イグニション・ポイント、フードテックスタートアップ「DANX(ダンクス)」を設立——フードトラック網で飲食ビジネスをポップアップ店舗化

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左から:DANX 取締役の青柳和洋氏、代表取締役の太田聡史氏
Image credit: Masaru Ikeda

イグニション・ポイントは8日、フードトラックを使って、オンデマンドで飲食サービスを展開する事業会社「DANX(ダンクス)」を設立したと発表した。イグニション・ポイントでフードテック事業統括責任者を務めてきた太田聡史氏が DANX 代表取締役に就任、イグニション・ポイント代表取締役の青柳和洋氏が DANX 取締役に就任する。

イグニション・ポイントは毎年2つずつ、インターネット・サービスを事業創出することを目標に掲げており、これまでに IoT を使ったホームセキュリティの「Secual(セキュアル)」、フォトブック・サービス「meGrid(ミーグリッド)」のしくみをベースにした日本とアジア向けの越境 EC サービス、クリエイティブスタジオの「POINT EDGE(ポイント・エッジ)」、小学生向けのオンライン英会話学習サービス「LEARNie(ラーニー)」といった事業を創出してきた。先ごろ、ペットの DNA を元にしたライフサイクル事業「Pontely(ポンテリー)」を発表したばかりで、今回の DANX は独立した会社形式での新規事業創出としては6つ目となる。

DANX
Image credit: DANX

Day and Night Box〟という言葉に由来して名付けられた新会社 DANX は、人々の労働環境の多様化、シングル生活者の増加、地方創生といったさまざまなライフスタイルの変化に呼応して、飲食業にイノベーションをもたらしたいと考えている。元来、飲食業というのは決まった場所に店があり、そこを中心に商圏を拡大してきた。ユニークな食べ物を提供する店であれば地理的な商圏は拡大するが、一方で分厚い潜在顧客層を確保しなければ商売は成り立たない。立地条件が商売の良し悪しを決める要素の9割とさえ言われる飲食業だが、好立地の物件には供給量に限りがあり、都市部では賃料が依然として高止まりしているのが現状だ。

イグニション・ポイントは、フードトラック・キッチンカーを数十台規模開発し組織化。それぞれのトラックはユニークな料理を提供できる移動店舗として、さまざまなイベントや街のデッドスペースなどに送り出される。飲食店が少ないオフィスエリアのランチ需要を満たすこともできるだろうし、フードトラックが集結すれば、それだけでポップアップ的にグルメフェスなども開催できる。DANX ではセントラルキッチンの機能や効率的な食材調達のチャネルを持つことで、店頭に立つ担当者のスキルに左右されず、コンスタントに品質の高い料理の提供を目指す。

「Siam ERAWAN (シアムエラワン)」がタイフェスティバルに出店した店舗
Image credit: DANX

コンサルティングビジネスを主業にしてきたイグニション・ポイントだが、これまでに下北沢のタイ料理「Siam ERAWAN (シアムエラワン)」、吉祥寺のカジュアルフレンチ「ビストロ エピス (Bistro epices)」といったレストランを買収しており、太田氏を中心にフードテック事業への参入準備を着々と進めてきた。DANX 事業の展開にあたっては、これらのレストランのシェフもレシピ開発などでプロジェクトに積極的に関わる見込みだ。

DANX では新規事業の前哨戦として、代々木公園で実施されたタイフェスティバルや、今夏は湘南の片瀬西浜に海の家を出店している。湘南では砂浜という地理的な制約からフードトラックではないものの、今後、展開される飲食サービスのユーザ体験を擬似的に楽しむことができる。DANX では海の家の経営で得られた知見なども加味しつつ、今後、フードトラック事業のオペレーション確立に注力する予定。DANX のロゴを掲げたフードトラックを、日本のあちこちで見かけるようになる日々が楽しみだ。

イグニション・ポイントが片瀬西浜に出店している海の家
Image credit: DANX

筆者の知る限り、DANX のビジネスが真っ向から競合するスタートアップは思いつかないが、しいて言えば、DANX が取り入れる便利な機能の要素々々は、いくつかのスタートアップからインスピレーションを得ている可能性はある。フードトラックを使った事業という観点では、メローが提供する「TLUNCH(トランチ)」は、空きスペースを持つ不動産オーナー(約70カ所)と、フードトラックオーナー(約370店舗)とのマッチングプラットフォームで成功している。

注文集中時にフードトラック前に発生する長蛇の列を解消すべく、「O:der(オーダー)」にも似た事前決済・注文予約の機能を搭載したモバイルアプリを提供する予定だ。また、贔屓にしている店(フードトラック)が近くに来た時には、ユーザのスマートフォンの GPS と連携して通知してくれる機能は、フリーランス営業支援プラットフォームの「Summon(サモン)」が目指そうとしている世界観とも似ているかもしれない。

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