現場仕事を1日1時間削減もーー建設・建築業界の工程を効率化「ANDPAD」4億円調達、業界の情報プラットフォームへ

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オクト代表取締役の稲田武夫氏

住宅建築のプロジェクト管理ツール「ANDPAD」を開発・提供するオクトは3月6日、Draper Nexus Ventures、Salesforce Ventures、BEENEXT、および個人投資家を引受先とする第三者割当増資の実施を公表した。調達した資金は総額で約4億円。株式比率や払込日、個人投資家などの詳細は非公開。これにあわせてDraper Nexus Venturesのマネージングディレクター、倉林陽氏が社外取締役に就任する。

また2018年上旬を目安に今回出資を受けるセールスフォース・ドットコムの提供するSalesforce Sales Cloudと連携し、営業と施工の情報を一元管理できるソリューションの提供も目指す。

ANDPADは2016年4月からサービス提供する、建設・建築の施工状況や現場のコミュニケーションを管理することができるクラウドサービス。新築やリフォームなどを手がける工務店などが、発注先となる大工や電気工事などの事業者に対して図面やスケジュールなどの工程を共有したり、建築検査などの報告を一元管理することができる。

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オクト代表取締役の稲田武夫氏の説明によれば、同サービス導入によって大手建設会社の現場監督の業務時間が1日1時間減るなどの業務効率化が報告されているという。

2017年1月には個人投資家らを引受先とした数千万円の増資を公表しており、今回の調達はそれに続くものとなる。前回調達時に350社だった契約者数は2018年1月時点で800社に拡大しており、このほとんどが有料での契約者数になるという。今後、同社では早期の1万社獲得を目指し、調達した資金で現在30名体制の人員増強、特に開発体制の強化をはかる。

ツールから建設・建築企業の経営プラットフォームへ

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ここ2、3年のトレンドとして業界・業務特化型のB2B SaaS躍進の話題がある。飲食や教育、物流など特定の業界固有の工程に特化したオンラインの効率化ツールを提供するものだ。オクトが手がけるANDPADもその際たる例だろう。こういったツール類はユーザー体験がよければ一気に導入が進む一方、特定業界に特化している分、ツールとしてだけの利用では業界を横断したような会計や人事労務系の効率化サービスに比較してややスケール感に乏しくなる場合がある。

この点についての稲田氏の説明は明確だった。

まず、現在公表している800社というのはいわゆるプロジェクトオーナーであり、ここからアカウントを発行して利用してもらう無料利用のユーザー(例えば大工だったり電気工事事業者)は10倍ほどあるそうだ。つまり、ANDPADには業界の関連事業者8000社近くの利用実績がある。

これらは当然ながら次の有料ユーザー(新築やリフォームなどのプロジェクトを作成する場合は有料契約が必要)候補であると同時に、この「面」を活かすことで、建設・建築業界における情報プラットフォームに進化させる可能性も十分にあるという話なのだ。

まだ構想段階としつつも、このANDPADには建築や建設に関わるデータが大量に蓄積されている。どこのメーカーのどういった建材・資材がよく使われていて、どういう反響があるか。これらの情報は当然ながらメーカーにとって重要なマーケティングデータとなると同時に、このANDPADで何らかの導線を引くことができれば売上にも直結する。

業界紙のようなコンテンツメディアと違ってタッチポイントが仕事と必然性があるため、もし全方位的にうまくプランを提供することができれば、事業者にとって非常に便利な情報プラットフォームになるだろう。ちなみに稲田氏は特定事業者やメーカーとの資本提携などは否定していた。

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