となり、メンターの皆さんにアドバイスをもらいながら運営しています」
世界的に見たプロジェクト「ドローンバード」の新しさ
もし、本当に発災直後の最新の状態をもとに地図を作ることができれば、それはその後の災害支援などにもっと役立つはず。その意義や価値は改めて語るまでもありませんが、ドローンバードというスキームは、世界的に見て果たしてどれだけ斬新で、故にチャレンジングな取り組みなのかについて、古橋さんに聞きました。
ドローンバードのスキームが機能するためにクリアすべき課題
東京都の公園119箇所におけるドローンの飛行は、以前から全面的に禁止されています。今回の航空法の改正は、この規制をさらに厳しくするものだと言えます。航空法改正の具体的な内容については、古橋さんによるウェビナー解説記事をご覧ください。
一方で、航空法の改正内容が定まったことで、その対象外となる条件も見えてきました。国土交通省によると、機体本体の重量とバッテリーの重量の合計が200g未満の場合、それは航空法の対象外となるとのこと。つまり、199g未満のドローンを開発することができれば、一刻の猶予を争う災害時などに、事前申請の手間に煩わされることなくドローンを飛ばすことができます。
199g未満のドローンは実存しますが、軽量なものは風に流されてしまい、空撮も難しいのが現状です。また、ドローンの軽量化以外にも改良が求められるのが、飛行時間の延長です。現状、小さいドローンで数分、大型のものでも10〜20分ほどに留まるドローンの飛行時間。バッテリーの性能にも依存する飛行時間をなるべく伸ばし、撮影範囲を広く撮るために移動速度の向上も必要です。
「モーターが複数ついているヘリコプターやマルチコプター型ではなく、今後は固定翼タイプやオスプレイのようなVTOL型ドローンになっていくと思います。マルチコプターと固定翼のハイブリッド型というか。Googleが試している「Project Wing」のドローンや、AmazonのPrime Airの最新機種もそうですね」
こうした技術的な課題を解決することに挑むのは、国内外の優秀なメンバーたちです。ドローンのソフトウェアやハードウェアをオープンソース化する「Dronecode Project」や「Open Relief」などのプロジェクトを中心に、完全なるオープンコミュニティとして、ドローン機体本体、ソフトウェア共に良いものは積極的に取り入れていく方針です。
ドローンに関心がある人が集まるコミュニティ

東京都内の公園や大阪など、各自治体による規制によって、ドローンを飛ばしたくでも飛ばせない人たちが大勢いると話す古橋さん。そんな人たちが、思う存分、ドローンを飛ばせる場所が、日本最大級のドローンレース「Drone Impact Challenge」です。今年11月7日に、初開催を迎えました。
ギャラリーを含む来場者数の総数は、800名。メディア関係者も200名ほど集まり、ニコニコ生放送のオンライン中継の視聴者数は40,000人を超えるなど、予想以上の反響が集まりました。2016年は、これを全国複数箇所で開催することを予定しています。
こうしたイベントを開催することで、ドローンが自由に飛ばせないフラストレーションを発散してもらうだけでなく、ドローンパイロットの育成、またドローンに関心を持つ人のネットワークを構築することができます。また、イベントにハッカソンやアイディアソンを組み込むことで、ドローンにまつわる様々なトライアルを実践し、改良に繋げる場にもなっていくはず。
「当然、メインイベントであるスピード競争にはレースとしての醍醐味がありますが、災害が起きた時にドローンをどう使うのかを考える機会にしたいと考えています。アイディアソンを実施したり、レースの中にハッカソンを組み込むことで、ドローンコミュニティとして防災ミッションに取り組んでいきます」
ドローンが空を飛び交うかもしれない5年後の未来
災害時の活用だけでなく、工場における作業のモニタリングや物流など、さまざまな形で活用が試されるドローン。これから、ドローンが私たちの生活をどう変えていくのかについて古橋さんに語っていただきました。
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