ピックアップ:Global Fintech Report Q3 2019
ニュースサマリー:CB Insightが、四半期毎にフィンテック・スタートアップ市場についてデータ分析するレポート『Global Fintech Report Q3 2019』を公開した。当該レポートではインド市場におけるスタートアップ総調達額がついに中国を上回ったことが判明している。
具体的には、2019年第3四半期におけるインドのフィンテック市場の調達額は6億7,000万ドルであったのに対し、中国は6億6,000万ドルと僅差でインドが中国を追い抜かしている。一方、大型調達ディールの回数では、インドは33回であるのに対し、中国は55回と、こちらは中国が強さを見せている。
話題のポイント:今や中国とインドがアジアのフィンテックをリードする存在だということは周知の事実となりました。CB Insightによれば、2019年第3四半期のアジア圏(東南アジア地域を除く)のフィンテック・スタートアップによる資金調達は、総額18億ドルに到達し、その数は152回に及ぶといいます。ちなみに同期における欧州の調達額とディール数はそれぞれ17億ドルと182回、北米は43億ドルと90回でした。
このインドが6億7,000万ドル、中国が6億6,000万ドルであるという数値を踏まえると、すなわち両国だけでアジアのフィンテック市場の調達総額の3分の2を占めているということが分かります。以下のグラフを見ると、インドが中国を調達額で上回るのは直近1年で初めてのことであり、また中国の調達額が2019年に入り落ち込んでいることが分かります。
インドの調達総額を押し上げたのは、クレジットカード・リワードアプリ「Cred」の1億2000万ドル調達やインシュアテック「Policy Bazzar」の1億3,000万ドル調達などの超大型ディールです。
<参考記事>
・創業9カ月で1.5億ドルを調達したインドのクレジットカード・リワード「Cred」とは?
また、実施投資回数を見るとインドが33回、中国が55回。合わせて88回(57%)と半分以上を占めていることが分かります。下図では2019年第2四半期において、インドが一度中国の投資回数を上回ってはいるものの、これは中国の調達数激減による勝ち越しだといえるでしょう。
ここ数年のアジアのフィンテック市場でインドが徐々に中国の背中を捉え、調達額やディール数にて勝ち越すケースが生じていることが分かります。
Alibaba(阿里巴巴)関連企業のAnt Financial(螞蟻金融)やTencent(騰訊)が中心となり、先んじて巨大なフィンテック・エコシステムを構築する中国ではありますが、インドも決済サービス「PayTm」を筆頭にレンディングや保険領域でもユニコーン企業を輩出、その勢いは止まることを知りません。
ただ、PaytmはAnt FinancialとAlibabaからバックアップを受け大成したことから、資本戦略的に利害関係を共にするインドと中国の企業が多くいることも事実。そのため対立構造的な見方は今後薄れていくともいえるでしょう。
両国は共に人口が13億人と巨大な市場を持つ一方、既存金融の発達度合いも先進国に比べれば低いため、新しいサービスが急激に広まるリープフロッグ現象が起きやすい環境であるという共通性を持っています。そのため、今後もその勢いは止まることなく、アジアのフィンテックをリードし続けていくと予想されます。
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