実は搾取?小さな音楽ライブ開催PF「Sofar Sound」にみる、支援とビジネス「バランスの難しさ」

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ピックアップ:SOFAR SOUNDS RAISES $25M TO HELP ‘SCALE THE ARTIST-FAN CONNECTION GLOBALLY’

ニュースサマリー:欧州発のプライベート・音楽ライブ・プラットホームを提供するSofar Soundは5月21日、シリーズBラウンドでBattery VenturesやUnion Square Venturesを含む4つのファンドから2700万ドルを調達した。

Sofar Soundは、大きなライブ会場や路上ではなく、ガレージや室内などのプライベート空間で、アーティストとゲスト(観客)を結びつけ、小さな音楽ライブの開催を仲介するプラットホームを提供している。

ゲストはサイト上でSofar Soundが開催されることを知り抽選に応募する。抽選に当たれば、晴れてイベントに参加することができる。しかし、彼らは、アーティストがどんなグループなのかを事前に知ることはできない。

全てはライブ会場に訪れてからのお楽しみである。以下の動画を見ると、Sofar Soundについてより具体的に理解できる。

ロンドンの街角で始まった小さなイベントは、これまで430の都市で2万回を超えるイベントを開催し、100万人を超えるゲストを巻き込むムーブメントとなるまでに成長している。

Techcrunchによれば、過去Sofarに出演したアーティスト2万5000人のうち、40人以上がグラミー賞にノミネートまたは受賞している。今となってはSofarに出ることが若手アーティストにとっての一つのステータスとなっている。ちなみにSofarは2014年に東京にも上陸をしており、これまで40回以上イベントを開催している。

話題のポイント:アマチュアのミュージシャンにとっては魅力的なプラットフォームのSofar Soundですが、実は現在、一部から批判の声が上がっているようです。それはアーティストに対する報酬が非常に少ないにも関わらず、プラットホームの仲介手数料が割高なのではないか、というものです。

ゲストは1人につき15〜30ドルというのが一般的な価格帯です。一方で25分の1ステージでアーティストに支払われるのは100ドル。イベント会場を提供するホストへの報酬は0です。

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この価格帯は少しシビアかもしれません。1人のアーティストならまだしも、4名のバンドだった場合、一人の取り分は単純計算で4分の1のたった25ドルになってしまいます。

にも関わらず、売り上げの残り分は全てSofarに吸い上げられます。駆け出しミュージシャンのバックアップを理念に掲げる一方、UberやAirBnBなどのプラットホームと同様、株主の利益を最優先にする”ビジネス”である側面とのバランスが取れていないようにも思えます。

Techcrunchの記事の中では、このような批判に対し、同社CEOのLucchese氏は「ファンを獲得できることが、SoFarの最大の魔法」とコメントしていました。つまり、Sofarに出演することが一つのステータスないしは広告活動で、 SNSフォロワーの獲得、ライブの宣伝、グッズやCDの販売を促進できるだろうということです。

このようなプラットホームの肥大化と、その経済圏内のユーザーとの闘いは昨今様々な業界で勃発しているように思います。全てのステークホルダーにとって最良のガバナンスとは何なのかという問題への答えは未だ不明ですが、今後、Sofarは最適解を見つけられるのでしょうか。(執筆:渡邉草太

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