リクルート「TECH LAB PAAK」のデモデイが開催、第9期参加チームが半年の成果を披露

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リクルートホールディングス(東証:6098。以下、リクルートと略す)が東京・渋谷で展開するスタートアップアクセラレータ「TECH LAB PAAK(テック・ラボ・パーク)」は9月29日、第9期のデモデイを開催した。

14チームがそれぞれ3分間ピッチでプログラム参加からの半年間の成果を披露したほか、審査員による評価対象ではないが、1分間ピッチには10チームが登壇し、総計24チームが登壇する一大ピッチイベントとなった。

入賞したチームの顔ぶれを中心に、TECH LAB PAAK からどのようなサービスが生まれたか、生まれようとしているかをみてみたい。なお、デモデイのピッチにおいて、入賞者の審査を行ったのは次の方々だ。

  • TechCrunch Japan 編集長 西村賢氏
  • 日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 澤円氏
  • 500 Startups Japan マネージングパートナー 澤山陽平氏
  • リクルートホールディングスR&D本部 Media Technology Lab. 室長 麻生要一氏

【TECH LAB PAAK 賞】JobRainbow / ichoose by JobRainbow

副賞:松阪牛&神戸牛 選べるギフト

13人に1人の割合で存在するという LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)の人々に特化した、就職活動および転職活動支援サイト「JobRainbow」と求人サイト「ichoose」を運営。JobRainbow には LGBT フレンドリーな企業の求人情報はもとより、採用担当者のインタビュー、LGBT を配慮した福利厚生の有無、すでに当該企業で働いている LGBT の人の「社内でカミングアウトしたけれど、問題なく同僚らから受け入れてもらえた」などの生の声が読める口コミ投稿機能を提供する。

JobRainbow には現在300社ほどが求人情報を掲載しており、ユーザ数は1万人ほど。2ヶ月ほど前には、LGBT のための求人機能に特化したサイト「ichoose」をローンチし、こちらは提案した企業のうち約20%の企業で採用されているという。オンラインのみでなく、LGBT フレンドリーな企業と求職者を結ぶオフラインイベント「リアルジョブレインボー」を開催しており、求人・求職だけでなくワークスタイルのあり方にまで踏み込んだ、ユーザ同士が情報交換できるコミュニティを形成している。

【Microsoft 賞】FOLLY by Artrigger

副賞:特選カニセット

ゴッホは生前評価されず、没後に本人の知らないところで作品が取引されるようになったアーティストとして知られる。Artrigger が取り組むのは、アーティストがゴッホのような目に遭わないために、彼らや関係者に市場価値をリアルタイムで把握できる環境を提供することだ。Artrigger では、数あるコンテンツ業界の中で、映像、ゲーム、図書・新聞・画像・テキストの3つの市場をターゲットとしており、作品や作家情報、著作権管理情報などをもとにリアルタイムで市場価値の可視化を実現する。

Artrigger では、芸術系学校法人に向けた校務管理・ポートフォリオツール「FOLLY」を開発。芸術系学校の教師が事務作業に時間をかけず、生徒が持つ才能の原石を育てるのを支援する。信託銀行とは、Atrigger が持つ市場価値可視化の技術と、信託銀行が得意とする資産継承プランニングや相続・贈与・美術品運用・知的財産権の信託などの分野で、共同で実証実験に取り組むことが決まっている。

【TechCrunch Japan 賞】Gitai by MacroSpace

副賞:AppleStore ギフトカード 3万円分

MacroSpace は、テレイグジスタンス(遠隔存在感)のしくみ「GITAI(ギタイ)」を開発するスタートアップ。操作するユーザの身体にセンサーをつけ、獲得したデータをインターネットを経由して遠隔地のロボットに送ることで、ユーザと同じ行動をロボットにさせることができる。

ユーザがヘッドマウントディスプレイを装着することで、ロボット側に装着した360°カメラを映像をリアルタイムで体験できる技術を開発。ただし、360°カメラの映像をリアルタイムで伝送するには大きな帯域が必要となり伝送遅延も発生することから、これを改善するために UDP ベースの P2P ストリーミングプトロコルと、Linux ベースの GITAI OS を開発。通信必要帯域を元データ 330Mbps から 4Mbps 未満までに圧縮、伝送遅延を80ミリ秒(0.08秒)にまで下げることに成功した。

