
本稿は、WebSummit 2016 の取材の一部である。
8日(現地時間7日)、ポルトガルのリスボンで世界最大級のスタートアップ・イベント WebSummit 2016 が開幕した。今年の WebSummit は来場者数が5.1万人に上る見込みだという。数年前まで、ヨーロッパの大きなスタートアップ・イベントと言えば、パリで毎年12月に開催される LeWeb だったのだが、売却した Reed MIDEM との契約オプションから買い戻しを余儀なくされ、その後、LeWeb は開催されなくなった。それ以降、世界最大のスタートアップ・イベントと言えば、WebSummit と SLUSH が接戦を繰り広げている状況だ。
WebSummit は昨年までアイルランドのダブリンで開催されていた。しかし、今年から開催地はポルトガルのリスボン。表向きの理由は2つ言われていて、ダブリン市内に WebSummit 参加者を収容できるほどの宿泊施設が無いということと、世界から参加者を集めたときにアイルランドへは入国ビザが必要になる人が多いから。そして、表向きではないけれど明らかになっている理由は、ポルトガル政府が毎年130万ユーロ(1.5億円相当)を WebSummit に支払うというものだ。
もっとも、シンガポール政府の動きなどを見ていても、MICE 政策やスタートアップ・ハブとしてのブランディングの観点から、欧米の有名カンファレンスのアジア招致の事例は増えている。WebSummit のケースで言えば、他のヨーロッパ諸国にスタートアップハブとして遅れをとりたくないポルトガル政府と、コンパクトな国ゆえ話を進めやすい WebSummit 運営側との思惑が一致した結果だろう。隣国に Mobile World Congress があるというのも作用しているかもしれない。
さて、そんな WebSummit だが、今日、ポルトガル首相の António Costa 氏は、2億ユーロ(230億円相当)のスタートアップ向けファンドの創設を表明した。基本的には他の民間投資家と共同出資する形で運用され、本社をポルトガルに設置する条件をクリアすれば、どこの国のスタートアップであっても応募できる。これと並行して、リスボン、ポルト、ブラガなどの都市にスタートアップ・エコシステムの形成も促進するとしている。今年の WebSummit では、200社以上のスタートアップが披露されるそうだ。
なお、筆者も8日(現地時間)に WebSummit Global Rising Startup Ecosystem Roundtable に登壇させていただく予定なので、読者の中に参加されている方がおられたら、乞うご期待。

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