APACを中心に成長するスマートロック市場とプレーヤーたち

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Photo by PhotoMIX Company from Pexels

ピックアップ:KWIKSET’S NEW SC1 KEYWAY BRINGS SMARTKEY SECURITY, MORE KEYING OPTIONS TO USERS AND PROS

ニュースサマリ:米国の一般住宅用の大手鍵メーカーであるKwiksetは昨年11月に独自のSmartKeyセキュリティ技術を搭載したSC1キー溝を発表している。これにより、ドアからロックを取り外すことなくキーの再設定が数秒で可能となる。時間とコストを節約できるようになるため、一般消費者はもちろんのこと、大量の機械式ロックを購入するような建築業者や不動産所有者のようなB2Bマーケットにもメリットをもたらす。

重要なポイント:他ブランドのロックを持ち、家全体でSC1 キー溝を使っている人は、SmartKeyセキュリティ技術を介して新しいKwiksetロックを既存のロックに再入力することでKwiksetロックを組み合わせることができるため、住宅所有者が必要とするロックの総数が減るだけでなく、現在使用中のロックブランドに関係なくKwiksetロックを容易に導入できるようになる。

詳細情報:KwiksetのSC1キー溝は、すべての標準的なSmartKeyドアロックで機能し、最大10万通りのキーの組み合わせが可能ゆえ、家の全てのドアで一つのロックを共有する事が可能になり消費者に利便性をもたらす。

  • 上記の1キーの利便性の提供に加え、搭載されているSmartKeyセキュリティ技術はピッキングや不正開錠といった一般的な侵入方法からもユーザーを守り、キーの再生成の技術により返却されていなかったり紛失したりしたキーの使用からユーザーを守ることが可能。
  • グローバルでは、上記のKwikset社のように老舗の鍵メーカーがスマートロックの開発にも着手したようなケースもあるが、2012年創業の米August社や2014年創業の米CANDY HOUSE社のような新興のスタートアップが市場のメインプレイヤー。
  • August社は、2017年にドア開閉ソリューションを提供する世界最大手のスウェーデン企業ASSA ABLOY社によって買収され、CANDY HOUSE社のSesameというスマートロックのプロダクトはKickstarterでのクラウドファンディングで10万米ドル目標のところ140万米ドル以上を集めるなど市場からの注目度は高い。Sesameに関しては、日本の住宅向けに合わせたSesame miniの開発のためのクラウドファンディングをMakuakeで行った際に、目標額の11,847%になる1億1,847万円を集めるなど、日本国内でも注目を集める。
  • 日本発のスマートロック関連のプレイヤーとしては、Qrio社、ビットキー社、Photosynth社、ライナフ社などが列挙されるがグローバル同様に設立間もないスタートアップが名を連ねる。
  • Qrio社は、米投資会社のWiLとソニーの合弁会社として2014年に設立されたが2017年にはソニーに完全子会社化されて今に至る企業で、Qlio Lockという一般家庭用のスマートロック製品を中心に不動産事業者向けのクラウドキーボックスなどのB2B向けのサービスも展開している。スマートスピーカーやApple Watch、Nature Remoといったスマートデバイスとの連携も積極的に進めている。
  • ビットキー社は、2019年12月末にシリーズAラウンドで39億円以上の資金調達を果たし、2018年8月創業から累計調達額が約50億円となったが、この背景には2019年4月に発売開始した初期費用なしで低費用のサブスクで国内シェアを急伸させたことはもちろんだが、同社のデジタルキー基盤「bitkey platform」をベースにした事業展開への期待感がある。
  • Photosynth社は、社員証や交通系ICカードで開錠できるオフィス向けの後付け型「Akerun入退室管理システム」を提供しており、ビットキー社と同様に「Akerun ID」のような世界観を目指す。2020年8月には、凸版印刷と協業をして単一IDで様々なサービスや場所を利用できるキーレス社会の実現に向けた新サービスの開発を目指すような動きがある。なお、2020年8月に新たに35億円の資金調達を実施し、累計調達額が50億円を突破している。
  • ライナフ社は、「Ninja Lock」という住宅向けスマートロック、物件確認や内覧の自動化を実現するリーシング業務にまつわるサービス、入居後の物件管理の一元化を実現するサービスを提供し、不動産のデジタルリノベーションをAIやIoTの技術を活用して実現する企業。直近では、2020年3月に内閣府設立のスーパーシティオープンラボに参画、同年6月にアットホームのサービスとのAPI連携を開始、12月に東急リバブルの賃貸マンションに検温機能付きAI顔認証エントランスシステムの導入開始、といった動きがある。同社も2019年8月に東急不動産ホールディングスから資金調達を果たし、累計調達額が10億円を突破している。

背景:上記の通り国内外のスマートロック製品の提供は近年活発になってきているが、Technavioの調査によると、2020年から2024年にかけてのスマートロック市場の平均成長率は9%で、その成長のうちの55%はAPACによりもたらされると見込まれており、APACを中心に成長していくことが予想されている。

執筆:國生啓佑/編集:岩切絹代

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