Singularity University の2017年夏の Global Solutions Program に採択され、これを契機に宇宙の地球周回軌道上に カメラを設置し VR 環境を提供するアメリカのスタートアップ SpaceVR と提携が実現した。SpaceVR のカメラデバイスは近く、Space X のロケットで打ち上げられる予定で、SpaceVR が宇宙から届ける地球のライブ映像を GITAI で体感できる日もそう遠くないだろう。MacroSpace は、Singularity University が運営するアクセラレーションプログラム SU Ventures にも採択された。

<参考文献>

【500 Startup 賞】WIM(Worn Influencer of Movement)

副賞:Amazon ギフトカード 3万円分

人がパフォーマンスに使える技術を開発する観点から、駆動体がかさばらない安価な人工筋肉を開発している。WIM を開発する亀井潤氏によれば、これまで空気圧ゴムだった人工筋肉は、合金を使ったものに移行してきており、日本は特にこの分野で先行する市場であるものの、原料となる合金はまだ非常に高価ものなのだという。WIM では、電気で駆動するポリマーを使った人工筋肉(Electroactive Polymer Artificial Muscle=EPAM)を開発し、従来の費用の100分の1程度(材料費ベースで5万円程度→500円程度)での人工筋肉を実現しようとしている。

EPAM については、世界でも他に先行する企業や研究機関は存在する可能性があるが、WIM ではこの技術をパフォーマーの衣装やデザインに取り入れていることが特徴的で、パフォーマンス表現の可能性が広がることなどに期待を寄せているようだ。冒頭には、亀井氏が関わるイギリスの V&A(Victoria and Albert Hall)での事例がビデオで紹介された。

【オーディエンス賞】シェアトレ by シェアトレ

副賞:TECH LAB PAAK Project Member 権利

全国で子供向けにサッカーを教えるアマチュアコーチの多くは、コーチ経験が無いにもかかわらず、練習メニューを作成し実施するというハードなタスクをボランティアでこなしている。そのような問題を解決するため、「シェアトレ」は、全国のアマチュアコーチが練習メニューを共有できるプラットフォームだ。創業者が筑波大学体育専門学群に籍を置いていることもあり、当該学群の教授らの協力を得て、専門的な知識も学べるメニューを提供している。

TECH LAB PAAK 参加後、月間20万PV、会員数2,200人、スポーツ指導者が3万人訪れる大きなサイトにまで成長した。SEO、メディアを使ったコラムの掲載、スポーツ練習の YouTuber を囲えていることが、このアクセス増に貢献しているそうだ。その存在価値が認められ JFCA 日本サッカー指導者協会 と提携、練習メニューの提供を受けたり、共同で物販を行ったりしている。

IT 業界のユーザ体験がビデオからスマートフォン、そして VR へと移行している中、スポーツ分野においては以前、書籍などに添付された DVD に頼っていることが多い。シェアトレでは今後、練習メニューをスマホで手軽に動画閲覧できるようにし、スポーツ教育の機会均等を提供すべくサッカー以外の分野へも進出、どこでもスポーツ指導が受けられる新規サービスを開発中としている。

【オーディエンス賞】フォトビーズ by クイックピジョン

副賞:TECH LAB PAAK Project Member 権利

フォトビーズ」は、言わば〝撮影体験版の〝Pokémon Go〟で、アプリを持ったユーザがあらかじめ定められた地点に行くと、抜群のアングルでセッティングされたカメラの撮影権利を獲得し、リモートでシャッターを切って写真を得られるサービスだ。水槽越し、窓越し、ドローンからなど、セルフィーなどでは実現できないさまざまなアングルでの写真撮影が可能になる。

美しい空間を持っている人、カメラ資産を眠らせている人、抜群の撮影ポイントで写真を撮りたい人をマッチングさせる。すでにプロトタイプを作成し、渋谷のスプランブル交差点で撮影を実施したり、テストユーザを対象に撮影会を開催したりしているそうだ。

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