起業支援拠点「スタートアップカフェコザ」開設から1年、沖縄は東アジアのエストニアになり得るか?

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スタートアップカフェは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が2014年、福岡・天神の TSUTAYA 店舗内で立ち上げたのを皮切りに(現在は、大名の Fukuoka Growth Next 内に移転)、昨年8月にオープンしたスタートアップカフェコザ(沖縄県沖縄市)、昨年10月にオープンした関西大学梅田キャンパスのスタートアップカフェ大阪とあわせ、日本国内に3つ存在する。それぞれ運営体制やビジネスモデルはそれぞれ異なるが、スタートアップカフェコザは、沖縄市が始めた創業・起業支援事業の一環として、現地のまちづくり NPO コザまち社中、ソフト開発のハナハナワークスなどが運営している。

グローバルスタートアップハブとしての沖縄の可能性を考えるセッション:中国での長年の生活経験があり、コザから起業を準備中の豊里健一郎氏のほか、スパイラルベンチャーズの岡洋氏、ベンチャーユナイテッドの丸山聡氏、ミスルトウの嶋根秀幸氏らが参加

スタートアップカフェは、那覇中心部から車で約30分、米軍嘉手納基地が目と鼻の先にある沖縄市中心部コザに存在する。創業相談、人材育成、ものづくり支援などを提供しており、最近では THE BRIDGE でも紹介した琉球銀行のスタートアップ・プログラム「Ryugin Startup Program 2016-2017」の運営協力をしていたことが記憶に新しい。クラウドファンディングサイトの CAMPFIRE とは、沖縄の地域活性化をや起業支援を念頭に、エリアに特化したプログラムなども展開している。

今月5日、沖縄県の起業支援拠点「スタートアップカフェコザ」は、開設から1年を迎え沖縄市中心部のコザ地域周辺で1周年記念イベント「Me Look You/弥勒世果報(みるくゆがふ)」を開催し、沖縄市コザ周辺の6会場でのべ1,000人超の市民・起業家・投資家らが参加した。

マイクロソフト・テクニカルエヴァンジェリストの大田昌幸氏、元プロレスラーの小橋建太氏、沖縄市副市長の上田紘嗣氏、クックパッド広告事業部本部長 兼 パートナーアライアンス本部長の小川淳氏

イベントの冒頭を飾ったのは、元プロレスラーの小橋建太氏を招いての「テクノロジーによるスポーツ科学とスポーツコンベンションシティ」と題したセッション。沖縄市は、沖縄本島随一となる規模の多目的アリーナの建設を構想している。このセッションでは、 ソーシャルグラフなども駆使し、例えば、あるスポーツ選手のファンに対し、次のスポーツイベントの告知をしたり、グッズ販売への誘導をしたりなどといった、スタートアップによるサービスの構想も紹介された。自身の現役時代には、リング周りの観客の声援でしかファンの反応を感じ取れなかったという小橋氏は、ファンの動きが可視化され、スポーツ興行の成功を高められる可能性に強い期待感を示していた。

別会場では、沖縄発の5人の起業家によるピッチも繰り広げられた。

  • 大宜味朝文氏……国内外から多くの人を受け入れる楽しめるゲストハウス「【宿】ネクストテイメント」運営
  • 鈴木孝之氏………農業体験マッチングサービス「FarmStay」運営」
  • 平良美奈子氏……県内最大級の海外留学フェスタ「RYU × RYU フェスタ」運営
  • 三上蒼太氏………ベトナムや ASEAN の日本語教師向け、教育コンテンツのオープンプラットフォーム構想
  • 津嘉山遼氏………シェアリングサービスに活用できる、チップを使ったモノの所有権の可視化や利用権の制御など

「RYU × RYU フェスタ」を運営し、7月に世界で活躍できる人材を育成するスタートアップ「Umore(ユーモア)」を設立した平良美奈子氏が晴れて優勝の座を獲得した。

「ラボドリブンビジネスと沖縄の可能性」と題されたセッション:(左から)沖縄市経済文化部長の上里幸俊氏、IT ジャーナリストの林信行氏、川崎市副市長の三浦淳氏、デジネル/デジタルアルティザン CEO の原雄司氏

これら以外にも複数のセッションが持たれたのだが、その多くがテーマに掲げていたのが、沖縄をいかにしてグローバルなスタートアップハブに育て上げるかという命題だ。それを論じる上で、沖縄が持つ地理的特性を避けて通ることはできない。改めて地図を見るまでもなく、沖縄は東京から遠く離れていて台北や香港や上海に近い。つまり言語の壁を超えることを前提にするなら、見るべき市場機会は沖縄の東や南に広がる中華圏や東南アジアということになる。

また、偶然ではあるが、沖縄県の人口と、Skype や Funderbeam などを生み出していることで名高いエストニアの人口は、ほぼ同じく130〜140万人。エストニアが一大スタートアップハブになり得た背景には、小国であるというディスアトバンテージとロシアの脅威があるわけだが、沖縄の人口規模や大都市圏から離れているデメリットを考えたとき、これらを強みとして新たなイノベーションハブを生み出せる可能性を期待してもよいのではないだろうか。

<参考文献>

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